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第701話
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永遠の毒薬 第704話
美咲は乃亜の言葉を聞いて、心の中で確信を深めた。「凌央が私を愛してるって、ずっと前から知ってたでしょ？昔は我慢できたけど、今はもう我慢しない」美咲は少し冷笑を浮かべながら言った。乃亜が凌央と復縁しようなんて、あり得ない。美咲の言葉が乃亜を過去に引き戻した。凌央が美咲を心から愛して、あんなに大切にしていた頃の記憶が鮮明に蘇る。あの愛は、まるで自分が見守ってきたもののように、今でも心の中で光り輝いている。「昔は目が見えなかった。でも、今は治ったから、もう我慢しない」乃亜はふっと笑いながら、指先で顔を撫でる。その仕草は挑発的で、まるで誰かを誘っているようだった。「今すぐここから出ていって」乃亜は冷たく言った。かつては凌央を愛し、彼のために我慢していた。しかし、今は何の縁もない。だから、もう我慢する必要はない。乃亜は心の中で決めた。美咲を遠ざけるには、少し優しさを見せても、最終的には追い出さなければならない。その様子を見ていた辰巳は、つい見惚れてしまった。「すごいな......」心の中で呟きながら、乃亜のしぐさに目を奪われる。以前は、恋愛に溺れる人を笑っていたのに、今や自分もその一員になっていると気づく。しかも、それがかなり深刻なレベルで。でも、告白して振られた今、どうやって乃亜に近づけばいいんだ？考えれば考えるほど、頭の中がぐちゃぐちゃになる。美咲は乃亜の様子を見て、少し心配になった。数年ぶりに会った乃亜、やっぱり以前と少し変わっている気がする。凌央ですら、今では彼女に何も影響を与えられなくなっている。それなら、今日来た目的が果たせなくなってしまうかも？いや、絶対に成功させないと。乃亜がこの世界から消えれば、自分はやっと安心できる。「辰巳さん、行こう。ここに立っていると、会社に影響を与えるよ」乃亜は冷静に言いながら、エレベーターに向かって歩き出した。最初は美咲をおびき寄せるためにトレンドを利用しようと思ったが、まさか美咲が直接ここに来るとは思っていなかった。ここでは手が出せない。まずはオフィスに戻って、どうやって美咲という問題を解決するか考えなければ。「乃亜、どこ行くの？逃げるつもり？」美咲は彼女の背中を見て、怒りを抑えきれずに吐き捨てた。乃亜、まさか何かを察したのか？そん
永遠の毒薬 第703話
乃亜はその声を聞いて、ようやく美咲の顔を見た。美咲がかなり真剣に化粧をしてきたことが分かる。しかし、そのメイクは厚塗りすぎて、まるで顔だけ浮いてるように見えた。不自然だった。美咲は背筋をピンと伸ばし、得意げに言った。「凌央は私があの中で苦しんでいるのを見て、どうしても我慢できなかったみたい。だから、なんとか私を外に出してくれたの」乃亜はその言葉を聞いて、心の中で冷笑を浮かべた。「そうなの？」とだけ返した。乃亜の黒い瞳は美咲をじっと見つめ、その唇はわずかに嘲笑的にゆがんだ。彼女が出てきたという話を聞いたとき、裏で凌央が手を貸しているとは考えもしなかった。美咲がそれを口にしたことで、胸に刺さるような痛みが走った。あの時、彼女を刑務所に送るために全力を尽くしたのに、わずか四年で出てきた。凌央は......本当に彼女を愛しているのか。美咲は乃亜に見つめられ、思わず手を握りしめる。背筋が自然と伸び、声を強く言い直した。「もちろんよ！信じないなら、彼に直接聞けばいいわ！」でも、なぜか隣にいるこの男の目が妙に気になる。もしかして、何か知っているのだろうか？いや、そんなことを考えちゃダメだ。自分を怖がらせないでおこう。その時、辰巳は信じられなかった。すぐに凌央に電話をかけて、真実かどうかを確かめようとした。「乃亜、認めなよ。凌央の心にあんたなんか最初からいないの！彼が愛してるのは、ずっと私だけよ！」美咲はさらに強く言った。だれも彼女の言葉を否定しないなら、もう何でも言える。乃亜に、あの時のように遠くへ去ってほしいと思っていた。その瞬間、電話が繋がり、美咲の言葉がそのまま電話越しに聞こえた。「辰巳、お前に美咲を止めろって言ったよね？どうしてこんなことになってるんだ？」電話の向こうからは、凌央の怒声が響いてきた。辰巳は心の中で思った。どうしてこんなことを言わせないようにしているんだろう。乃亜が美咲に何か言われて、さらに彼を嫌うようになったら、取り返しがつかない。そのため、美咲が乃亜の前で余計なことを言わないように、早く止めろという指示を受けていた。「分かった」辰巳は電話を切ると、乃亜をそっと引き寄せて低い声で言った。「凌央がさっき言ったんだ、美咲に会わせないように。お前はオフィスに戻った方がいい。ここは俺に任せてく
