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第270話

Auteur: 藤崎 美咲
通話はスピーカーにしていた。星乃の声が響いたとき、律人はただ口元をほんの少しだけゆるめた。

仲介業者の男は驚いて、律人の方を思わず見上げた。

――どうして星乃が、律人がここにいるって知ってるんだ?

さっき電話をかける前、律人からはっきり言われていたのだ。「僕がここに来てることは、星乃には絶対言うなよ」

そのとき、仲介業者の男は正直、大げさだと思っていた。まさか、二人がここまで正確にお互いを読んでいたなんて。

仲介業者は律人が怖くて、言われたとおりに黙っていた。

しらを切るように言う。「はて?どちら様でしょうか?

お客さん、何の話をしてるのかよく分かりません」

その言葉を聞いて、星乃は一瞬だけ沈黙した。そして、自分が考えすぎていたことに気づく。

仲介業者はもう一度、部屋の紹介を始めたが、星乃は最後まで聞かずに落ち着いた声で遮った。「もういいです。どうせ、あなたが見つけてくれる部屋なんて、もう怖くて住めませんから。ご自分で住んでください」

仲介業者は、先ほど自分がふざけたせいで怒っているのだと悟った。

泣きたい気分で、律人の方をちらりと見やる。

――あのとき、余計な
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