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第326話

Penulis: 三佐咲美
車内には、熱を帯びた吐息と微かな喘ぎが充満していた。

慎一は私の手を掴み、そのまま自分のベルトの上に押し当てる。

ここには、あの高貴で冷たい慎一なんてもういない。欲望に身を焦がし、ずっと女を遠ざけてきた男の本能だけが、今、目の前にいる。

彼の体は熱くて、今にも車の中で二人の服を全部脱がせてしまいそうな勢いだった。

彼の口からは濃いお酒の匂いがして、私の体も彼のせいで火照って仕方がない。それでも、かろうじて残っている理性で、私は最後の一枚の布を必死で守るしかなかった。

地下駐車場に着いた時、彼は私を抱き上げ、振り返りもせずエレベーターへと進む。まるで狂ったように、私を壁に押し付けて激しくキスを繰り返す。

慎一は低くかすれた声で囁く。「俺に、くれるよな?」

私は首を反らして喘ぐ。こんなふうに弄ばれて、耐えられる女なんているはずがない。それに、彼がプライドを捨てて、車の中で私のためだけに必死になっていることが、なおさら私の心をかき乱す……

エレベーターは直通で家に着く。ドアが開いた瞬間、私の服はすでに行方不明だった。

私はもう抵抗しなかった。彼に抱きかかえられ、柔らかなベッドに運ばれる。

私の理性と心は、激しくせめぎあっていた。あれだけ何度も彼と体を重ねてきたというのに、今この瞬間も、私たちは名もなき関係のまま。

拒まないのは、ただ約束を果たすため。

私は目を閉じて、彼を急かす。「早くして」

慎一は服を脱ぎ、ズボンを蹴飛ばし、私が抱きしめていた布団すらも床に投げ捨てる。私の足首を撫でながら、「隠すな。もっと見せて」と囁いた。

部屋のエアコンは効いているはずなのに、冬の夜はやっぱり寒い。

私の肌には小さな鳥肌が立って、彼に触れられる部分は特に敏感になってしまう。

彼はまるで新しい遊びを見つけた子供のように、私を弄るのをやめようとしない。

私の意志を削ろうとしているのか、エロい言葉を囁き続け、どうにか理性を手放させようとしている。

私は唇を強く噛みしめ、どんなに彼が求めても、彼が聞きたがっているあの言葉だけは口にしなかった。

彼は、私に「愛してる」と言わせたいのだ。

私の体を弄び、泣くまで責めても、私は絶対に言わなかった。

やがて彼は私の耳たぶを噛み、私のそばで祈るように囁いた。「ハニー、愛してるって言って。言ってくれたら、俺も全部あ
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