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第2話

Author: 万々一
どれほどの時間が流れただろう。ようやく父が迎えに来てくれた。

黙ったまま、自分の部屋に戻るよう促された。

僕の部屋は小さな物置部屋。暖房はない。

武晴の治療器具が家中のスペースを埋め尽くし、僕に残されたのはこの部屋だけだった。

家計はすでに底をついていて、まともに暖房を使えるのは武晴の部屋だけだった。

小さなベッドの上で体を丸めると、田中家でもらった温もりはあっという間に抜けていった。

武晴の部屋から、涙混じりの母の声が漏れてくる。

「武晴、大丈夫。お薬飲んだら、すぐによくなるからね。あなたは母さんの、何より大事な宝物なの。母さんの命をあげてでも、絶対にあなたを生かしてみせるから」

続いて、父のかすれた声が優しく応じる。

「そうだぞ。怖くない。父さんも母さんも、ずっとお前のそばにいるからな」

僕はベッドの上で体を縮めながら、その温かい声を聞いていた。

涙が口の中に流れ込み、えぐみを帯びた苦さが広がった。

手首のブレスレットに、数字が浮かび上がる。

――12h。

カウントダウンが始まっていた。

よかった。これでお兄ちゃんも、きっと長生きできる。

……

いつ眠りに落ちたのか、自分でもわからない。夢の中はとても暖かくて、まるで母に丸ごと抱きしめられているようだった。

けれど目を覚ますと、体中が引き裂かれたように痛み、新しい傷が服にべったりと張りついていた。

もがくように体を起こして、窓の外へ目をやる。両親は庭で、武晴と一緒に雪だるまを作っていた。

3人とも、楽しそうに笑っている。陽の光の下で武晴の真っ白な髪と睫毛が輝いて、まるで物語の王子様みたいだった。

自分の血の滲む、傷だらけの体を見下ろす。心臓のあたりを、雪だるまの冷たい手にぎゅっと掴まれたような気がした。

心の中で、何度も自分に言い聞かせる。

「晴彦は痛くない。晴彦は痛いのも平気」

痛みを堪えながら、手近にあった上着を羽織り、よろめきながら階段を駆け下りた。

武晴は僕を見ると、目を輝かせた。昨日泣き崩れたことなんて、まるで忘れてしまったかのように。

「晴彦、早く!一緒に雪だるま作ろう!」

父は服についた雪を払いながら言った。

「晴彦、来たか。ちょうどいい、武晴と遊んでてくれ。母さんと父さんは上で武晴の栄養食を作ってくるから」

母が僕に念を押す。

「晴彦、武晴のこと、ちゃんとお願いね」

僕は力いっぱい頷いた。

「うん!晴彦がお兄ちゃんのこと、ちゃんと守るから!」

ふたりは背を向け、家の中へ入っていった。

武晴は興奮した様子で僕の手を引く。陽射しが彼の体を照らし――その痛みのすべてが、僕の腕に流れ込んでくる。皮膚が焼けるように熱く、ちりちりと刺すように痛み出した。

それでも、嬉しかった。

「おい!見ろよ、あの真っ白な髪の化け物!」

不意に、数人の男の子たちが通りかかり、武晴を指差して笑い出した。

武晴の笑顔が固まる。顔から血の気が引いていく。

僕はとっさに彼の前に立ちはだかり、両腕を広げた。

「あっちに行って!お兄ちゃんをいじめないで!」

「お前、なんだよ。どけよ!」

先頭の男の子に、突き飛ばされた。

雪の上に、勢いよく倒れ込む。膝が石にぶつかり、血が滲んだ。

その隙に、彼らは武晴を取り囲み、髪を掴もうと手を伸ばす。

「ははっ、マジで真っ白!妖怪みたい!」

「お兄ちゃんに触らないで!」

立ち上がろうとしても、また倒れてしまう。ただ、武晴が泣き崩れていくのを見ていることしかできなかった。

「どきなさい!みんな、どきなさい!」

母の悲鳴が、空気を切り裂いた。

駆け下りてきた母は、男の子たちを力任せに突き飛ばすと、泣きじゃくる武晴を両腕でしっかりと抱きしめた。

男の子たちは、一目散に逃げ出していった。

母は両手を震わせながら、武晴に怪我がないか必死に確かめる。

「武晴、大丈夫?どこか痛いところない?母さんに教えて」

武晴は、しゃくり上げるだけで答えない。

母が振り返り、私を見た。

「晴彦!」

数歩でこちらへ詰め寄ってくる。

「武晴のこと守ってって言ったでしょう!あなたはただ横で見てただけなの!?いったい何やってるの!」

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