LOGIN彼の温もり ― 交錯する権力と想い ドラクロワ判事は、若き弁護士テオに異常な執着を抱いていた。テオの父を拘束するために証拠を捏造した彼は、父の解放と引き換えに、テオに毎晩執務室へ通うよう要求する。 逃げ場のない状況で、テオは恐怖や反発と向き合いながら、自分でも気づかなかった感情に戸惑い始める。一方、ドラクロワもまた、テオへの執着の裏に隠された想いと向き合うことになる。 支配と抵抗、裏切りと信頼。その境界が揺らぐ中、二人の関係は予想もしなかった方向へと変化していく。 権力に翻弄される二人が、やがて自分自身の選択と本当の気持ちを見つめ直す、緊張感あふれるM/Mダークロマンス。
View Moreその代わりに、別の熱が広がっていく。 もっと柔らかい熱。 もっと優しい熱。 もっと愛情に満ちた熱。 私の唇の痕が、彼の手が残した痕を少しずつ覆っていく。 彼の手は私を支えている。 私を愛している。 そして私自身の唇と同じように、私を癒やしている。 私は顎の線に沿って下りていく。 顎にキスをする。 唇の端に。 耳たぶに。 自分で届く範囲の顔すべてにキスをする。 彼の暴力が触れたすべての場所。 まるでこのキスによって、ただ一度の平手打ちだけではなく、過去のすべての暴力を消し去れるかのように。 過去のすべての痛みを。 幼い頃から積み重なってきたすべての恐怖を。 彼はずっと私を抱いている。 手は私の身体に置かれている。 目は私を見つめている。 その存在すべてが、私だけに集中している。 そして私は理解する。 この奇妙な儀式は、ただの許しではない。 ただの修復でもない。
私の中に築いていた防御が、一つずつ崩れていく。 怒りが、太陽の下の雪のように溶けていく。 疑いが消えていく。 そして、彼の瞳の熱の中へ吸い込まれていく。 「許します」 彼は目を閉じる。 安堵する。 そして私の額に自分の額を重ねる。 私たちはそのまま長い間、動かなかった。 呼吸を重ね。 恐怖を静め。 心臓の鼓動を同じリズムに合わせながら。 やがて彼は少しだけ身体を離す。 それでも私の顔から手を離さない。 そして、その声が低くなる。 掠れていく。 より親密なものへ変わっていく。 「では今度は、口を使って本当に私を許してほしい。言葉ではなく。君の唇で。君の舌で。君のすべてで」 「どういう意味ですか?」 「私の手が殴った場所を、一つ一つキスしてほしい。君の顔に残った場所を。私が傷つけた場所すべてを。君がそうしている間、私は君を抱いて、君を見つめ、黙って君を愛する」 私は理解する。 これが彼にとっての赦しなのだ。 自分が傷つ
何も考えられない。 何も理解できない。 ただ、その音と、痛みと、頬に走る熱だけが存在している。 私たちは二人とも動かなかった。 彼の手はまだ上がっている。 掌は衝撃で赤くなっている。 私は頬を押さえることもできず、目を大きく見開いたまま、息を詰めていた。 「テオ……私は……すまない。そんなつもりじゃ……こんなことをするべきじゃなかった……」 彼は近づいてくる。 触れようとする。 直そうとする。 消そうとする。 けれど私は一歩下がる。 そしてもう一歩。 背中が壁にぶつかる。 「触らないで」 「テオ、頼む……本当にすまない。自分でも何が起きたのか分からない。怒りと、苛立ちと、君を失うことへの恐怖が……お願いだ、許してくれ。君が望むことなら何でもする。必要なことなら何でもする。でも、そんな目で私を見ないでくれ」 彼は膝をつく。 私の前に。 裁判官が、膝をついた。 三度目だった。 けれど今回は、私にキスするためでもない。 私を誘惑するためでもない。 私を手に入れるためでもない。 私の許しを請うため。 慈悲を乞うため。 そして、自分がこれまで他の人間を捨ててきたように、私から捨てられないように懇願するためだった。 彼は私の顔を両手で包む。 壊れやすいものを扱うように。 大切なものを扱うように。 代わりのないものを扱うように。 指が私の肌の上で震えている。 彼の手が残した赤い跡を、そっと撫でる。 「私を見て、テオ。私を見て」 私は彼を見る。 その目には涙が満ちている。 後悔がある。 そして、私たちがまだ名前をつけていない何かがある。 それでも、最初から私たちの間に存在していた何かが。 「愛している。君を愛している。これまで誰も愛したことがないほどに。私自身が恐ろしくなるほどに。私を超えてしまうほどに。私を変えてしまうほどに愛している。そして、あの平手打ち、あの暴力は、私が怖くなったときに知っている唯一のやり方だった。私が受け継いだものだ。私の呪いだ。私の牢獄だ。でも、君のために変わりたい。人を傷つけずに愛することを学びたい。奪わずに与えることを学びたい。自分を守らなくても脆くなれることを学びたい。私を助けてくれ。お願い
「何人? 正確に。私より前に何人の男がいた? 数字が欲しい。名前が欲しい。顔が見たい」 彼は立ち上がる。 苛立ち。 疲労。 憤り。 それが顔に浮かぶ。 「テオ、昨日もう話しただろう。私は君に真実を話した。何が足りない?」 「完全な真実です。一般論じゃない。詳細が知りたい。私は、自分が何人目なのか知りたい。私が本当に違うのか知りたい。あなたの涙も、あなたの優しさも、私が眠っている夜に私を見つめていることも、全部私のためなのか、それとも次にここへ来る人間のためなのか、それを知りたい」 彼は私へ近づく。 怒りが込み上げてくるのが分かる。 瞳が暗くなる。 顎が固くなる。 拳が握り締められる。 「君は違うと言っただろう。君が最初に入ってきた人間だと言った。私が言えることはすべて言った。それ以上、何が欲しい? 証拠か? 行動か? 証拠なんて渡せない。私にできるのは、言葉を与えることだけだ。男としての言葉を。裁判官としてではない」 「あなたの言葉? 一生、人に嘘をついて、操って、身体を戦利品のように集めてきた男の言葉を? どうして私が信じる? どうして信じなければならない?」 平手が飛んできた。 私がそれを予測するより先に。 手を上げて身を守るより先に。 何かをすることができるより先に。 彼の手が私の頬を打つ。 乾いた音が響いた。 頭が横へ振られる。 息が止まる。 私は呆然とした。