永遠の毒薬 第702話
乃亜について？「もし知りたければ、教えてあげるよ」辰巳は顔を近づけ、低い声で言った。「実は、乃亜に告白したけど、振られたんだ」乃亜に振られたこと、別に恥ずかしいわけじゃない。むしろ、堂々と言ってやろうと思った。美咲は顔を歪めた。「え、うそでしょ！あなた、凌央の友達なんじゃないの？知らないの？乃亜って、凌央に寝取られたこと、何度もあるんだよ？」乃亜って、一体何がそんなにいいんだろう。どうして、あんな女にみんな夢中になってるの？乃亜がいる場所は、いつも注目の的。「彼女と凌央は離婚してるし、俺と凌央は友達だ。だから、俺が彼女を追いかけるのはおかしくないだろ？」乃亜に振られたことを思い出すと、胸が痛んだ。でも、それがどうしてなのか、自分でもよくわからない。美咲は彼の表情から、嘘をついているわけではないと感じ、少し驚いた。乃亜というくそ女が、どうしてこんなに人気があるのか......いや、絶対にあり得ない！その時、エレベーターの扉が開き、乃亜が姿を現した。冷たい雰囲気をまとい、まるですべての光が彼女を照らしているかのような、美しさ。歩くたびに、内面からにじみ出る自信と余裕が周りを引き寄せる。その姿は、誰もが目を奪われてしまうほどの輝きを放っていた。辰巳は思わず息を呑んだ。その息が少しでも大きかったら、彼女に気づかれるのではないかと思って、慌てて静かにした。美咲は今日、裕之が会社に行っている隙に、しっかりメイクをして新しい服を着てきた。「これなら乃亜に勝てる」と思っていたけど、目の前で乃亜を見ると、急に自信が揺らいだ。乃亜の輝きには、何もかもが飲み込まれた気がした。美咲は、急に小さくなったような気がして、心臓が激しく打ち始めた。手のひらに汗がにじみ出てくる。乃亜の目線、微笑み......すべてが彼女の心の奥底にしまっていた不安を引き出してきた。それに、乃亜の存在が、彼女の冷静さを完全に奪っていくようだった。「どうして、まだここにいるの？」乃亜は辰巳に気づき、少し不思議そうに声をかけた。辰巳は驚きの表情を隠し、軽く笑って答えた。「どうした？わざわざ俺のために降りてきたのか？」本当は、目の前の女性を抱きしめたい衝動を感じたが、それはできなかった。「ただ、フロントに誰かが来たって聞
永遠の毒薬 第701話
凌央の声が少し不機嫌そうに響いた。「何？」その口調は硬く、何かを嫌がっているのがすぐにわかった。辰巳はそのことを気にせず、急いで話し始めた。「美咲が盛世のホールに入っていくのを見た。もし会ったら、衝突するかもしれない......すぐに来てくれ！」ほとんど一気に言い終えた。あまりに急いでいたせいか、咳き込んでしまった。「お前が先に止めておいて、俺もすぐ行くから！」凌央の声には焦りが感じられた。辰巳は心の中で思った。これまで何年も経ったのに、凌央は美咲にまだあんなに優しい。ほんとうに、情が深い人だなと。でも、凌央が「止めておいて」って言ってるんだ。急いで行かなきゃ。もし美咲が上の階に上がったら、二人がケンカでもしたらどうするんだ？急いで美咲のところへ向かないと、また凌央に怒られるかもしれない。美咲はエレベーターを待っているとき、背後から誰かに声をかけられ振り返ると、そのとき、ちょうど辰巳と目が合った。「私のこと呼んだ？あなた、私のこと知ってるの？」美咲は辰巳を知らなかった。どうして自分を知っているのか、少し不思議に思った。「凌央を知っているから、当然お前のことも知ってるよ」辰巳の顔は真剣で、話し方も冷静だった。彼は美咲を好まなかった。初めて美咲を見たとき、どこか苦手だった。そして、凌央がそれを見逃しているだけだと感じた。「凌央の友達か？でもどうして私はあなたを知らないんでしょう？」美咲は少し驚いた。彼女は凌央と長年の付き合いがあるので、彼の周りの人間はみんな顔見知りだったはずだ。それなのに、この男性は初めて見る。「今、知ったでしょ？それに、凌央から電話があって、お前を探しているって言ってたよ。少し待ってて」辰巳は美咲をちらっと見て言った。美咲はその言葉を聞いて、何だか胸がドキドキし始めた。「凌央が私を探している？でも、今は乃亜に会わなきゃいけないんです。ごめんなさいね、先に行くわ」美咲は一瞬躊躇したが、すぐに決断した。今日、裕之が会社に行った隙に抜け出してきた。帰ってきたらすぐにバレてしまう。彼が外にいる間に、乃亜に会う必要があった。辰巳は美咲が立ち去ろうとするのを見て、急いで腕を伸ばして彼女を止めた。「ちょっと待ってくれ！凌央がお前を探してるんだ。もしお前が行っちゃったら、俺が
