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家族みんな、妹だけを愛してる
家族みんな、妹だけを愛してる
Author: 黄昏の暁(たそがれのあかつき

第1話

Author: 黄昏の暁(たそがれのあかつき
私と早瀬愼吾(はやせ しんご)は七年付き合って、ようやく結婚することになった。

ドレッサーの前に座り、三度もファンデーションを重ねて、やっと青白くやつれた顔を隠した。

その時、背後から足音が聞こえ、鏡の中に母・小林鈴美(こばやし すずみ)の姿が映る。

「千暁」

私は一瞬、背筋が凍りついた。無理やり立ち上がって、彼女にとってつけたような笑顔を向ける。

「お母さん、もう来てたんだ」

だけど鈴美は突然、ナイフを取り出し、自分の首元に押し当てて、私に懇願した。

「ねえ、千暁の結婚式、百萌に譲ってくれない?

占い師がね、百萌の病気は喜び事があれば良くなるって言ってたの。

百萌はずっと愼吾のことが好きだった。彼と結婚すれば、きっとよくなるから……」

鈴美は私が断るのを恐れてか、ナイフの先で首筋を切り、血がにじんできた。脅すように言う。

「もし譲らないなら、ここで死んでやる。そうしたら、千暁の結婚もぶち壊しだよ」

頭が真っ白になった。信じられない。

「百萌が欲しいものは、何だって私が譲らなきゃいけないの?

私の肝臓も、結婚式も、ウエディングドレスも、指輪も、果ては私の恋人までも?」

「そうよ!」

鈴美は食い気味に言い切った。

「もし洋司おじさんがいなかったら、私たち家族はとっくに路頭に迷ってたのよ。

千暁、百萌には借りがあるのよ」

鈴美が尾田洋司(おだ ようじ)と再婚している。私と兄・小林滉一(こばやし こういち)を尾田家に連れてきてから、このセリフは耳にタコができるほど聞かされてきた。

私は尾田百萌(おだ ももえ)に借りがある、と。

小さい頃から、何でも百萌に譲ってきた。

母と兄の愛情も。

私が好きなオモチャやワンピースも。

試験の成績すらも。

今、私に残ったのは愼吾だけなのに。

どうして、それまで奪われなきゃいけないの?

私は、必死に自分の声を探した。やっとの思いで口を開く。

「もし、譲らなかったら?」

鈴美は驚いたように固まった。私が拒むなんて、思ってもなかったのだろう。

その瞬間、滉一がドレッサーのドアを蹴破って入ってきた。

冷たい顔で部屋に入ってきて、鈴美の手からナイフを奪い取ると、私の顔を思い切り平手打ちした。

「千暁、お前は本当に恩知らずだな!

誰がお母さんにそんな口をきいていいって許したんだ?

たかが結婚式を譲るだけで、死ぬわけでもないだろう?」

呆然として、しばらくしてからやっと頭が働き始めた。私は滉一を見上げて、鼻で笑った。

「もし、本当に私が死ぬことになったら、どうするつもり?」

鈴美の声が急に鋭くなる。

「何言ってるの、縁起でもない!」

私の目に浮かぶ涙に、彼女は気づかない。勢いよく私を叱りつける。

「小さい頃から、百萌と張り合ってばかり。今度は病気まで真似するつもり?」

滉一は私の態度にますます失望したようで、冷たい目で言い放った。

「なんでこんなに分からず屋なんだ?

百萌は俺たちの妹だぞ。健康で幸せに生きてくれれば、それでいいじゃないか」

そう言いながら、滉一は私の腕を乱暴に引き寄せ、鈴美に合図する。

「さっさとやれ。式が始まるぞ」

私は涙で霞む目で滉一を見て、喉に大きな岩が詰まったようで、呼吸すら苦しい。

子供の頃、滉一は私を守るって言ってくれた。

お父さんの代わりに私をお姫様みたいに可愛がって、誰にも傷つけさせないって。

だけど今、彼の顔には嫌悪しかなかった。まるで私をこの手で殺そうとしているみたいに。

鈴美は私の背後に回り、ウエディングドレスのファスナーを下ろし始める。

私は痩せて醜くなった自分の体を守るように抱きしめ、かすれた声で「やめて」と懇願した。
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