ロート・ブルーメ~赤ずきんは金色の狼に食される~

ロート・ブルーメ~赤ずきんは金色の狼に食される~

last updateLast Updated : 2025-05-07
By:  緋村燐Updated just now
Language: Japanese
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――黎華街―― 昼間でも危険だと言われているその暗く華やかな街。 美桜は月に一度その街に住む叔母に届け物をしていた。 叔母の言うとおりにすることで安全が保障された道中。 ある日、友人の願いを叶えたことで―― その安全が崩れた。 ******❁****** 助けてくれたのは花のような人 赤いピアスが似合う 寒々しい青い瞳を持った 金色の男 でも彼は 「言いつけを破った赤ずきんは、狼に食われるに決まってるだろ?」 花であるとともに 狼だった―― そして明かされていく彼の秘密。 私は、あなたと共にいたい。

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Chapter 1

日常

「もうすぐ期末テストだ。一週間後には部活動も停止になるのでみんなしっかりと勉強するように」

 先生の話を聞きながら、私は窓の外を眺めていた。

 一年も終わりに近くなってきた寒々しい空は、すでに日が落ちそう。

 今日は赤が強いな……。

 ぼんやりと空の色を思う。

 大抵が橙色の空だけれど、毎日色が微妙に違う。

 今日はいつもより赤い色をしていた。

***

 ざわざわと騒がしくなる教室で、私は黙々と帰る準備をする。

 そんな中、近くで盛り上がっていたグループの一人が声をかけてきた。

「ねえ、花宮(はなみや)さんも行かない? カラオケ」

「え?」

 突然の誘いに驚いて顔を上げた。

 こんな風に誘われることは実は初めてじゃない。

 でも、クラスでも大人しめな私を誘うってことには理由がある。

 あ、やっぱり。

 カラオケに行こうと近くで話していたグループの中には、私にとっては唯一の親友と言える三船日葵(みふねひまり)がいた。

 彼女は美人で明るくて、男女ともに人気のある子だ。

 その日葵が遊びに誘われる度に私もどうかと声をかけるので、いつの間にか日葵を誘うときは私もセットということになっていた。

「ね、行こうよ美桜(みお)。最近カラオケ行ってなかったし、テスト前に楽しんでおかなきゃ」

 日葵が近くに来て直接誘いに来る。

 今日は図書館から借りてる本を読んでしまおうと思っていたんだけれど……。

 返却日が明後日だったため、そろそろ読み切っておかないとと思っていた。

 でも、そんな理由で断られるのは嫌だよね……。

 私は自分の思いを押し殺し、「うん、行こう」と笑顔を作った。

***

 相手のことを思ったり、嫌われたくないと思ってしまったとき、私は自分の意見を言えなくなる。

 日葵に相談すると、みんな多かれ少なかれそういうところはあるんじゃないの? と言われたけれど、少なくともみんなは私よりちゃんと自分の意見を言えている。

 私は、どうしてもグッと飲み込んでしまうんだ。

 中学の頃、大したことないと思って言った言葉で人を酷く傷つけてしまったことがある。

 それからというもの自分の意見を言うのが怖いんだ……。

 だから、いつもこうして流されるように過ごしてしまう。

 少しは自分の意見も言いなさい。

 そういつも言っているのはお母さん。

 お父さんは出張続きで中学の半ばくらいからまともに会えていないから、同じように思っているかどうかは分からないけれど。

 そんな、一見充実しているけれど自分に自信が持てない日々を送っていた私。

 その日常が一変したのは、この翌日。

 今日よりもさらに赤い色が強い、真っ赤な夕日が見える日だった。

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