ログイン幼馴染の菊地莉奈(きくち りな)との結婚式の最中、突然、目の前にコメント欄が飛び出してきた。 【ウケる。新郎はまだ、新婦が偽物だって知らないんだ。本物のヒロインである菊地は、今ごろ他の男と過ごしてるってのに!】 【でもそんなの関係ないか。菊地が幼馴染と結婚しようとしたのも、最初から相手の財産狙い。この物語は幼馴染同士じゃなくて、新しい出会いが実を結ぶ純愛ものなんだから!】 【新郎は最後、彼女にすべてを奪われて結構ひどい目に遭うんだよな。ちょっとだけ同情するよ】 俺は動揺を押し殺し、知らないふりをして結婚式を最後までやり遂げた。 彼女の「新しい恋」のための踏み台になり、惨めな人生を送るのはごめんだ。 莉奈が俺との結婚を望まないのなら、いっそこのまま他の女性と本気で結婚してしまおう。
もっと見る莉奈は妊婦を襲ったことは、警察沙汰になった。競売にかけられた菊地グループの資産を、優香が破格の値段で一括購入した。彼女は菊地グループの土地を俺へのプレゼントとしてくれた。「はい、これ。これからのこのビルを藤原グループの本社にしてもいいよ」俺は優香を見つめ、腰に腕を回して笑った。「君はずいぶん俺を甘やかすね。俺がもらっていいのか?」彼女はそのまま俺の胸に身を委ね、まっすぐな瞳で告げた。「私のすべてをあなたにあげたいの。命だって同じよ」数か月後、優香は元気な男の子を無事に出産した。お食い初めの日、藤原家と松井家は盛大なパーティーを開いた。会場で父が藤原グループの経営権をすべて俺に譲ることを正式に発表した。同時に、優香も松井グループの会長として、公の場へ初めて姿を現した。会場がどよめいた。かつて偽物の新婦として俺の隣に立っていた女が、投資家の家系出身だったとは誰も想像できなかったからだ。記者たちが殺到し、次々とマイクを突きつけてくる。「松井グループの会長として、なぜ当時菊地社長の代わりに新婦として結婚式に参加したのですか?」「藤原社長、当時から奥さんの正体をご存じだったのですか?」優香は静かに眠る小さな息子を一目見て、それから隣に立つ俺を見て、優しい笑顔を浮かべた。彼女は、大勢のカメラに向けてゆっくりと答える。「だって、ずっと昔からこの男を愛していたんですもの。手に入れたすべての幸運を懸けて、彼を守れる場所に辿り着こうとしました。結果、こうして報われました」優香はそのまま俺の耳元で囁いた。「実はね、あの結婚式の時、私はコメント欄が見えたの。あなたと結ばれたら、あなたの悲しい最期を書き換えられるって」俺は言葉を失い、込み上げる熱さに目を潤ませながら思わず笑みが漏れた。優香の澄んだ瞳の奥に、今の自分が鮮明に映っている。「優香、愛してる」俺の目の前で、最後のコメントが輝いて見えた。【おめでとうございます!逆転劇お疲れ様。真実の愛が報われた!二人の未来に幸あれ!ずっとずっと、お幸せに!】
莉奈は地面にひざまずき、泣きじゃくりながら俺に許しを請うた。「魔が差したの……浩にそそのかされて……結婚式であなたを辱めたことも、全部私が悪かったわ。許して、お願い!お願い、あなたの父親に出資のことを頼んで。菊地グループを、母を助けて!なんでもするから!浩とはもう縁を切るって声明を出すわ!あなたと結婚したいの。あなたに一生尽くすし、なんでも言うことを聞くから!」尊厳のかけらもなく、必死に助けを求める莉奈の姿を見ても、俺は何も感じられず、ただ滑稽に思えた。【この女は元の本の中とは別人だな。本来なら、命乞いをするのは藤原さんで、彼女は話も聞かないで切り捨てたんだよな】【こいつはいつもそうだよな。自分の損得が絡むと、都合よく言い訳を並べるんだ】その姿を見て、俺の心は冷え切った。俺は莉奈にきっぱりと言い放った。「莉奈、もう遅いよ。俺の心を踏みにじって、他の男の懐に入ろうとした時点で、俺たちには終わったんだ。菊地グループがどうなろうと、お前の母がどうなろうと、俺には関係ない。これは、お前たちが償うべき代償だ」莉奈の泣き叫ぶ声を背にして、俺は部屋の中へ戻った。莉奈は結局、菊地グループの倒産を止めることができなかった。邸宅も高級車もなくなり、高嶺の花だった莉奈は、やがて全てを失った。数ヶ月後、俺は優香に付き添って、ベビー用品店を訪れていた。優香のお腹は少し膨らみ、母親になる喜びに満ち溢れていた。両手いっぱいの荷物を抱え、俺は優香が周囲の人々にぶつからないよう、気を配りながら歩いた。店から出た瞬間、汚れた服をまとい、髪がぼさぼさの女が突然現れ、俺たちの行く手を阻んだ。それは莉奈だった。顔は痩せこけて、目は血走り、正気を失っているように見えた。優香のお腹の膨らみに気づいた瞬間、莉奈の顔がさっと青ざめた。「蓮……」彼女は優香のお腹をじっと睨みつけながら、声を震わせた。「この女……妊娠、したの?」優香が無意識にお腹を守ったのを見て、俺はすぐさま彼女の前に立ち、冷たい視線を莉奈に向けた。「どけ。妻を怯えさせるな」「どうして……」莉奈は俺の言葉など聞こえないかのように、ただ睨みつけてきた。「どうしてあなたが幸せになれるの?私の人生も、菊地家も奪ったくせに、なんであなたが幸せを手にしているのよ!
