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1 つきまとう影

Author: けいこ
last update Huling Na-update: 2025-07-09 23:01:26

次の日の朝は、綺麗に晴れていた。

今日は日曜日――

私は、いつものようにみんなの予定を聞いて1日のスケジュールを組み立てた。

祥太君は、1日中楽団の練習。

文都君は、大学に行って先生に特別授業を受ける。

颯君は、近くのスーパーで惣菜コーナーのバイト。

智華ちゃんは、習い事の掛け持ち。

ひなこちゃんは、カフェでバイト。

旦那は、仕事のあと飲み会。

旦那のお義母さんも相変わらず友達と出かけるようだ。

今日は……夕方まで私1人だけ。

誰もいない家の中、掃除もいつもより綺麗にしたい。

食事の材料を買い出しにも行きたい。

ガーデニングも……と、いろいろ考えてしまう。

「結菜ちゃん、行ってくるね」

「結菜さん、行ってきます」

「結姉、行ってくるから」

男子3人を送り出したあと、旦那、ひなこちゃんとお義母さんも出ていった。

最後に「行ってきます」と、智華ちゃんが声をかけてくれた。

気まづい雰囲気は特に出さず、私は智華ちゃんに向かって笑いかけた。

昨日の智華ちゃんと旦那の談笑するシーン、智華ちゃんの告白……が、一瞬にして頭によぎった。

あの2人、あれからどうなったんだろう?

帰りが遅くなっていたようだったから、私は先に寝てしまったけれど……

今朝もみんながいたから何も話せなかった。

もしかしたら……

ううん、いくらなんでも……

旦那も、大事な同居人に手を出すほど、さすがにそこまでバカじゃない……と思うけれど……

旦那を信じたいというより、大事な娘さんを預かっている立場として「何もなかった」ことを信じたかった。

確かに不安ではあったけれど、そのことは聞けなかった。

昨日、2人でホテルに行ったの?なんて――

「気をつけてね。習い事、大変だけど頑張ってね」

「……別に大変ではないです。自分のためですから」

「そ、そうだよね。智華ちゃんは色んな習い事ができてうらやましいな」

「それは……イヤミですか?私は遊んでるわけじゃないです。うらやましいと思うってことは、私がラクをしているって思ってるんですね」

「ちょ、ちょっと待って。そんなことは思ってないよ。女性らしい習い事ばかりだから、私もやってみたい……っていう憧れだよ。今は無理だけど、いつかできたら私も何かしてみたいな」

「……私は女性として輝いていたいです。健太さんに気に入ってもらえるような女性になりたいから」

ドキっとした。

それでも、
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