愛の完璧な犯罪

私は暗闇の中で目を覚ました。ベッドの横にある携帯電話には『7月27日、1:00』と表示されている。

後頭部がひどく痛み、頭がぼんやりとして、まるで記憶の一部が抜け落ちたかのようだ。

浴室のライトがまだ点いていて、明滅している。

顔と首には少し微妙な粘り気があり、私は顔を洗おうと思ってトイレに向かうと、その瞬間、ライトがパッと完全に消えた。

最後のわずかな光が消え去る前に、トイレのカーテンの向こうにぼんやりとした人影を見た。

「誰？」

私の呼吸が急に乱れ、背中に汗が出た。

カーテンの向こうには、何の音もない。

もしかして、目の錯覚か？私は携帯電話の懐中電灯をつけ、震えながら近づき、ゆっくりとシャワーカーテンを引いた。

カーテンが動くと、突然一つの手が下に落ちてきて、その指が私の足に触れた。

白く、冷たく、硬直していて、明らかに生きた人間の手ではない。

寒気が一気に全身を駆け巡り、足元が滑って私はその場に倒れた。

その時、トイレのライトがまた一瞬だけ点灯した。

カーテンが引かれ、浴槽が現れた。そこには、頭のない男の死体が横たわっていて、青白い腕が浴槽の縁にかかっていた。

私は壁にしがみつき、胸が激しく上下する中、この浴室にこんな死体がある理由がまったく思い出せなかった。

「指紋認証失敗」

その時、玄関の方から機械音が聞こえた。

誰かが私の家に入ろうとしている？

一体誰だ？誰が午前1時に家の指紋ロックを試しているのか？

犯人？

私は無意識に息を止めた。

外は長い間静まり返り、その人物はどうやら去ったようだった。私はいつの間にか流れた涙を拭い、立ち上がろうとした。

「指紋認証失敗」

少し気を緩めた瞬間、また玄関から機械音が響いた。

その人物はまだドアを開けようとしている！

次の瞬間、ドアをノックする音が聞こえた。

「梨香、寝てるのか？」

距離が遠く、扉越しでその声はぼんやりとしか聞こえなかったが、若い男性の声だと分かる。

でも、彼は確実に私を知っている。

私は壁にしがみつき、震えながら答えられなかった。

「梨香！大丈夫か！？早く開けて！」

その声は焦りを感じさせ、ノックの音もますます激しくなった。

浴室には無頭の死体があり、外には見知らぬ誰かが午前1時にドアをノックしている。

私は耳をふさいで、どうすればよいのか分からなくなった。

その時、携帯の着信音が鳴り響いた。表示には「石川梨香の子犬ちゃん」とあった。

その親しみのある名前を見た瞬間、私の頭に浮かんだ名前は「白沢桃矢」だった。

その名前、どうやら私の彼氏のようだが、なぜかこの名前を思い出すと胸に恐怖が湧き上がる。

私は電話を取ると、焦った声が聞こえた。

「梨香！家にいるのか？何かあったのか？」

「うん……家にいる」

「ドアをノックしてたのに、何も聞こえなかったのか？俺は君が何かあったんじゃないかと思ったよ」

私は頭を外に出してみた。外から同じ声が聞こえてきたので、少し安心した。

「私は……さっき寝てたから、気づかなかった」私は無意識に嘘をつき、浴槽の中の死体を見ながら言った。「こんな時間に、どうして来たの？」

「だって1時間前、君が電話してきて、早く来てって言っただろ？」桃矢の声は疑問を含んでいた。

「そうだったっけ……実は、さっき目を覚ましたんだけど、なんか記憶が……」

記憶喪失という言葉を口にしようとした瞬間、心の中に何かが警告する声が聞こえた。『それを言ってはいけない』と。

「何か忘れてるって？まあいいや、今すぐドアを開けて入れてくれ」

私は頷き、大きく深呼吸して冷静になろうとした。ゆっくり立ち上がり、ドアに向かおうとしたその時、トイレのライトが再び急に点灯した。

私は足を止め、鏡の中に現れた四つの血文字に目を奪われた。

【絶対にドアを開けるな！】

浴槽の縁に置かれた死体の手の指先から、血がゆっくりと滴り落ちていた。