เข้าสู่ระบบ二十二歳の春、朝倉朱音は恋人・晴紀との初めての誕生日デートをすっぽかされ、プレゼントはゴミ箱に捨てられた。さらに、令嬢に押し倒され、深くキスされている晴紀の姿まで見てしまう。 朱音を救ったのは、中性的な美貌のイメージディレクター・天野黛(D)。Dに導かれ、朱音は七年後、美しく成熟したマーケティング部長となる。そして仕事相手として再会した晴紀は、謝罪する。だが朱音は知っていた。彼が背負う家の事情を──そして自分が奪われたものを。七年越しの復讐がいま静かに始まる。けれどその計画は、憎しみでは終わらず、次第に別の感情へと形を変える──。
ดูเพิ่มเติมプロポーズの夜から、数日が過ぎた。 七年前、あなたの未来から、私は一度消えた。 それでも今、私はあなたの隣を歩いている。 並んで歩く。何も言わなくても、距離は自然に近くなっていた。ふと、文具店の前で晴紀が足を止める。 ショーウィンドウに並ぶ、革の手帳。彼の視線が、一冊の水色の手帳で止まった。ほんの一瞬だけ。「入ろうか」 晴紀の言葉に、私は頷いた。 店内は静かだった。棚には、上質な革の手帳がずらりと並んでいる。黒、茶色、紺、深緑。 落ち着いた色の中で、私の視線はある一冊に吸い寄せられた。「……これ」 指先で触れたのは、透き通るような、けれど深みのある水色の手帳だった。七年前、私が彼に贈ったあのメモ帳と、同じ色。「また水色にするのか?」 隣で晴紀が、少し意外そうに私を見る。けれど、その目はどこか愛おしそうだった。 私は頷いて、その手帳を彼に手渡した。「晴紀の色だから」 彼の指が、手帳を受け取る。「今は『晴れ』を、誰かのために使える人だと思うから」 私の言葉に、彼は一瞬だけ目を見開いた。 かつての彼は、その名前の重さに縛られ、一人で嵐の中に立っていた。でも今は違う。 晴紀は水色の手帳を、愛おしそうに指先で撫でた。それから棚の奥へ手を伸ばし、今度は鮮やかな、けれど落ち着きのある赤い手帳を取り出す。「じゃあ、朱音はこれだ」「えっ、赤?」「ああ。朱音だし」 晴紀は少しだけ笑った。「それに、俺の心を溶かしてくれたのは、君のその熱さだったから」 まっすぐな目で、見つめられる。「これからは俺の隣で、ずっと赤く輝いていてほしい」 ストレートすぎる言葉に、顔が熱くなる。「……そういうこと、普通に言うようになったね」「君には、言い惜しみしたくない」 また、そんなことを言う。 七年前は、言葉が足りなかった。お互いに足りなくて、すれ違って、取り返しのつかないところまで離れてしまった。 だから今の晴紀は、少し不器用なくらい、ちゃんと言葉にしようとしてくれる。そのことが、嬉しかった。 レジで並んだ二冊の手帳。水色と、赤。 それはまるで、これから二人が紡いでいく新しい空の色と、そこに昇る太陽のようだった。「……大事にするね、晴紀」「俺も」 会計を終えて、店員から袋を受け取る。晴紀は水色の手帳を一度取り出し、表紙を確かめるよ
「……本当は、もっと綺麗な言葉を考えてた」 晴紀が、静かな動きで、テーブルの上に小さな箱を置く。 胸が、大きく跳ねる。 「でも、君の前だと、たぶん無理だな」 箱が開く。 やわらかな灯りの下で、石がひとつ、静かに光を返した。 「朱音」 名前を呼ばれる。 その声に、七年前の夜も、病室の白い天井も、社長室の別れも、全部が重なって、それでも今だけは、ちゃんとひとつの場所にたどり着いた気がした。 「嬉しい時だけじゃなくて、しんどい時も。 喧嘩する日も、仕事で潰れそうな日も。 みっともない俺も、強すぎる君も、全部ひっくるめて」 一度だけ、息を吸う。 「これから先を、一緒に生きてほしい」 もう、涙がこぼれていた。 「結婚してほしい」 指先が震える。 言葉にしたいのに、胸の奥の方が先にいっぱいになってしまう。 晴紀は続ける。 たぶん、これを最後まで言うために、ここへ来たのだと分かる声で。 「答えを急がせたいわけじゃない。けど、もう君のいない未来を、正しいって言い聞かせるのは終わりにしたい」 低く、静かな声だった。 