INICIAR SESIÓN深田麻実(ふかだ あさみ)の夫である深田博之(ふかだ ひろゆき)は、警察の特殊急襲部隊随一の狙撃手だった。任務での命中率は百パーセント。これまで、ただの一度として的を外したことはなかった。深田麻実(ふかだ あさみ)の夫である深田博之(ふかだ ひろゆき)は、警察の特殊急襲部隊随一の狙撃手だった。任務での命中率は百パーセント。これまで、ただの一度として的を外したことはなかった。 けれど今回の救出作戦では、彼は実の娘、深田晴菜(ふかだ はるな)に3発もの銃弾を撃ち込んだ。4発目でようやく犯人を仕留めた。 すべては、麻実の姉である高月綾子(たかつき あやこ)を無事に逃がすためだけに。 救急車の中で、麻実は震える両手で娘を抱きしめていた。小さな体からとめどなくあふれ出す鮮血が、彼女の視界をどこまでも赤く染め上げていった。 病院へ搬送されたものの、晴菜は右手と左脚を切断することとなり、かろうじて一命を取り留めた。 綾子は、かすり傷ひとつ負っていなかった。 誰もが、博之は職務を全うするため、あの引き金を引いたのだと信じている。 だが、麻実だけは知っていた。あの引き金を引いたのは、彼自身の私情からだったのだと。 けれど今回の救出作戦では、彼は実の娘、深田晴菜(ふかだ はるな)に3発もの銃弾を撃ち込んだ。4発目でようやく犯人を仕留めた。 すべては、麻実の姉である高月綾子(たかつき あやこ)を無事に逃がすためだけに。 救急車の中で、麻実は震える両手で娘を抱きしめていた。小さな体からとめどなくあふれ出す鮮血が、彼女の視界をどこまでも赤く染め上げていった。 病院へ搬送されたものの、晴菜は右手と左脚を切断することとなり、かろうじて一命を取り留めた。 綾子は、かすり傷ひとつ負っていなかった。 誰もが、博之は職務を全うするため、あの引き金を引いたのだと信じている。 だが、麻実だけは知っていた。あの引き金を引いたのは、彼自身の私情からだったのだと。
Ver más麻実は拓真の会社に入ってわずか3年で、過去最高の業績を打ち立て、異例のスピードで出世街道を駆け上がった。拓真は毎日のように彼女と晴菜のそばをうろつき、3年間、ひたむきに彼女を想い続けた。社内では誰もが、社長の想い人が麻実であることを知っており、いつ彼女を振り向かせられるのかと、密かに噂されるほどだった。麻実はそうした噂話をまるで気にしなかった。実力がすべてを語る。そして彼女の実力を疑う者は、誰もいなかった。海外で義肢技術に関する新たな研究成果が発表されたと聞き、麻実は休暇を取り、晴菜を連れてわざわざ視察に行くことにした。拓真はすでにある商談への出席を約束していたため同行できず、ひどく残念がっていた。麻実は苦笑して言った。「1週間もかからずに帰ってくるから、心配しないで」拓真も、それ以上は言えなかった。麻実は晴菜を連れて飛行機に乗り、一晩ホテルに泊まると、翌日にはさっそく技術研究会へと向かった。研究会には海外の技術専門家だけでなく、国内の著名な研究者も参加しており、警備は特に厳重だった。麻実は、警備要員に混じる博之の姿にふと気づいた。すっかり痩せ、表情も冷たく、全身がまるで研ぎ澄まされた抜き身の刃のようだった。その視線が、麻実に気づいた瞬間。博之は一瞬全身を強張らせたが、素早く視線を逸らした。これほどの年月が過ぎても、麻実はやはり平静ではいられなかった。指先を強く握りしめ、彼女もまた視線を逸らす。晴菜が麻実の隣を歩きながら、同じく博之の姿に気づいた。少し戸惑った様子で、麻実の服の裾を引く。「ママ、パパを見かけたよ」麻実は、博之が晴菜を嫌っているという事実を、一度も娘に話したことがなかった。それを聞いても、ただ優しく尋ねた。「晴菜は、パパに挨拶しに行きたい?」晴菜が迷いながらも答えようとしたその時、けたたましい銃声が耳元で炸裂した。麻実はとっさに反応し、晴菜を自分の下に庇った。「晴菜、早く隠れて!」警備要員たちがすぐさま応戦を始める。覆面をしたテロリストが会場内に突入し、辺りを見回すと、麻実に狙いを定め、人質として拘束しようと近づいてきた。彼が近づいた瞬間、1発の銃弾が眉間に命中し、その場に崩れ落ちた。麻実が顔を上げると、博之が彼女たちの前に立ちはだかっていた。
