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第3話

작가: アナ・スミス
三日後。

七年間暮らしたヴィラの中で、私はついに、心のどこかが静かに死んでいくのを感じていた。

壁一面には、私たちの写真が飾られている。

全部私たちが愛し合った痕跡だった。

私はそれを一枚ずつ外し、全部の写真から自分だけを切り取った。

それから、自分の荷物をまとめる。

二人で使っていたものは、きっちり半分に分けて残した。

同時に、ビアンカとのメッセージやSNSのスクリーンショットも、指定した時間にロレンツォのメールへ送られるよう設定しておいた。

ひと息ついた頃、また通知が入る。

ビアンカだった。

送られてきたのは、クリスティーズの開始時間と場所。

その下に、一文だけ。

【来る勇気、ある?モレッティ夫人。

今夜ロレンツォがね、「最後の一点」を絶対に私のために落とすって。】

その夜、私は時間通りに会場へ向かった。

本当は行くつもりなんてなかった。

日付が変わる頃には、母の手配した「火事」が始まっている。

ほどなくして、ソフィア・モレッティは死ぬ。

だったら、若い愛人の挑発に付き合う意味なんてないはずだった。

でも、ビアンカが送ってきたカタログの中に、一つだけ気になるものがあった。

最後の目玉商品は、目が眩むほど高価なイエローダイヤのネックレス。

けれど私の目を引いたのは、もっと控えめなペンダントだった。

上品で静かなデザイン、母が好きそうだと思った。それを買いに行くだけ。

そう自分に言い聞かせた。

けれど本当は、まだ見たかったのだ。ロレンツォが、彼女のためにどこまで変わってしまったのかを。

たった七年で。

あれほど私を愛していた男が、別の女を愛するようになるなんて。

会場へ入る頃には、前方の席はほとんど埋まっていた。

私は最後列に座る。ペンダントだけ落として、すぐ帰るつもりだった。

ロレンツォとビアンカは中央付近に並んで座っていた。身体を寄せ合い、親密そうに話している。

時折、ビアンカが後ろを振り返っていた。

そして私を見つけた瞬間、口元がゆっくり歪む。

――勝った。

そう信じ切っている女の顔だった。

目玉商品は最後に回される。

私の狙っていたペンダントは予想通り早い段階で出品された。

まだ無名に近いデザイナーだったせいで競る人も少なく、私は相場よりかなり安く手に入れることができた。

そのまま立ち上がろうとした時。

「モレッティ夫人」

ビアンカの声が、会場の空気を切り裂くように澄み渡った。

何人もの視線がこちらへ向く。

ビアンカだった。

「もう帰るんですか?」

無邪気そうに笑いながら続ける。

「まだ小物しか出てませんよ?本番はこれからなのに」

わざとらしく間を置いて、さらに言った。

「特に今夜の最後の一点。見逃したらもったいないですよ?」

私は彼女を見て、少しだけ笑いそうになった。

若さって残酷だ。

傲慢でいられるし、自分が世界の中心だと疑わない。

綺麗で、眩しくて、怖いものを知らない。

ロレンツォが惹かれるのも分かる気がした。

ロレンツォはビアンカのうなじに軽く触れ、小さく制した。

――黙れ。

そんな意味を込めるみたいに。

それから何気ないふうを装って後ろを振り返る。傍にいるビアンカが執着する相手を、一度見てみたくなったのだろう。

そして私を見た瞬間、彼の顔色が変わった。

罪悪感と苛立ちが、同時に浮かぶ。

あそこまで分かりやすい顔をする人間を、私は初めて見た。

会場には知った顔も多かった。

ロレンツォの交友関係の人間。長年、私たち夫婦を知っている人たち。

あんなふうにビアンカに呼び止められた以上、彼ももう「気づかなかったふり」はできない。

周囲の目の中、ロレンツォはスタッフへ合図し、私を前方の空席へ案内させた。

そしてビアンカへ視線を向ける。

――後ろへ行け。

そう命じるように。

ビアンカはすぐ立ち上がった。目がみるみる赤くなる。

「嫌……」

震える声で言う。

「今日は、私と――」

「後ろに座れ、ビアンカ」

ロレンツォの声は低く、冷たかった。

「二度言わせるな」

ビアンカは唇を噛み、泣きそうになるのを堪えている。

私はロレンツォの腕にそっと触れた。

「もういいわ」静かに言う。「私のせいで怒らないで。欲しいものはもう買えたし、帰るから」

するとロレンツォの表情が険しくなる。

「お前は俺の妻だ」

はっきりと言い切った。

「ここに座るべき人間がいるとすれば、それはお前だ。あいつが蔑ろにされたと感じる筋合いはない」

その言葉は、狙った通りビアンカを傷つけた。

残っていたプライドごと、踏み潰すみたいに。

彼女は顔を背け、そのまま後方の席へ座り込む。

ロレンツォは私の手を握り、そのまま離さなかった。

ここで帰れば余計に騒ぎになる。だから私は大人しく隣に座った。

振り返らなくても分かる。

ビアンカの視線が、ずっと背中に突き刺さっていた。

最後の出品が始まるまで、その視線は釘付けになっていた。

予想通り、ロレンツォはイエローダイヤのネックレスを落札した。

その瞬間、ビアンカの顔がぱっと明るくなる。

全部、自分の思い通りに戻ったとでも思ったのだろう。

オークションが終わると、彼女は期待を隠さずロレンツォを見た。

けれどロレンツォは、彼女を見ようともしなかった。

代わりに、私へ向き直る。

そしてそのネックレスを、私の首にかけた。

私は止めようとして手を上げようとした。

けれど彼は、その手首を軽く掴む。

「ソフィア」

静かな声だった。

「お前には、一番いいものが似合うよ」

ビアンカは全身を硬直させた。次の瞬間、彼女はきびすを返し、無言のまま荒々しく会場から飛び出していった。

ロレンツォの視線は、そんな彼女の背中を追っていた。

眉間の皺、噛み締めた顎、無意識に握られる手。

見なくても分かる。追いかけたいのだ。

私は小さく笑い、首元のネックレスを外して彼へ返した。

「こんな高価なもの、金庫に入れておくべきよ」

私は穏やかに言う。

「私が身につけるには重すぎるわ」

ロレンツォは少し驚いた顔をした。

けれど、そのおかげで表情の硬さが少し緩む。

彼が何か言う前に、私は先に口を開いた。

「でも、プレゼントはありがとう」

私は微笑む。

「私からも贈り物を置いてきたの。寝室の引き出し、見てみて」

ロレンツォは私を抱き寄せ、そのままキスをした。

「お前にはいつも驚かされるな」

低く笑う。

「早く見たくなった」

それでも彼の視線は何度も出口へ向いていた。ビアンカを追いかけたくて仕方ないのだ。

私は胸の奥で静かに笑う。

「気になるなら、行ってきたら?」

彼は身体を離して私を見ると、露骨なほど安堵した表情を浮かべた。

そして、ネックレスのケースを手にしたまま、急ぐように去っていく。

数分後。

私は母が用意した車へ乗り込み、そのまま夜の街へ走り出した。

窓の外に、黒いベントレーが横切っていくのが見える。

ロレンツォの車だった。

私はそれが見えなくなるまで、黙って見送った。

さようなら、ロレンツォ。

今度こそ、本当に終わりよ。

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