「朝、同じ家で目を覚まして、くだらないことで笑って、忙しい日は一緒に疲れて……そういう、当たり前の毎日を、君と生きたい」 その言葉が、胸のいちばん柔らかいところに落ちる。 「……一緒に家に帰ろうか」 その瞬間、私はほんとうに駄目になった。 七年前、ここで失ったはずのものが、まったく違う形で胸に戻ってくる。 待たされた夜。 選ばれなかった夜。 独りで帰った夜。 その全部に、今、答えが置かれた気がした。 「……そんなの」 涙で滲んだ視界の向こうで、彼がじっと私を見ている。 「そんなの……断れるわけ、ないでしょ……」 笑いながら泣くみたいな声になった。 自分でも情けないと思うのに、晴紀はそんな私を見て、泣きそうな顔で笑った。 「……うん」 「うん、って……何それ」 「よかった、って意味」 私は泣きながら、でもちゃんと頷いた。 「……帰ろう」 その一言で、晴紀の表情が崩れた。 救われたみたいに、安堵したみたいに。 七年前の私は、この場所から独りで帰った。 期待したぶんだけ傷ついて、何も持てないまま、俯いて。 でも今は違う。
ホテル・クラウンセレスティアのガラス壁が、夜の街の光を静かに映していた。 足を止めたのは、一瞬だった。 たった一瞬なのに、胸の奥では七年前のあの夜が、今も鮮やかに息をしている。 深紅のワンピース。 冷えていく指先。 届かなかったメッセージ。 開かない未来。 自動扉の向こうを見つめたまま、私は小さく息を吸った。 「……やっぱり、緊張する?」 隣から落ちた声に、顔を上げる。 晴紀だった。 今日は先に店で待っているのではなく、ロビーの入口に立っていた。 黒のスーツ姿。けれど以前みたいな作られた余裕はなくて、私を見る目だけが、まっすぐだった。 「……少しだけ」 そう答えると、晴紀は一歩近づいてくる。 「うん」 それだけ言って、私の手を取った。 強く引かない。 逃がさないように、でも、怖がらせないように。 そんな触れ方だった。 「今日は、最初から迎えたかった」 胸が、静かに揺れる。 「……待たせたくなかったから」 その一言だけで、喉の奥が熱くなった。 私は何も言えず、小さく頷く。 彼と並んで中へ入る。 ロビーの空気は変わらず静かで、磨かれた床も、低い照明も、記憶の中の夜と同じはずなのに──今日は、私を置き去りにする場所には見えなかった。 レストランの前で、スタッフがすぐに頭を下げる。 「清水様、お待ちしておりました」 その言葉に、胸の奥の何かが、ひとつほどけた。 今回は、ちゃんとそこに予約があった。 ちゃんと、私たちの席がある。 晴紀が私を見る。 「行こうか」 「……うん」 案内されたのは、七年前と同じ窓際の席だった。 同じ場所。 同じ高さの灯り。 同じ夜景。 でも、向かいの席に座る彼は、もう七年前の彼じゃなかった。 水が注がれ、最初の皿が置かれる。 けれど私は、料理よりもずっと、彼の指先ばかり見ていた。 ナイフを持つ手。 グラスに触れる手。 その手が、あの夜、何も拾えなかった私の心に、いまはこんなにも慎重に触れようとしている。 「……朱音」 低い声で呼ばれて、視線を上げる。 晴紀は、少しだけ息をついてから言った。 「最初に謝らせてほしい」 私は黙って、続きを待つ。 「あの日、ここで君を待たせたこと
外に出ても、晴紀は私の手を離さなかった。 何も言わないまま、その手の温度だけを確かめるように、私たちは夜の街を進んだ。 そして辿り着いた彼のマンションで―― 扉が閉まった瞬間、背後の壁に押し付けられた。 カチリ、と鍵が閉まる音が、合図になる。 明かりをつける間もなかった。 暗がりの中で、晴紀の唇が、飢えた獣のように私の言葉を奪った。 「……朱音、……朱音」 何度も、何度も私の名前を呼ぶ。 その声は掠れていて、これまでの七年間、彼がどれほどの想いを喉の奥に押し込めてきたのかが伝わってきた。 胸が締めつけられた。 冷たい扉の感触と、彼の手のひらの熱。 ブラウスのボタンを外す彼の手は、驚くほど震えていた。 「怖かった……。君を失うことが、こんなに恐ろしいなんて」 露わになった私の肩に、彼が顔を埋める。 熱い吐息が肌をなぞり、首筋に吸い付くような感触が走る。 