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第193話

Author: 楽恩
私は素直にうなずいた。

それから彼女をじっと見つめて、少しだけ疑いの目を向ける。

「……もしかして、伊賀がしつこく引き止めてる?」

「うん!……げっ」

水を飲んだ彼女が、ちいさくげっぷをした。目は少しうつろだけど、頭はまだはっきりしてるようだ。

「彼ね、私と別れたくないって。私のためなら、政略結婚もしないって言ってくれたの」

「え、マジ?」思わず聞き返す。

「嘘に決まってるじゃん」

ライは完璧なネイルが施された指で、私の額をコツンとつついた。

その表情は、酔っているようにはまったく見えなかった。

「本当かどうかなんて、どうでもいいの。彼がその気でも、家の人が認めると思う?伊賀家は江川家より多少は格が下かもしれないけど、だからって私みたいな人間が嫁げるわけないじゃん。恋が燃え上がったって、家族の強硬な反対に勝てると思う?たとえ結婚できたって、幸せに過ごせる日がいったい何日あるのよ。騙される方がバカなんだってば!」

一通り話し終えたライの頬を、私はそっとつまんだ。

「こんなに飲んでるのに、頭は冴えてるね」

彼女は少し苦い笑みを浮かべる。

「冴えてるからこそ、飲まずにいられないんだよ」

冷静すぎるんだ。

自分を甘やかす余地も、一時の幸福に酔う隙も与えないほどに。

来依は私の膝に頭を乗せて、ぽつりとつぶやいた。

「シンデレラが王子と結ばれたのは……もともと高貴な血筋だからだよね。私はせいぜい、マッチ売りの少女がいいとこ」

「じゃあ私は、そのマッチ全部買い取るよ。貯金はたいてさ。来依を金持ちにしてやる」

……どうせ江川家からもらった物が山ほどあるし、彼女を養うくらい余裕だった。

翌朝。

私は自然と目が覚めて、のんびりと支度を整えたあと、キッチンで朝食を作った。

牛乳とサンドイッチの、シンプルな朝食。

来依はテーブルの前でぐったり座って、私をじろじろと見ていた。

「……なんか、今日はやけに機嫌よさそうじゃない?」

「まあ、ね」

私はサンドイッチを彼女の前に置きながら言った。

「今日、宏と離婚証明書を取りに行くことになった」

「……今日?」

あくびをしながら、彼女は記憶を辿る。

「手続きが終わるの、来月じゃなかったっけ?」

「宏なら電話一本でどうにでもなるんだよ」

来依はムッとしたように言った。

「何それ、そんな
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