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第1079話

Penulis: 木真知子
桜子は背を向けたまま、何も言わなかった。

胸の中で思いが渦を巻く。

扉へ一歩踏み出した、その時――扉が内側から開いた。

「敏之さん?」

出てきたのは敏之だった。桜子は思わず目を見張る。

敏之は桜子に柔らかく微笑み、それから隆一へと静かな表情を向ける。

「隆一様、主人があなたをお呼びです。どうぞ中へ」

「え?お父さんが彼に会うの?」

桜子は目を丸くし、声を抑えて抗議した。

「まだ体調が悪いのに......何を考えてるの!」

敏之は困ったように目を伏せた。

「主人のご意向よ。私は、その通りに」

「わざわざお出迎え、ありがとうございます、敏之夫人」

隆一は金縁の眼鏡をそっと押し上げた。

その瞳にかすかな陰が差し、口元が見えないほど僅かに動く。

......

隆一は敏之に先導され、閲堂園の廊下を進む。

向かった先は――書斎。

高城家では、客はふつう茶室か応接間に通される。

男にとって、書斎は寝室と同じくらい私的な空間だ。

この数年、万霆の書斎に入れた『外の人間』はほとんどいない。

親友の達也を除けば、隆一が二人目。

――万霆が、この若い男をどれほど重
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