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第4話

Penulis: ヘリオトロープ
引っ越しの6日後、悠真と私は交際3年の記念日を迎えた。

2日前、私は彼に確認のLINEを送っていた。

【土曜日の午後。ちゃんと覚えてるよね?】

彼はすぐに返事をくれた。

【もちろん覚えてるよ】

あんなことがあっても、その一言だけで私は笑顔になれた。

土曜日の朝、私は段ボールの中から毛玉のついていない唯一のカーディガンを探し出し、白いスニーカーの汚れを拭き、納戸の小さな鏡の前で30分かけてメイクをした。

おしゃれをしたことに、悠真に気付いてほしかった。今回だけは、結愛よりも先に私を見てほしかったのだ。

私は約束の15分前にカフェに着き、入り口が見える席を選んだ。悠真の好きなアイスラテと、自分用のブラックコーヒーを注文した。

午後2時。「着いたよ」とメッセージを送った。

2時半。渋滞に巻き込まれているのだと自分に言い聞かせた。

3時。ラテの氷が溶け切ってしまったので、店員にお願いして新しいものと交換してもらった。彼が来た時に、ぬるい飲み物を出したくなかったから。

3時半。電話をかけたが出なかった。

ドアが開くたびに顔を上げたが、誰も悠真ではなかった。

2時間半が経過していた。

目の下のメイクは崩れ始め、必死に探し出したカーディガンが急に安っぽく、滑稽なものに思えてきた。

午後6時、ついにスマホが震えた。

【ごめん、本当にごめん。結愛ちゃんが、お父さんとよく行った川辺に行きたいって言い出して。精神的にすごく不安定になってたから、一人にするのが怖くて。絶対に埋め合わせするから、別の日でもいいかな?】

メッセージの下には写真が添付されていた。

うつむきながら手すりのそばに立つ結愛と、そのすぐ隣に寄り添う悠真。夕焼けの中で、二人の影が重なり合っていた。

誰が見ても、悲しみを分かち合う恋人同士にしか見えない写真だった。彼に放置された本物の彼女が、記念日に一人でカフェで待ちぼうけを食らっているなんて、誰も想像しないだろう。

彼はただ「忘れていた」わけではなかった。

私の着信を無視している間、彼らのどちらかがスマホを取り出して夕日を撮影し、悠真はその写真を私に送るために選んだのだ。

彼は、結愛がどれほど自分を必要としているかを私に理解させたかったのだろう。しかし、氷の溶けたグラスを前に、彼らが恋人のように寄り添う写真を見せられる私の気持ちなど、少しも考えてはいなかった。

