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第266話

Author: キラキラ猫
この部署の人間の中で、遥と湊の過去を知っているのは、紗月ただ一人だった。

だが彼女がそう聞いたところで、楓たちは何の疑問も抱かなかった。

遥は確かに優秀だ。

どんな経営者であっても、彼女の退職届にサインするのは渋るだろうと思ったからだ。

遥は頷いた。

「辞めるのは私の意思よ。彼の意見を聞く必要もないし、同意もいらないわ」

穏やかな声で答えた後、長年働き慣れたオフィスをゆっくりと見渡す。

ここを離れることには、やはり少しの未練があった。

ここで何度徹夜したか、どれだけ残業したか、数え切れない。

ここには彼女の血と汗が染み込んでいるのだ。

紗月は少し考えてから、カバンから携帯のストラップを取り出し、遥に手渡した。

ウインクをして見せる。

「これ、私からの退職祝いってことで受け取ってください」

遥はハッとした。

それは、石膏で作られた人形のストラップだった。

人形は真っ二つに割れてしまったらしく、後から接着剤でくっつけられていたが、少しズレてしまっている。

石膏人形の足の裏には、いくつかアルファベットが刻まれていた。

【K.M】。

遥は一目で、それが大学時
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