「っ、……はるき」 彼のシャツを、爪が食い込むほど強く握りしめた。 リビングのソファに倒れ込み、重なる体温。 晴紀の指先が、私の肌をひとつひとつ確かめるように愛撫し、奥へと滑り込んでいく。 「……信じられない。本当に、君がここにいるなんて」 月明かりに照らされた彼の瞳には、これ以上ないほどの愛おしさと、剥き出しの欲情が渦巻いていた。 彼が自らもすべてを脱ぎ捨て、私の脚の間に身を沈める。 密着した肌から伝わるのは、壊れた時計のような、激しくて不規則な鼓動。 ゆっくりと、けれど逃げ場のない強さで、彼が私の中に踏み込んできた。 「あ……っ、……ふ、……っ!」 喉の奥から、自分でも驚くような声が漏れる。 満たされる感覚は、これまで知っていたどんな快楽よりも濃密で、逃げ場のない熱が渦を巻いて押し寄せる。 晴紀が私の指を絡め取り、手のひらをぴったりと重ね合わせた。 「離さない。……もう二度と、一人で待たせないから」 突き上げられる衝撃のたびに、意識が白く弾ける。 彼の背中に爪を立て、私はただ、その熱の中に溶けていった。 七年間の苦しみも、あの病室の白い天井も、全部、今この瞬間の熱さで上書きされていく。 汗ばんだ肌が絡み合い、限界を超えたとき、私たちは同時に、深い歓喜の混ざり合った絶頂へと突き落とされた。
また、視線を感じた。 ちくりと胸に引っかかる。 好意じゃない。 明確な、敵意。 顔を上げると、 少し離れたブースにいるルカと、目が合う。 隣にはいずみ。 偶然だと思って、視線を外す。 でも—— 少しして、また合った。(……さっきから、何度も) 理由は分からない。「……まただな」 晴紀が、低く言った。 手は動かしたまま。 でも、声にだけ苛立ちが混じっている。「なんだ、あいつ。 さっきから」 その言葉で、 私もはっきり意識してしまう。 ——確かに、おかしい。 そのとき。「……ああ」 Dが、小さく息を吐いた。 誰に向けるでもなく、 会場の奥を見た
――だから、あんなふうにキスされた夜を思い出したのかもしれない。 ソファで眠り込んだまま、胸の奥が熱を帯びていた。 ふと、かすかな気配が動いた。 ドアが、ごく静かに開く音。 夜中らしい沈黙と、カーテンの隙間からこぼれる街灯の明かり。 その向こうに、人影が立っているのがぼんやりと分かった。 ……晴紀だ。 ゆっくりと近づいてくる気配。 視線が、こちらに落ちてくるのが分かる。 眠っているふりをしたまま、まぶたの裏で、それだけを感じていた。(……なに) 意識の端でそう思ったはずなのに、身体が動かない。 まどろみの中に沈んだまま、世界だけが流れていく。 しばらく、何も起きな
工房の空気は沈んでいた。 誰も声を出さない。 温度も数字も整えたはずの琥珀糖が、沈んだまま動かない。 空気そのものが、重く垂れ下がっているようだった。 (……あかん) 息が詰まりそうで、佐古は作業着の裾を握りしめ、静かに工房を抜け出した。 外は冷たい空気が満ちていた。 肺の奥までヒリヒリと刺す。 薄暮の光が、商店街のアスファルトにかすかに反射している。 街路の影が伸びていた。 壁にもたれ、佐古は深く息を吐いた。 清晴堂に入って十五年。 後藤親方に拾われ、叱られ、笑われ、鍛えられてきた年月だ。 焦がして、泣いて、それでもしがみついて、気づけば
玄関のドアが静かに閉まる。 外の冷たい空気が断たれ、部屋の温度が急に近くなる。 Dはコートを脱ぎながら、 部屋の中をひとつひとつ確かめるように見渡した。 そして、私の方へ向き直る。「朱音。ひとつだけ、確認したいことがあるの」 いつもの柔らかい声。 なのに、逃げ場がないくらい真っ直ぐだった。「あなたが——復讐をやめると決めたのなら」 そこで一歩近づく。 息が触れる距離。「……私と、一緒に生きてみない?」 告白より静かで、 求婚より甘くて、 選択より重い言葉だった。(……Dと、生きる?) 一瞬だけ、胸がふっと軽くなる。 気づきたくなかった感情が、静かに顔を出し
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