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第7話

Author: 幸村安彦
(花綺桜子の視点)

龍治と耀司を呼び出しても何の収穫もなかった。

検死結果が出た。

遺体は骨切り包丁で心臓を刺され、即死していた。

その後、犯人は遺体を細かく切り刻んで冷蔵庫に入れていた。

すべての臓器はバラバラになっていて、

ただ心臓だけは無傷で取り出されていた。

これは犯人の意図的な行為だ。

家の中には格闘の痕跡もなく、窓やドアも壊れていないため、知人に犯行されたと考えられる。

心臓を無傷で取り出すためには、人間の体の構造を熟知している必要がある。

そこで甘絵に調査を指示した。

午後、甘絵が報告を持ってきた。

「紗奈には恋人がいます。綾瀬智博という医学生です。事件の数日前まで紗奈とはケンカをしていたんですが、この恋愛は二人しか知らない秘密でした」

「綾瀬?」

「はい、龍治の弟です」

この手がかりは紗奈が削除したメッセージの復元によって得たものだ。

机の上のコーヒーを手に取り、気を引き締めた。

医学生。

情熱的な殺人、動機はある。

だが、結果は意外なものだった。

「警官さん、僕たち恋人なんかじゃありませんよ。ただのセフレ、大人ですから、お互いに必要なだけの関係です」

智博は手で顔を支え、傲慢に言った。

「お前これは……犯罪だぞ」

彼は突然笑い出した。「警官さん、冗談じゃないですか。僕はお金も払っていませんし、強制もしていない。どこが犯罪なんですか?」

「先週月曜日はどこにいた?」

「うちですよ、両親が証人になります」

手がかりはまた途切れた。死亡時刻が一致しない。
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