莉奈は顔を真っ赤にし、鋭い目つきで、じっとこちらを睨みつけていた。俺はそんな莉奈の態度を気にせず、彼女の耳元で囁いた。「莉奈、忘れてないだろうね?菊地グループが藤原グループから受けた200億円の融資。来週の月曜日が返済期限だから、ちゃんと返すように」そう言い捨てると、絶望な表情を浮かべる莉奈を残し、優香の手を引いて、その場を後にした。その後、コメント欄で結婚式の結末を知ることになった。莉奈と浩の結婚式は、何とも言えない空気の中、なんとか進行できたようだった。式が終わるやいなや、莉奈はすぐに浩を引き連れて、彼がよく口にしていた盛沢市にいる投資家の叔母の元へ向かった。しかし、その叔母とは、小規模な貸金業を経営しているだけの、街のチンピラに過ぎなかった。落ちぶれた様子の莉奈をしばらく眺めると、女は煙を吐き出しながら、のんびりと口を開いた。「投資?ああ、いいわよ。ただ、利息は少し高めだよ」その複利の計算方法は、どんな闇金よりも危ないものだった。莉奈はその場に立ち尽くした。自分が最初から最後まで、浩に騙されていたことをようやく悟ったのだ。莉奈怒りにまかせて浩を問い詰め、二人は喧嘩を始めた。浩もとうとう猫を被るのをやめ、腕組みをしながら鼻で笑った。「一体何様のつもりだ?僕がいなかったら、今日の式は収拾つかなかっただろ!お前は、まさかまだあの男が助けてくれるとでも思ってるのか?夢でも見てんのか!それからな、お前は妊娠なんかしてねぇよ!全部僕の嘘だよ。文句あるなら言ってみろ!お前なんて、僕がいなきゃ誰にも相手にされないような女なんだよ」莉奈は全身を震わせ、手を上げようとした。しかし、浩の何とも思っていないような顔を見た瞬間、力なく腕を下ろした。その通りだ。今の彼女に、誰が相手するのだろう?菊地家の人でさえ、菊地グループが復活できると信じていなかった。その様子を見ていた取引先たちも、次々と手を引いていった。菊地グループはもう、破産手続きに入っていった。恵美はショックで倒れて、そのまま病院へ運ばれた。莉奈は奔走し、至る所で頭を下げて金を工面しようとしたが、どこに行っても門前払いを食らった。結局のところ、破産寸前のグループに投資したい人間など、どこにもいないのだ。そんな混乱の真っ只中、浩はさっさと
数えきれないほどのカメラと、ひそひそと話す招待客の視線に、莉奈は身動きがとれなくなった。今日この結婚式でさらに醜態をさらせば、彼女は本当に世の中の笑いものとなり、もう二度と表の舞台に立てなくなる。莉奈は歯を食いしばって、戸惑った表情で浩を見つめた。浩は莉奈のそんな様子など気にも留めず、幸せそうに彼女の腰を抱き寄せ、招待客に向かってマイクで話した。「今日は僕と莉奈さんの結婚式にお集まりいただき、ありがとうございます。みなさん、新郎がなぜ蓮さんじゃないのかと疑問に思っているのでしょう」そう言って、浩はいとも愛おしそうに、莉奈の平らなお腹に手を添えた。「なぜなら……莉奈さんのお腹には、僕たちの赤ちゃんがいるからです。赤ちゃんのため、そして愛し合っている僕と莉奈さんのために、蓮さんは身を引いてくれたのです」莉奈はギョッとして浩の顔を見た。その瞳には、驚きと疑念が浮かんでいた。【またびっくりしてるじゃん、この女、いつも面白すぎるんだよ】【そりゃびっくりするだろ。しっかり避妊してたはずなのにって。本人は知らないけど、別に妊娠なんてしてないよ!】浩は莉奈の目を見つめながら、涙をこぼした。「莉奈さん、僕たちに赤ちゃんができたんです。これからは僕があなたと赤ちゃんを一生かけて守ります」そして彼は俺に向き直り、勝ち誇ったような笑みを隠そうともしなかった。「蓮さん、本当にありがとうございます。安心して、莉奈さんのことは、これからは僕がしっかり守りますから」浩の言葉で、会場は一瞬でどよめき始めた。「妊娠?どうりで藤原グループの御曹司が降りたわけだ!自分の女が、横取りされたのか!」「やっぱりね。菊地さんが藤原家と手を切りたいはずないもん。赤ちゃんができたとはね」「こりゃあ修羅場だ。幼馴染と、でき婚を狙った男のバトルか!」記者たちのレンズは、俺、莉奈、そして浩の間を行き来し、どんなネタも見逃すまいと必死だった。莉奈の顔色は、すでに真っ青だった。俺は優香の手をぎゅっと握りならが、莉奈に最高の笑顔を向けた。「もうすぐ式が始まるよ。新郎を待たせてはいけないでしょ?」今、菊地グループは存亡の危機にある。莉奈は、もうこれ以上スキャンダルを起こすわけにはいかないのだ。この結婚式を、意地でも最後までやり遂げるしかない