永遠の毒薬 第700話
「私たち、まだそんなに親しくないでしょ？だから、そういう冗談はやめてくれない？」乃亜は真顔で言った。彼女は、自分を不快にさせる人には容赦しない。辰巳は少し驚き、眉を上げて言った。「あ、わかったわかった、もう冗談はやめるよ、怒らないでくれよ」乃亜の冷たい表情に、少し怖さを感じた。凌央にも似たようなものを感じた。「それで、まだ何か言いたいことがあるの？」乃亜は明らかに彼を追い出そうとしている。「実はさ、俺、結構優秀なんだよね。ちょっと考えてみてくれないか？」辰巳は、恋愛経験がゼロ。どうして女性を振り向かせるか全く分かっていなかった。だから、こうやってストレートに言ってしまう。乃亜は顔を曇らせ、立ち上がって言った。「もう帰ってください」彼女は即座に背を向け、ドアに向かって歩き出す。辰巳は、乃亜がなぜ怒っているのか全く理解できなかった。彼女が自分に気があれば、付き合うことになるはずだと思っていたのに、そんなことはないのか。考えながら歩いていると、乃亜はすでにドアを開けていた。「辰巳さん、もう帰っていいよ」彼女は冷たい口調で言った。辰巳は、その冷たさに驚いたが、結局は立ち去らなければならないことを理解した。彼は自分を慰めるように、心の中で「まあ、ここに来られたんだし、次回また来ればいいさ」と思った。しかし、乃亜の側を通るとき、足を止めて言った。「乃亜、俺、すごく直情的なんだ。もし変なことを言ってたら、怒らないでくれよ」乃亜は冷静な口調で答えた。「私は忙しいから、怒っている暇なんてないよ」他人に過ぎない相手に、わざわざ怒る必要はない。辰巳は乃亜の冷静な顔を見て、ますますわけがわからなくなった。「秘書を送るから、これから何かあったら電話してくれ。会社には来ないで」彼女は、二人が会う必要はないと言わんばかりに言った。その言葉に、辰巳は少しだけ気分が沈んだが、やはり「わかった」と答え、歩き出した。その時、突然美咲のことを思い出し、急に戻ってきた。「あ、もう一つ伝え忘れたことがあった！」乃亜は眉をひそめ、少し不機嫌そうに言った。「まず、言っておくけど、私は結婚していて、子供もいる。それから、あなたに私の生活に干渉してほしくない。もう帰ってください」辰巳は、心の中で大きな衝撃を受けた。今まで、欲し
永遠の毒薬 第699話
乃亜は、目の前にいる男が晴嵐まで調査していたことに驚き、思わず彼を再評価し始めた。彼の見た目は、若いわりに、金持ちの二世のような雰囲気を持っている。けれど、その目は異常に鋭い。まるで、すべてを見透かすような眼差しだ。この男は、まるで矛盾そのもののような存在だった。一方は紳士的で、もう一方はエリートっぽい。ただ、乃亜は彼が何を求めて自分の前に現れたのか、全く理解できなかった。本当にただ自分の身元を調べたかっただけなのか？「そんな目で見ないでくれよ。俺が言うことに、悪意なんて全くないんだから！」辰巳は両手を挙げて、必死に言った。「本当に、天に誓って！」乃亜はすぐに口を挟んだ。「それなら、何のために私に会いに来たんだ？」「本当に、真実を話していいのか？」辰巳は乃亜を見つめながら、笑顔を浮かべた。その笑顔は、少し間抜けで、大きな犬みたいに見えた。乃亜は心の中で、もしかして、彼が自分からお金を取ろうとしているのではないかと疑った。でも、そんなことに引っかかるつもりはない。「お前が好きなんだ。付き合ってくれないか？」辰巳は沈黙を破って、慌てて自分の気持ちを告げた。とにかく、先に気持ちを伝えておかなければと思った。彼女を絶対に、凌央に取られたくなかったからだ。乃亜は彼をじっと見つめ、ゆっくりとした口調で言った。「あんた、何を言ってるか分かってるの？」彼女は思わず、彼の頭がおかしいんじゃないかと思った。二人はまだ何度かしか会ったことがなく、挨拶すら交わしたことがない。にもかかわらず、彼は突然、告白してきた。こんなこと、普通の人はしないだろう。辰巳は乃亜の真剣な表情を見て、急に思い出した。自己紹介してなかったことに気づき、慌てて言った。「俺は辰巳だ。『鳩』という情報組織を作った。世界最大の情報ネットワークだ。お前が知りたいこと、何でも調べてあげるよ」彼は、自分が乃亜に気持ちを伝えた以上、全てを打ち明けるべきだと思った。今言うか、後で言うかだけの違いだ。だから今、先に言っておけば、誠実さが伝わるだろうと感じた。乃亜は彼の言葉を聞いて、もう一度彼を見つめ直した。もちろん、彼女は『鳩』のことは聞いたことがあった。でも、そのリーダーが変わり者で、頼んでもその人の気に入らないと助けてもくれないと
