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第80話

Author: ラクオン
さっきまで無表情でスマホをいじっていた宏が、ふいに顔を上げ、こちらに目を向けた。

逃げ場はどこにもない。

私は観念して、そのまま診察室から出る。

宏の顔つきが少しだけ変わり、穏やかな声で言った。

「……どうした?病院なんて、具合悪いのか?」

さっきまでアナに冷たく言い放っていたのとはまるで別人だった。

以前の私なら、そんな態度に「私だけに優しい」とでも思ってしまったかもしれない。

でも今は、そんな幻想にすがる余地もない。

そこにあるのはただ、冷めた嘲笑だけ。

私がまだ口を開く前に、アナが診察室の前にある電子掲示板をちらりと見て、ふっと笑った。

そして、わざとらしく大きな声で言う。

「へえ~、こんな専門医にかかるんだ?もしかして、HPVにでも感染した?あれってさ、だらしない生活してるとなるやつだよね~?」

その言葉に、周囲の視線が一斉に私に向く。明らかに、嫌悪と軽蔑を含んだものだった。

だけど私はむしろ、ほんの少しだけ安堵した。

視線を掲示板に移して気づいた。

どうやら担当医が交代したらしく、今表示されている名前は私が診てもらった医師とは違っていた。

よう
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