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第2話

Author: ちょうどいい
本当は、どうやって露華にこの話を切り出すか悩んでいたのだが、最初の邪魔者が、まさか璃々であるとは思わなかった。

俺は静かに言った。

「大丈夫だ。俺のことは気にしなくていい。もう十八年前に、全部手放した」

璃々は一瞬呆けたように立ち尽くし、初めて俺の本心を理解したかのようだ。

「露華のことも気にしなくていい。俺がちゃんと説明するから。

君は自由だ、璃々」

俺は顔を上げ、まっすぐ彼女の目を見つめた。

「だから、十八年前の約束を、果たそう」

璃々はため息をつき、申し訳なさそうに言った。

「私が悪かったの。

これからも、あなたや露華に何かあれば、手助けするわ」

そう言うと、彼女は少し感情を抑えきれない様子でスマホを取り出し、長年封印していた番号に電話をかけた。

その夜、俺は璃々と初めて別々の部屋で眠った。

この十八年間、俺たちは心に別々の想いを抱えながらも、互いの欲求は満たし合ってきた。

俺はそのたびに、清志の女を奪っているような後ろめたさを感じていた。

だが璃々は気にする様子もなく、次第にそれを楽しんでいるようですらあった。

もう考えるのはやめよう。今夜で、彼女との関係は完全に断ち切られたのだから。

翌朝早く、大学と電話を終えたばかりの露華に、俺は璃々と離婚するつもりだと告げた。

俺がでっちあげた理由を口にする前に、露華はそれを遮った。

「父さん、もう騙さなくていいよ。昔のこと、全部知ってる。

父さんが母さんを愛していなかったけど。悪いのは母さんなの。

父さん、これからは私がそばにいるよ」

俺の胸の奥に、鋭い痛みが広がった。

露華はすべてわかっていたのだ。

悪いのは俺だ。俺がうまく演じきれず、こんな幼い頃から、露華に一人で多くを抱えさせてしまった。

これで、話は単純になった。

俺と璃々は離婚届を提出してから、露華を大学に送り出すため、海外へ行く予定だ。

その機会に、璃々と清志を再会させるつもりでもある。

そして、清志を国内に連れ戻すのか、それとも彼と共に海外に残るのかは、璃々が決めることになる。

さらに一ヶ月ほどで離婚手続きが終わり、俺と璃々は離婚届受理証明書を受け取ることになる。

こうしてスケジュールが決まると、俺たちは海外に向かった。

目的地に到着するなり、璃々は待ちきれない様子で清志に会いに行った。

露華も、どうしても一緒に行くと言い張った。

「父さん、あの人がどんな男なのか見てみたい」

俺は、露華がまだ璃々へのわだかまりを持っていることを察して、言葉を発した。

「軽率になるな。この十八年で、お母さんは俺たち親子にちゃんと償ってきた」

だが露華は聞かず、結局璃々について行った。

ところが深夜になっても、露華は帰ってこなかった。

俺は電話をかけた。

向こうは騒がしく、どうやらパーティーをしているようだ。

「父さん、今日は帰らないよ」

理由を尋ねると、露華は歯切れ悪く答えた。

「陸川おじさんの気分を壊したくないの。

昔のこと、陸川おじさんも悪くないよ。こっちで、一人は寂しいから」

そして少し間を置いて、さらに言った。

「父さんも言ってたでしょ。貸し借りはないって。でも安心して、私は父さんのこともちゃんと愛してる」

ほんの数時間で、露華の態度は変わってしまった。

確かに、誰も悪くはない。

だがその言葉は、俺が露華のために約束した十八年を、まるで笑い話のようにしてしまった。

もしあの時すぐに離婚し、露華を璃々に託していたら、あの三人はもっと幸せだったのだろうか。

それでも俺は、露華に多くの愛を注いできた。

露華がほかの子どもたちに、母親に捨てられたと嘲笑われるのが怖くて、俺はプライドを捨てて璃々に頭を下げて頼んだ。

露華を人の上に立つ存在にしたくて、橋本家と我が家の力を注いで育ててきた。

離婚後、俺に残るのは娘だけだ。

将来は良い婿を選び、孫たちを育てていくつもりでいた。

俺は納得できなかった。

一年間、璃々に注ぎ込んだこの感情を、早々に断ち切ることもできたし、十八年かけて彼女への想いから抜け出すこともできた。

だが娘の露華だけは、どうしても手放せなかった。

俺は引き留めるように言った。

「露華、父さんが好きなクマのビスケットを焼いた。どんなに遅くても待ってる」

真夜中、露華は帰ってきた。

俺がまだ起きているのを見ると、慌てて俺をベッドに押し込んだ。

「父さん、ビスケット美味しかったよ。安心して寝て」

俺はほっと息をついた。

きっと露華が同情心を抱いていただけだ。

その優しさを認めてあげよう。俺はただ少し自分勝手なだけだ。

露華が俺を愛してくれているなら、それで十分だ。

目を閉じると、耳元で露華が笑いをこらえる小さな息遣いが聞こえた。

俺は目を開けなかった。

露華の心がすでに清志に奪われているという現実と、向き合いたくなかった。

璃々と露華を大学に送り届けたとき、清志も現れた。

彼に会うのはこれが初めてだ。

写真よりずっと生き生きしていて、この年齢では珍しいほどの活力に満ちている。

俺を見ると、彼は穏やかな態度で、きちんと距離を保ち、俺と露華が話す時間を残してくれた。

それでも露華は、何度も彼の方を気にして見ていた。

やがて露華が言った。

「陸川おじさん、私に何か言いたいことある?」

清志はその時初めて近づき、露華の頭を撫でて励ました。

「緊張しなくていい。勉強したくなかったら、たくさん食べればいい。健康で楽しく生きるのが一番大事だ」

彼は楽しさ重視の教育を信条としているらしく、露華があれほど彼を好きになるのも無理はなかった。

彼はスポーツウェア姿で、右腕はたくましかった。

以前、璃々が彼のために、その別荘にバドミントンコートを作ったと聞いた。確かに、彼の明るい性格に合っている。

露華は素直にうなずき、俺たちに手を振って別れた。

俺は璃々と清志に尋ねた。

これからは国外に定住するのか、それとも帰国するのか。

璃々は答えた。

「この四年間は、露華に付き添って国外にいるわ。その先は……露華の気持ち次第ね」
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