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娘に三発撃った夫を、私はもう愛せない
娘に三発撃った夫を、私はもう愛せない
Autor: 野菜好きな木偶

第1話

Autor: 野菜好きな木偶
麻実は取り乱し、博之の職場に押しかけたこともあった。彼の拳銃を奪って胸元に銃口を突きつけ、半狂乱で問い詰めた。どうしてなの、と。

博之は落ち着き払った声で答えた。

「スコープの向こうで、犯人がナイフで綾子の首を切りつけたのが見えた。次の瞬間には人質を殺すつもりかもしれない。賭けには出られなかった。

あの3発は、晴菜の命を奪わずに犯人を仕留める最善の選択だった。すべて計算し尽くした上でのことだ」

その声は少しも乱れることなく、静かに響き渡った。

「犯人を仕留める。それが俺の職務だ」

拳銃を構える両手がわななき、麻実の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「じゃあ誓える?綾子のためじゃないって」

博之は目を伏せ、何ひとつ答えようとはしなかった。

その沈黙が、麻実の胸を締めつけた。力なく手から拳銃が滑り落ち、彼女は体を折り曲げ、声もなく泣き崩れた。

彼が覗き込んでいたスコープに映っていたのは、綾子ただひとりだったのだ。実の娘の命が風前の灯火であったあの瞬間、彼の頭を占めていたのは、もうひとりの女をどう守るかということだけだった。

隊員に引き離された麻実は、娘の集中治療室の前で一昼夜座り込んだ。その日を境にして、彼女は別人のように変わってしまった。

もう毎日、昼に弁当を作って博之の職場へ届けることも、立入禁止エリアの外からつま先立ちになって彼の姿を追うこともしなくなった。

毎月の収入の半分を母、高月明美(たかつき あけみ)に渡すことも、仕事帰りに明美の家事を手伝うこともやめた。

綾子の息子である高月悠斗(たかつき ゆうと)も家に送り返した。もう送り迎えも、身の回りの世話を焼くこともしなくなった。

事件から半月が過ぎ、博之はようやく病室に姿を見せた。

連れ立っていたのは、綾子と明美だった。

博之は病床の晴菜を見つめ、その瞳に痛ましげな色を浮かべながら、小さな頭を撫でようと手を伸ばした。だがその手は、麻実によって強く払いのけられた。

「触らないでッ!」

麻実は荒い呼吸で胸を大きく上下させ、目を強く閉じた。

「……出て行って」

博之は眉間に深く皺を寄せた。

「いつまでそうやって意地を張るつもりだ。

晴菜は俺の娘でもある。お前以上に、俺だって辛いんだ」

晴菜の布団を掛け直していた麻実の手が止まり、堪えきれずに涙がこぼれ落ちた。ゆっくりと振り返り、冷たく口元を歪めた。

「はっ……あなたも辛いって?

辛いなら、どうして一度も来なかったの?それなのに、傷ひとつ負わなかった綾子には、まるで犬のようにつきまとって」

病室が一瞬、静まり返る。明美は険しい顔で麻実に歩み寄ると、勢いよく彼女の頬を平手打ちし、鋭い声を上げた。

「この人でなし!綾子の夫は博之を助けて命を落としたのよ。あの子がどれだけ長い間、ひとりで子供を抱えて苦労してきたと思ってるのよ!よくも綾子に、そんなことが言えたわね!」

耳の奥で甲高い音が鳴り、麻実の頬が熱を持って腫れ上がった。

顔を覆いながら、記憶が遠い過去へと引き戻されていった。

そう、綾子の夫が博之をかばって死んだ。そのせいで、博之の休暇はいつも綾子と悠斗のために費やされ、父親代わりとして出席する保護者会も、悠斗のものばかりだった。

明美は悠斗ばかりを可愛がり、晴菜にはただの一度として笑顔を向けなかった。お年玉やプレゼントをもらうのも悠斗だけ。

家族旅行でさえ、いつもあの4人だけのものだった。

彼らは麻実の犠牲の上に成り立つ生活を、当然のように享受し続け、麻実と晴菜を家族として扱ったことは一度もない。

そばに立つ綾子の目に、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんだ。

「ごめんね麻実、全部私が悪いの。博之やお母さんを責めないで……」

麻実は青ざめた顔のまま身をかがめ、意識のない晴菜の、青白い小さな顔にそっと触れ、額に唇を寄せた。

晴菜。ママがこの吐き気のするような家からあなたを連れ出すからね。これからは、これからは、ママの愛情は全部、晴菜だけのものだからね!

麻実は振り返り、博之を見据えると、静かな声で告げた。

「離婚しましょう、博之」

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    麻実は拓真の会社に入ってわずか3年で、過去最高の業績を打ち立て、異例のスピードで出世街道を駆け上がった。拓真は毎日のように彼女と晴菜のそばをうろつき、3年間、ひたむきに彼女を想い続けた。社内では誰もが、社長の想い人が麻実であることを知っており、いつ彼女を振り向かせられるのかと、密かに噂されるほどだった。麻実はそうした噂話をまるで気にしなかった。実力がすべてを語る。そして彼女の実力を疑う者は、誰もいなかった。海外で義肢技術に関する新たな研究成果が発表されたと聞き、麻実は休暇を取り、晴菜を連れてわざわざ視察に行くことにした。拓真はすでにある商談への出席を約束していたため同行できず、ひどく残念がっていた。麻実は苦笑して言った。「1週間もかからずに帰ってくるから、心配しないで」拓真も、それ以上は言えなかった。麻実は晴菜を連れて飛行機に乗り、一晩ホテルに泊まると、翌日にはさっそく技術研究会へと向かった。研究会には海外の技術専門家だけでなく、国内の著名な研究者も参加しており、警備は特に厳重だった。麻実は、警備要員に混じる博之の姿にふと気づいた。すっかり痩せ、表情も冷たく、全身がまるで研ぎ澄まされた抜き身の刃のようだった。その視線が、麻実に気づいた瞬間。博之は一瞬全身を強張らせたが、素早く視線を逸らした。これほどの年月が過ぎても、麻実はやはり平静ではいられなかった。指先を強く握りしめ、彼女もまた視線を逸らす。晴菜が麻実の隣を歩きながら、同じく博之の姿に気づいた。少し戸惑った様子で、麻実の服の裾を引く。「ママ、パパを見かけたよ」麻実は、博之が晴菜を嫌っているという事実を、一度も娘に話したことがなかった。それを聞いても、ただ優しく尋ねた。「晴菜は、パパに挨拶しに行きたい?」晴菜が迷いながらも答えようとしたその時、けたたましい銃声が耳元で炸裂した。麻実はとっさに反応し、晴菜を自分の下に庇った。「晴菜、早く隠れて!」警備要員たちがすぐさま応戦を始める。覆面をしたテロリストが会場内に突入し、辺りを見回すと、麻実に狙いを定め、人質として拘束しようと近づいてきた。彼が近づいた瞬間、1発の銃弾が眉間に命中し、その場に崩れ落ちた。麻実が顔を上げると、博之が彼女たちの前に立ちはだかっていた。

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