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第2話

作者: キララ
「でも、万が一の場合はどうする?医学的には、避妊手術後に生殖能力が回復する稀なケースもあるんだから」

佑望はしばらく黙っていた。

「もう十分だ。子どもが俺の子かどうか、俺はちゃんとわかってる」

私は泣きそうになるのをこらえながら、ふらふらと帰ろうと歩き出した。頭の中では、彼らの笑い声が何度もリピートされていた。

歩くたびに、佑望への愛が少しずつ消えていく。

家の玄関前まで歩いたとき、綺麗な洋服を着た女の子を見かけた。

彼女の首には、江口家に代々伝わる美しい宝石のペンダントが掛けられていた。

私はふとした瞬間に、彼女が佑望と姉の子どもである咲夜(さくや)だと気づいた。

なるほど、だから彼はわざと私を呼び出したんだ。見られるのが怖かったんだろう。

「おばさん、すいません、ちょっと通して下さい」

私は急いで道を開けた。彼女が中に入ると、彼女が不機嫌そうにぶつぶつ言った。

「パパの会社には、どうしてこんな服を着てる社員がいるの?汚すぎる」

彼女が去って行く背中を見つめながら、私はわかっていた。

この嘘だらけの結婚生活は、もう完全に終わらせなければならないのだ。

私は佑望の祖父である江口茂男(えぐち しげお)の番号をダイヤルして、離婚を申し出た。

理由は簡単だ。江口家は三代続いた一人っ子の家系で、佑望には家業を継ぐ子どもが必要だ。

しかし、私は結婚して3年が経つも、江口家の子どもを妊娠できなかった。

茂男はため息をついた。

「水希、お前はわしの命を助けてくれたし、その恩はずっと忘れてない。

でも、わしを悪く思うな。外での噂も多いし、江口家も跡継ぎが必要だ。わしももうどうしようもないんだ……自分で何とかして」

茂男が離婚を止めないと分かり、私はほっと一息ついた。

ただ、その後の手続きには3日かかると言われた。

3年前、佑望と結婚するために、私はフィールドワークの資格を諦めた。

今、その資格を再度申請し、すべてをきちんと整える必要がある。

その前に、ただ現状を維持しておけばいいだけだ。

でも、この間、佑望は帰ってこなかった。

彼の秘書が言うには、会社で急な問題が発生して、彼にしか対応できないらしい。

私は何も言わず、頷いた後、振り返って家をまっすぐに出て行った。

私の手は止まることなくお腹を優しく撫で、涙はついに大粒となって頬を伝って落ちた。

佑望がいない間に、私は今日、病院で中絶手術の予約をした。

私は病院の長椅子に座り、身をかがめてエコーの結果を細かく確認していた。

私は手を伸ばし、白黒の画面の中にあるピーナッツの粒ほどの小さな丸を触った。それが私の子どもだと、医者は言った。

でも、どうして私は自分の子どもを、この複雑で冷たい世界に迎え入れることができるのだろうか。

手術室に入る前、私のスマホに一通のリッチビデオメッセージが届いた。

その画面を見て、私は固まった。

ビデオの中の佑望は、これまで見たことがないような、制御の効かない狂気のような様子だった。

結婚して3年間、佑望はずっと冷静を保ち続けた。夫婦の営みでさえ、彼は常に淡々としていた。

だが、彼はそんな人ではなかった。ただ、彼の情熱を燃やせる人が、私ではなかっただけだ。

看護師に声をかけられて初めて、私は自分が震えるほど泣いていることに気づいた。スマホを握る手さえ、止めようとしても震えが止まらなかった。

私は顔を上げ、そばで待っている看護師を見つめた。

「もう大丈夫です。始めてください」

手術が終わり、私が廊下を歩いていると、予想外に、会社で忙しいはずの佑望の姿を見かけた。

彼が私を見つけると、少し戸惑った表情を見せて、無意識にこちらに歩み寄ろうとしたが、瑠菜がすぐに彼の腕に絡みついた。

佑望は彼女に引き戻されて、私に目を向けた。

「水希、瑠菜の体調が悪いから、一緒にきたんだ。

どうして、お前も病院に?」

私は、瑠菜がわざと見せた診断書に目をやった。「過度な性交による損傷」という文字が、私の目に痛烈に突き刺さった。

そして、さっき見たビデオを思い出した。

何が起こったのか、どんな薬を塗ったのか、考えなくてもわかる。

瑠菜の得意げな視線と目が合った瞬間、私は打ち明けようと思った気持ちを抑え、言い訳を変えることに決めた。

「私は妊娠検査に来たんだ」

「え、何?」

瑠菜が驚いて叫んだ。「あなた、妊娠できるわけがないわ!その子は……」

佑望はこっそり彼女の手を握り、目で警告した。

「水希、医者は何て言った?大丈夫だったのか?」

私は口を開こうとしたその時、隣の部屋から子供の声が聞こえてきた。

「パパ、ママ、何してるの?ずっと待ってるんだよ。早く薬を塗って!」

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