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第 1142 話

Author: 水原信
だが、彼に助けを求める隙さえ与えられなかった。

青年が連れ去られた後、州平は海咲のもとへ歩み寄った。

「さっきみたいな場面なら、俺が片付けるだけでよかったのに。君は……何で手を出したんだ?」

彼は海咲の手を取り、次の瞬間、そっと腰を抱き寄せた。

五年ぶりに再会してからというもの、州平にとって海咲は何よりも大切な存在だった。

今はその海咲が子を宿している。彼にとっては、口に入れれば溶けてしまいそうなほど、手のひらに乗せて大事にしたい宝物だった。

「だって、ムカついたのよ。あんな口の利き方、ぶん殴って当然じゃない?」

——州平が野良犬だって?

笑わせないで。

州平はS国の若様のひとりであり、モスが
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