「我が名は大場カナコ! 世が世なら花も恥じらう女子中学生だった者である! いざ尋常に参るッッ!!」 私はそう叫ぶと、川に向かって売れ残りの石を次々に放り投げた。一段、二段、三段……と水面を跳ねる石を見ているとすっきりする。今日の記録は十八段か。うむ、調子は悪くない。 デイバッグがひとまず空になったので、今日の石拾いを始める。いい感じの石にそれっぽいキャプションをつけてフリマアプリで売るのが今の私の生業である。フリマアプリのポイントはお店の決済にそのまま使えるのが素晴らしい。銀行口座が凍結されていても問題なしだ。 富士山の樹海で逃げ回っていた頃と比べたら、いまの川原暮らしは天国みたいなものだ。契約切れのスマホでも野良Wi-Fiでネットに繋がるし、石が売れたらコンビニから発送できる。梱包用のダンボールはスーパーでただでもらえる。ビバ現代文明である。「おっ、何やら良さげな流木を発見!」 バッグが半分ほど埋まったところで、川の少し深いところにいい感じの流木が沈んでいるのが見えた。よく干して綺麗に掃除してやると、こういうのも高く売れる。最高記録は3700円。石よりも高い値段がつくことが多いのだ。 ざぶざぶと川に入る。春先の冷たい水がジャージに染みる。つべたい。だが、我慢。流木を掴む。川底に深く突き刺さっているようで、なかなか抜けない。腰を落とし、両手に思いっきり力を込める。「うぉぉぉぉ……おりゃぁぁぁああああ!! あがぼぼっ!? がぼぼっ!? ごぼぼぼぼ……」 すぽーんと勢いよく抜けた。それがよくなかった。足が滑った。転んだ。デイバッグに詰めた石の重みで立ち上がれない。がぼぼあぼぼと手足をばたつかせながら意識が遠くなり―― ―――――― ―――― ――「ぼはあっ!? げほいっ、ごっほ! じ、じぬがどおぼっだ……」 何をどうしたのか覚えていないが、なんとか岸辺に這い上がれていた。全身を犬のように震わせて水気を飛ばす。あたりを見渡すと、景色がだいぶ変わっていた。けっこう流されてしまったのだろうか。とりあえず場所を確認しようと土手を登る。「うーん、すがすがしいほどにど田舎……」 土手から見える風景は、見渡す限りの田畑だった。ぽつぽつと民家が立っているが、瓦屋根と藁葺きの平屋ばかり。この辺に藁葺きの家なんてまだ残ってたんだな。ああいうのは観光地ぐらいに
最終更新日 : 2026-07-13 続きを読む