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第555話

Author: 浮島
前世の計画では、本来なら自分もこうして娘とその父親が抱き合っている光景を眺めていたはずだった。

意識がふっと離れたその隙に、為澤はすでに女の子を抱いたまま蒼空の前に立っていた。

我に返ったとき、女の子が蒼空を指さして言った。

「このお姉ちゃんがパパを探しに連れてきてくれたの」

為澤は深い色の目で彼女を見た。

「ありがとうございます」

蒼空は手を振る。

「いいえ。でも、これからは気をつけたほうがいいですよ。こんな時間に子どもを一人で出歩かせたら危ないですからね」

為澤は短くうなずき、低い声で答えた。

「わかっています」

蒼空は「では、先に失礼します」と言ってその場を離れようとした。

「待って」

為澤が呼び止める。

「名前を教えてください。娘を助けてくれた礼は覚えておきたい」

蒼空は眉を上げた。

「別にいいですよ。ほんのついでですから」

そう言ったにもかかわらず、為澤はスーツのポケットから名刺を取り出し、差し出してきた。

「これは俺の連絡先。何かあれば連絡してください。借り一つということで」

断るのも悪く、蒼空は名刺を受け取り、視線を何気なく落とした。

その瞬間、名刺の名前で眼差しが止まる。

――為澤相馬。

どうして「為澤」という字に聞き覚えがあるのか、蒼空は一気に思い出した。

「為澤」という姓は多くない。

瑠々の元彼、それも「為澤」。

蒼空は名刺を握りしめ、少し驚いた声を出した。

「為澤、相馬?」

目の前の男はうなずき、彼女の反応に気づいて尋ねた。

「俺のこと、知っていますか?」

蒼空はすぐには信じられなかった。

こんな偶然、あるだろうか?

数日前に瑠々の元彼の名前として聞いたばかりの「為澤相馬」。

まさか今日本人に会うなんて。

同姓同名という可能性もある。

でも、もしかすると本当に――

蒼空は首を振った。

「いえ、友だちと同じ名前だっただけ」

「そうですか」

相馬は特に気にした様子もなく、「では俺と娘はここで。何かあったらいつでも連絡を」と言った。

蒼空は頭が少し混乱したまま、軽くうなずいた。

相馬は女の子を抱き、「澄依、お姉ちゃんにバイバイしよう」と促す。

女の子は素直に父に従い、さっきよりずっと柔らかい声で言った。

「お姉ちゃん、バイバイ」

蒼空もどこか妙な気持ちで「バイバイ」と
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Comments (3)
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桜花舞
ゆーいさん、 ブロックするってなんなんでしょうね? 佑人のことを伝えてないってことなのかな 相馬経由で公開されるとマズイからとかでしょうかねぇ?
goodnovel comment avatar
ゆーい
不思議ですよね。 瑠々だから何か企みありそうな気はするけど、ただの喧嘩別れ瑛司の子にしちゃえパターンもありそう。 敬一郎に早くバレて欲しい~!
goodnovel comment avatar
桜花舞
この子はルルの子なのかなぁ だとすると、なんで佑人だけ瑛司の子ということにしてるの? 佑人が瑛司の従兄弟の子だとしたら、瑛司母からしたらまだマシだけど、 敬一郎からしたら自分の血は受け継いでないからねー 知られたらどうなるのかな
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