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第154話

Author: 春さがそう
その言葉を言い終えると、玲子は隼人の腕を押さえた。

「あんたが命懸けで彼女を救ったというのに、彼女は振り返るなり他の男と密会するなんて。こんなこと、我慢できるはずないわ!」

隼人はそれを聞くと、玲子の手を振り払い、ベッドから降りようとした。

美琴は一瞬驚き、慌てて彼を制止した。

「何をするつもりなの?隼人、あなたはまだ怪我をしているのよ、無茶しちゃだめ」

隼人は冷ややかに彼女を睨みつけた。その眼差しには、冷気が満ちていた。

「どけ。俺がやろうと決めたことを、止められる人間はいない。俺は彼女のところへ行く。いったいどういうことなのか、すべてを問いただす」

「何を問いただす必要があるの?彼女が不倫した証拠は、目の前にあるじゃない!」

玲子も加勢して説得した。

隼人は目を閉じ、必死に冷静さを取り戻そうとして、はっきりと言う。

「俺は、そんなくだらない話を聞きたくない。白石を見つけて、直接彼女に聞くんだ。これがどういうことなのか。まだ俺を夫として、陽向を自分の子供として見てくれるのかどうかを!」

最初から最後まで、彼が求めていたのは、ただの説明だったのだ。

隼人は玲子たちの手を振り払い、背を向けて慌ただしく立ち去った。

玲子はすぐに後を追おうとしたが、美琴に引き止められた。

美琴は、面白がるような笑みを浮かべて言った。

「追いかけるのはやめましょうよ。隼人も、この機会に紗季さんの正体をはっきり認識するべきよ。そうすれば、完全に諦めもつくでしょう?そうじゃないかしら、玲子さん?」

その言葉に、玲子はきつく奥歯を噛み締め、その瞳に嫌悪の色を浮かべた。

「本当に思ってもみなかったわ。白石紗季が、これほど汚らわしい女だったなんて!隼人が彼女を救うために自分の命さえも顧みなかったというのに。本当に、値しないわ!」

その言葉が終わった途端、陽向が飛び跳ねるように入口に現れた。

彼はちょうど洗面所から戻ってきたところで、まだ状況を把握しておらず、驚いたように彼女たちを見つめた。

「どうしたの?パパは?どうして病室にいないの?」

玲子の目が赤くなり、陽向に飛びついて抱きしめ、泣き叫び始めた。

「陽向!あんたとあんたのお父さんは、本当に運が悪いわ!知ってるの?あんたの汚らわしい母親が、あんたたちを裏切るようなことをして、もう他の男と逃げたのよ!」

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