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第 111 話

Author: 一笠
「了解!」

輝はすぐにスタッフに指示を出し、次の撮影のための衣装替えを始めた。

その後の撮影中、凛はほとんど無理をして撮影を続け、終わる頃には頭がぼーっとしていた。

輝とスタッフはパソコンの周りに集まって写真を選んでいたため、凛は一人でカメラとレンズを片付けていた。

彼女はレンズを一つ一つ丁寧に拭き、まるで将軍が自分の刀を大切にするかのように、それをこの上なく大切に扱っていた。

今の自分の状態では、これが人生最後の撮影になるかもしれない。

疲れていたが、とても充実感があった。

今考えると、この機会を与えてくれた輝に感謝しなければいけない。

片付けを終え、凛は輝に声をかけようと立ち上がった瞬間、
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