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第279話

Penulis: 三佐咲美
慎一に激しくキスされ、息もできないほどだった。

彼の男らしい香りが、まるで車内いっぱいに溢れ出しそうで、私はその熱気に飲み込まれそうになる。

背後から回り込んだ腕に背中を支えられて、自然と体が反らされる。その姿勢がまるで「私を好きにして」って差し出してるみたいだ。もう、恥ずかしくて死にそうだった。

私は必死にシートの革張りを握りしめる。高級なシートの革は、私の爪痕で傷だらけになっていた。

私の動揺を察した慎一は、そっと私の頬にキスを落としながら囁く。「キスだけでこんなに感じてしまうのは、俺以外にいると思うか?」

私はまるで水を得た魚のように、必死で呼吸を繰り返す。彼の言葉なんて頭に入る余裕はなかった。

私の弱々しい様子に満足したのか、彼は私の頬を両手で包み、舌先で唇をなぞりながら囁く。「覚えておけ。お前の男は俺だけだ。ほかの奴は絶対にダメだ」

そして、彼の手が伸びてきて、私のスカートのボタンにかかる。「もう一回しよう……車の中でお前とするの、好きなんだ」

カチッとボタンがふたつ外れ、胸元に冷たい空気が触れた瞬間、私の心も、静かに冷え切っていった。

彼の指先は優しいけれど、その優しさがかえって私の全身を震わせ、鳥肌が立つ。

この人は……私の気持ちなんて、微塵も考えていない。

私は胸元を必死に押さえ、首を振った。「もう嫌!私は好きじゃない!」

私が抵抗しても、彼はまるで余裕の笑みを浮かべ、興奮も消えていなかった。

「お前が何を思ってるか……俺が知らないわけないだろ」

背中に回された彼の手が、そっと動き出す。親指が私の首筋から背中へ、ゆっくりとなぞって、腰骨に触れ、さらに下へ……

力は強すぎず弱すぎず、ちょうど良い加減で私の神経を痺れさせ、私は唇を噛みしめて声を押し殺す。

「佳奈、お前、自分をごまかせても、俺は騙せない」

彼は低く笑いながら言う。「お前の敏感な場所、俺全部知っている。何が好きで、何に弱いのかも。佳奈、前は全部俺に見せてくれただろう?なんで今はダメなんだ?」

彼の声は次第に寂しげになる。「変わったのは俺じゃない、お前だ。もう俺を昔みたいに愛してくれなくなった」

私は悔しさで歯を食いしばる。「昔みたいにじゃなくて、もう一ミリも愛してない!」

「そう?」彼は冷たく言う。「じゃあさ、感情とかどうでもいい。体だけの話をしよう。
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拒否して逃げて 自分が愛人になりたいんか?
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