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第1309話

Auteur: ラクオン
「でもね、駆け引きされるのが嫌なの。それに、『私のためだ』なんて言って、自分を傷つける行動をとるのも嫌。

私が望むのは、あなたがちゃんと養生して、元気な体で私を追ってくること。

追いかけてほしいっていうのも、別にあなたを困らせたいからじゃない。ただ、あなたの気持ちが本物なのか、それとも執念なのかを確かめたいだけよ」

清孝の胸の奥が大きく揺さぶられた。手を伸ばして彼女の手を握ろうとしたが、結局引っ込めた。

「香りん、俺は……すごく嬉しい」

紀香は分かっていた。自分はもう負けている。

この人を好きになってしまった以上、正しいか間違いかなんて関係なく、深い穴に落ちて抜け出せない。

「うん、あなたの勝ちよ。だから嬉しいんでしょう」

清孝は彼女の頭を軽く叩いた。

「そういう意味じゃない。本当に俺が勝っていたら、今ここでこんな風に話し合ってなんていないさ。

嬉しいのは君が本音をぶつけてくれたことだ。

君の望みなら、俺はその通りにする。

ただな……せっかくここまで登ってきたんだ」

彼は前方の山を見やり、口元に笑みを浮かべた。

「こうしよう。もし明日、雲海が出たら——今回俺が無理をして君を困らせたこと、許してくれ。

もし出なかったら、この借りは覚えておいてくれ。俺の怪我が治ったら、好きなだけ取り返せばいい。

それとも、他に考えがある?」

紀香は首を振った。

どちらにしても自分に有利なのだから、文句の言いようはなかった。

本当は、彼には一刻も早く病院に戻ってほしい。

もう二度と、自分のせいで傷を重ねるようなことをしてほしくなかった。

それは彼女には背負えない責任だった。

「もう話さないの?」

「話さない」

清孝はうなずいた。

「じゃあ、明日の朝を待とう」

だが、翌朝を待つまでもなかった。

その言葉が終わった後、奇跡のように前方に雲海が現れたのだ。

それは、朝日が昇ったときに見られる普通の雲海ではなかった。

黄金の光をまとった雲の海。

真っ白な雲海とは異なる荘厳さで、何より希少である分、いっそう貴重に見えた。

紀香は慌ててカメラを取り出し、夢中でシャッターを切った。

清孝は彼女の後ろに立ち、スマホで彼女と景色を一緒に収めていた。

その目には柔らかい笑みが宿り、レンズを調整し、夢中で撮影する彼女を見守っていた。

カシャカ
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