麻実が家に帰ると、意外にも明美が玄関先で待っていた。母の髪はすっかり白くなり、見るからに老け込んでいた。麻実は眉をひそめた。「帰ってください」明美は麻実の姿を見た瞬間、目の縁を赤くし、涙をこぼした。「麻実……」麻実は少し下がり、静かに言った。「あなたの娘は綾子ですよ。私じゃありません」明美は泣きながら首を振った。「……麻実、本当に知らなかったの。綾子があんなことをしていたなんて……」彼女は持っていたあの日記を差し出した。「全部読んだわ。全部わかった。あなたにどれほど辛い思いをさせてきたか……全部私のせいね……」麻実は微動だにしなかった。「もう終わったことです。帰ってください。私の生活に、これ以上関わらないで」明美は突然膝をつき、自分の頬を容赦なく何度も平手打ちした。「全部、私が悪いの。人を見る目がなくて、贔屓ばかりして……あんたと晴菜に、本当に、取り返しのつかないことをしてしまった……」と、その時。家の中から拓真が現れ、麻実の前に立ちはだかると、スマホを取り出した。「あの、本当に反省しているなら、これ以上麻実の人生を邪魔しないでください。彼女は今、新しい人生を歩んでいて、幸せに暮らしているんですよ」明美は一瞬呆然としたが、やがて俯き、苦々しく笑った。「わかったわ。もう二度と、あんたの邪魔はしない」顔を上げ、麻実の姿をじっと見つめると、手にしていた預金通帳を差し出した。「これは、あんたが今まで私に渡してくれたお金。手をつけずに、ずっとあんたのために貯めておいたのよ……」明美は涙を拭った。「あの頃、実はお父さんに愛人ができて、離婚を切り出されたの。でも、あんたを身ごもっていたから、あの人を引き止められた。それから、あんたを見るたびに、あの憎い男の顔を思い出すようになったの。あんなに愛していたのに、あの人は私を愛してくれなかった。そのことを……」彼女は嗚咽混じりに続けた。「私が悪かった。その行き場のない怒りを、あんたにぶつけてしまっていたの……これからは、絶対に幸せになりなさい」麻実は小さく頷いた。晴菜がいてくれるなら、それだけで、自分は幸せになれる。拓真が部下に命じて明美を送らせると、ようやく長く息を吐いた。心配そうに麻実を振り返る。「麻実
麻実はデスクの前に座ったまま、心ここにあらずといった様子でぼんやりとしていた。集中しようとしても、企画書の文字がどうしても頭に入ってこない。その時、晴菜から電話がかかってきた。晴菜がぱっと声を弾ませた。「ママ、今日ね、家政婦のおばさんが美味しいカップケーキを作ってくれたの。ママが帰ってきたら一緒に食べようね」麻実の眉間の皺が、自然とほどけていく。彼女は笑って答えた。「先に食べてていいよ。ママはちょっと忙しくて、帰りが遅くなるかもしれない」晴菜は素直にうんと答えたが、麻実はその声に滲むかすかな落胆を聞き逃さなかった。心が痛み、慌てて言葉を続ける。「うーん、でも、ママもそのケーキ、食べたいな。だから、気が変わった。ママが帰るまで待ってて」晴菜の声がぱっと明るくなった。「うん!」電話を切ると、麻実は鞄を手に取り、帰り支度をした。オフィスの入り口に、ひとりの人物が立っていた。博之だった。