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第1154話

Auteur: リンフェイ
佐々木母が言うには、もし田舎に戻ってしまったら、息子である俊介は自分のものではなくなり、あの嫁である莉奈に完全に取られてしまうというのだ。

しかもあの二人はまだ結婚式も挙げていない。莉奈は彼らが住む家の内装工事が終わってから、結婚式を挙げると言っていたのだ。そうじゃないと自分のプライドが許さないのだろう。

今は部屋を借りているだけだから、今すぐ結婚式を挙げれば、成瀬家が来ても泊まる部屋がないのだ。

もし陽を連れて帰れるのであれば、彼らもつまらない生活から抜け出すことができ、祖父母と孫の仲を深めることもできる。

彼らは自分の息子の子である陽こそ、佐々木家の正式な孫だという昔の考え方を持っている。莉奈は今に至るまでまだ妊娠していないから、本当に子供ができるかどうかも不明だ。

唯月は野菜中心の食事で、すぐに食べ終わり元義父母がこそこそと何かを話しているのに気がついた。そして彼女は近寄って行き、妹夫婦が買って来た四つもある果物の袋を持ってキッチンへと向かった。

数分後。

彼女は大きめの皿に一種類の果物をのせて出てきた。他の種類の果物は洗っていない。

家には唯花と姫華の二人が陽に買って来たおやつもある。唯月はそれをいくつか掴んでさっきの果物と一緒にローテーブルの上に置いた。それで元義父母へのもてなしとしたのだ。

「唯月さん、お店の商売はうまくいっているのかい?」

佐々木母は遠慮なく、その果物を取って食べながら唯月に尋ねた。

「まあまあですね」

「普段忙しくて陽ちゃんの面倒を見る時間がないでしょう。だから、陽ちゃんをうちに預けて面倒を見るわ。私たちは陽ちゃんの祖父母なんだから、何も心配することなんてないでしょう?私たち二人はいつも小さい子の面倒を見ていたから、絶対にちゃんとお世話できるわ。だから安心してちょうだい」

唯月は淡々とした口調で言った。「佐々木さんにも言いましたけど、陽が良いと言うならお二人がこの子を連れて帰って数日泊まるくらい問題ないです。陽が嫌がるなら、無理強いしないでくださいますか。

私たちが離婚してから、あなた達が陽に会いたいというのを拒否したりしたことはないでしょ。

今までの状態で別にいいのではないですか?」

離婚する時、唯月は確かにこの元義母たち一家とは関係を断ってしまいたかった。

だが、元義母が人に聞いたり、彼女をつけた
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