私は二杯分のコーヒー代を払い、一人で家まで歩いて帰った。

メイクをしたまま帰宅した私に、どこへ行っていたのかと尋ねる者は誰もいなかった。

母は結愛の部屋に雑貨を飾り付けており、涼太は彼女のデスクの上にさらに別のイルミネーションライトを取り付けていた。

私は彼らを通り過ぎ、納戸へ入った。そしてヨガマットの上に寝転がった。

あと4日。一度くらい記念日をすっぽかされたところで、どうせもうすぐいなくなるのだから関係ない。そう自分に言い聞かせた。

翌朝、悠真がクリーム色のラッピングペーパーで包まれた花束を持ってやって来た。

止める間もなく、私の胸が高鳴った。謝りに来てくれたのだと思った。

私が納戸から出ると、悠真は私を通り過ぎ、まっすぐに結愛の部屋へ入っていった。

「結愛ちゃん」

彼は優しく声をかけた。

「昨日は辛かっただろ。だから、これ買ってきたんだ。昨日の今日だから、少しでも元気が出るかなと思って」

「悠真くん、ありがとう」

結愛が小さな声で言った。

この3年間、悠真は「花はすぐに枯れるから実用的じゃない」と私に言い続けてきた。

私の誕生日に、彼はスマホの充電器をプレゼントしてきて、「ほら、これなら実用的だろ」と笑った。私は彼に「要求の多い女」だと思われたくなくて、一緒に笑った。

今ならわかる。悠真は花が嫌いだったわけじゃない。

私の人生のどんな出来事も、花を買う価値がないと思っていただけなのだ。

「悠真」

彼が振り返った。隠す間もなく、その顔に罪悪感がよぎった。

「昨日は、私たちが付き合って3年の記念日だったんだけど」

彼は私を見つめ、それからパンッと自分の額を叩いた。

「あ……そうだった。何か忘れてる気がしてたんだ」

忘れていた。私を忘れたわけではなく、美容院の予約や買い物のメモを忘れるのと同じように、「予定」を忘れていたのだ。

「ごめん」

彼は早口で言った。

「記念日は別の日にちゃんとお祝いしよう。絶対に埋め合わせするから」

私は彼越しに、結愛の腕の中にある花束を見た。

「でも、彼女に花を買うことは忘れなかったんだね」

「ここに来る途中で花屋の前を通ったからさ。元気を出してもらおうと、ちょっとしたものを買っただけだよ」

「あなたは私に花を買ってくれたことなんて一度もないのに」

彼の表情がこわばった。

「奈緒!」

「3年間で、一度も」

廊下で口論になっていると、後ろのドアが開いて涼太が出てきた。悠真の顔から謝罪の色が消え、代わりに苛立ちが浮かんだ。

「お前、なんでもかんでも勝ち負けにしようとするのやめろよ」と彼は言った。

「結愛と競ってるわけじゃない」

「まさにそういう態度だろ。結愛ちゃんはお父さんに会いたくて川に行ったんだぞ。何時間も泣いてたんだ。少しでも慰めようとして花を買ったのがそんなに悪いことか?」

「昨日は記念日だったのよ」

「だから今分かったって言ってるだろ」

「あなたは二日前に分かってたはずよ」

彼は大きく息を吐き出した。

「彼女の父親は死んだんだぞ、奈緒。記念日なんていつでも祝えるだろ。でも彼女は、もう二度と父親に会えないんだ」

その言葉は、私たちの関係を「いつでも後回しにしていいもの」へと貶めた。結愛の悲しみは神聖なもので、私の失望はただの「邪魔なもの」だった。

涼太がこちらへ歩いてきて、すぐに悠真の肩を持った。

「いい加減にしろよ、奈緒。結愛ちゃんのお父さんは俺の命の恩人なんだ。この家族が彼女を特別に気遣うのは当たり前だろ。花束の一つくらいで、ギャーギャー文句言うなよ」

「私は彼女の花束が欲しいわけじゃない」

「じゃあ何が不満なんだよ?」

その問いは、まるで非難のようだった。

私は悠真を見た。問題は花じゃない。彼が結愛の感情を必死に守りながら、私の感情は「理不尽なもの」として扱うことなのだ。それに気付いてほしかった。

しかし、彼はただこの会話にうんざりしているような顔をしていた。

私は答えを待つことをやめ、納戸へと戻った。

背後で、涼太が「嫉妬深くって嫌になるな」と呟くのが聞こえた。

夕食の時、結愛が静かに私の茶碗に豚肉のおかずを乗せた。

「奈緒ちゃん、お願いだから怒らないで。悠真くんもすごく反省してるから」

彼女の謝罪すらも、「私たちが楽になるようにあなたが譲って」と要求しているように聞こえた。彼女の態度は心からのものに見え、それが余計に私を苦しめた。

結愛は一度も「部屋を寄こせ」と要求したことはないし、悠真に私を捨てろと言ったこともない。

彼女はただ部屋の中心に立ち、私の愛する人たちが、私に向かうはずだった愛情をすべて彼女の元へ運んでいくのを黙って受け入れているだけだ。

そして、私に何も残されていないことに気付くと、自分の手元からほんの少しだけおこぼれを分けてくれるのだ。

結愛の好きな色のワンピース。結愛の食卓の料理。私の彼氏に代わってする謝罪。

誰もがその施しを見て彼女を優しいと称賛し、なぜ私がその残飯に感謝しなければならないのかと疑問に思う者はいなかった。

「怒ってないよ」と私は言った。

深夜を過ぎてから、私はカレンダーを見た。

あと3日。

3日経てば、悠真はもう「別の日に埋め合わせする」と約束できなくなるし、家族が私に「もっと寛大になれ」「もっと理解してやれ」「もっと待て」と要求することもできなくなる。

彼らは、結愛を慰め終わった後には、必ず私がそこに待っていると信じている。

自分たちに残された時間がもうすぐ尽きることに、誰も気付いていないのだ。

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