まるで石像のように、どれほどの時間そこに立っていたのか分からない。麻実が突然出てきたことに驚いたように慌てて後ずさり、あやうく転びそうになった。麻実は何も言わず、彼の存在など目に入らないかのように、まっすぐ脇を通り過ぎようとした。博之が突然口を開いた。「愛してる、麻実」麻実は全身をびくりと震わせ、足を止めた。博之は生来、感情を表に出さない性格で、これまで一度たりとも「愛している」などと口にしたことはなかったのだ。博之は低い声で続けた。「俺の父親は早くに亡くなって、母親が苦労してひとりで俺を育ててくれた。それなのに、過労が祟って病に倒れ、死んでしまった。だから、綾子の夫が俺を助けて死んだ時、女手ひとつで子どもを育てる彼女の境遇が、亡き母の姿と重なった。それで、何度も彼女を助けてきた」彼は顔を上げた。冷たい月光が降り注ぎ、その瞳に映り込んで、細かな光の粒に砕けた。「麻実。俺が愛しているのは、お前だけだ。すまなかった……」「もうやめて!」麻実は鞄の紐を強く握りしめ、彼を遮るように鋭く言い放った。「聞きたくない」博之は行き場を失ったように唇を結んだ。麻実は必死に自分を落ち着かせながら言った。「でも、あなたが晴菜を傷つけた事実は消えないわ。あの子を他人の身代わりに死なせようと
博之はその場に立ち、無表情のまま彼女を見下ろしていた。頭上の薄暗い明かりが、彼の彫りの深い横顔を照らし出し、瞳の奥に潜む殺意をくっきりと浮かび上がらせている。綾子は擦りむいた膝を押さえながら、恐怖に震える声を上げた。「博之、何をするつもり!?」博之はゆっくりと口を開いた。低く沈んだその声は、まるで死神の鎌が振り下ろされる前触れのように、倉庫の中に響いた。「晴菜を人質に取ったあの犯人、お前が仕組んだんだな。なんでだッ!」綾子の肩が震え、顔面が瞬く間に蒼白になった。「違う、私じゃない、そんなこと……っ」博之はもう我慢する気はないようだった。傍らの男に合図を送ると、綾子は口を塞がれ、金属バットで右腕を容赦なくへし折られた。綾子の悲鳴は喉の奥に押し込まれ、彼女は全身を震わせながら地面に崩れ落ちた。しばらくして、口を塞いでいた布が外された。博之は再び尋ねた。「なんでだ」綾子は不意に、狂ったように笑い出した。「ハハ……ハハハハ!麻実の娘が、私の息子より優れているのが許せなかったのよ!」ひと言ずつ区切りながら、狂気じみた嫉妬を滲ませて言葉を続ける。「なんであの子だけ、生まれた時から可愛くて、成績も良くて、みんなに好かれて。亡くなった私の夫まで、あの子のことを気に入ってたのよ!あの人があなたを助けた理由、わかる?麻実が愛する夫を死なせたくなかったからよ!」綾子は目を赤く腫らし、大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら絞り出すように叫んだ。「あの人は一度だって、私のことなんて考えてくれなかった。私の息子のことも!なんでよ!?なんでなの!?」博之は呆然とした。脇に下ろした手が、抑えきれずに震え始める。そうだったのか。自分が生き延びたのも、麻実のおかげだったのか。それなのに自分は、何をしてきた?何度も彼女を傷つけ、何度も彼女を無視してきた……博之は目を閉じ、振り返って傍らの男に告げた。「左腕も折れ。証拠と一緒に、警察署の前に放り出しておけ」綾子は全身を震わせながらも、なおいっそう狂ったように高笑いし続けた。「博之、教えてあげる。あなたが一番惨めなのよ。だって、あなただけが彼女の心を手に入れて……それを、失ったんだから」博之は目元を冷酷に引き締め、続けて言った。「舌も切り落とせ」
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