地底の悪魔と歯車の魔女

地底の悪魔と歯車の魔女

last update최신 업데이트 : 2025-10-25
에:  日蔭スミレ참여
언어: Japanese
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女が仕事に就くなんて異端な時代。修理技師のネクターは、冒険を愛する好奇心旺盛な“異端の魔女”。 そんな彼女が、探索に潜った地底遺跡で出会ったのは、五百年前の“古代兵器”。それは人間の少年の姿をしていた。 彼を起こしたことでネクターの日常は一変。忠誠の契約を結ばれ、守られ、懐かれて…果てには同居する事に?! ネクターは彼をレックスと名付けた。ともに過ごす中で、彼の素直な性格とあどけない笑顔にネクターの心は揺れる。だが、やがて二人は軍から追われる身に…?! 「機械仕掛けの偶像と徒花の聖女」から200年後の世界を描く。 恋は冒険!産業革命・近世風×スチームパンク・ロマンス。 ※本作のみでもお楽しみいただけます

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1화

プロローグ これは全部私の所為

どんな男の心にも、手に入らなかった「特別な女」がいるという。

江崎詩織(えざき しおり)はずっと、賀来柊也(かく しゅうや)だけは違うと信じていた。なにしろ二人は、若い頃からずっと一緒にいたのだから。

でも、そんなのはただの幻想だった。

結局、誰もがそんな「忘れられない人」を胸に抱いて生きている。柊也もまた、その例外ではなかったらしい。

詩織が柊也と付き合い始めたのは18の時。それから、もう7年が経つ。

二千日を超える夜と朝を共にし、誰よりも深く肌を重ねてきたというのに。それでも、彼が若い頃に一度だけ目にしたという女性の面影には、敵わないなんて。

なんだか、笑えてくる。

7年もかけて、一人の男の本心さえ見抜けなかったのだ。

一体どれほどの想いだったのだろう。こんなにも長い間、その人を胸の内に秘めさせてしまうほどだなんて。

詩織の意識が逸れていることに、彼女の上で激しく体を動かしていた柊也は気づいた。不機嫌さを隠しもせず、彼女に集中を促す。

彼はベッドの上では、いつも貪欲だった。

その拍子に、彼の腕がベッドサイドに置かれていた黒いビロードの小箱に当たった。

落ちそうになったそれを、柊也は慌てて受け止める。下にいる詩織に当たらないように。

見慣れないものだったからだろう。彼は珍しく興味を示した。

「なんだ、これ」

詩織は感情の読めない表情でその小箱をひったくると、無造作にベッドの脇へ放る。そして柊也の首に腕を絡め、喉仏に唇を寄せた。

「こんな時に別のものに気を取られるなんて。もしかして、私に飽きたの」

その吐息まじりの囁きに、柊也は抗えない。小箱のことなど一瞬で思考の彼方へ追いやられた。

男が自分に夢中になっているその時、詩織は傍らに追いやられた黒い小箱に視線をやった。瞳が、じわりと潤む。

──柊也、あなたはこの箱の中に何が入っているかなんて、永遠に知ることはないのよ。

……

ひと月前、エイジア・キャピタルが上場を果たした。柊也の仲間たちが、彼のためにささやかな祝賀パーティーを開いてくれた。

詩織はめいっぱいお洒落をして、そのパーティーで柊也にプロポーズするつもりでいた。

本来、そういうことは男がするべきだろう。

でも詩織は、柊也を深く愛していたから。彼のためなら、女の意地もプライドも捨てて、自分からプロポーズしたって構わなかった。

この日のために、彼女が丸7年も待っていたなんて、誰も知らない。

柊也は仕事一筋の男だった。詩織はそんな彼のために、好きだった専攻を変え、興味のなかった金融の世界に飛び込んだ。

大学を卒業すると、海外の有名大学からの誘いも断り、エイジア・キャピタルに入社して柊也を支えた。

一番下の平社員から、一歩一歩キャリアを積み上げ、彼のトップ秘書にまで上り詰めたのだ。

その裏にあった苦労は、詩織本人にしかわからない。

付き合い始めて一番夢中だった頃、詩織は何度も柊也に問いかけたくなった。

「私と、結婚してくれる?」

けれど、その言葉を飲み込んで、結局一度も口にすることはなかった。

母がよく言っていた。贈り物も愛情も、自分からねだるものじゃない、と。

相手が自ら与えてくれるのが「愛情」で、こっちから求めるのはただの「施し」よ、と。

それに、柊也は愛情を言葉にするような男ではなかった。

これまでの長い間、彼の隣には詩織しかいなかったし、他の女性の影など一度も見えたことはない。

だから結婚は、二人にとってごく自然な成り行きのはずだった。

詩織はその未来を信じて、これまで会社の矢面に立ち、がむしゃらに戦ってきた。

仕事の大小や困難さなんて、関係なかった。

交渉のためにどれだけ酒を飲み、何度病院に担ぎ込まれたか、自分でももう覚えていないくらいだ。

急性アルコール中毒で流産した時は、手術台の上で本当に死にかけた。

親友の近藤ミキ(こんどう みき)が彼女に尋ねた。

「死の淵を彷徨って、少しは後悔した?たった一人の男のために、自分をこんなボロボロにしてまで、それって価値のあることなの」

詩織は迷いなく頷いた。

「価値はあるよ」

そんな詩織に、ミキは称号を授けた。

『愛に突っ走る勇者』!

そして、こう言った。

「あんたが、負けないことを祈ってる」

その時の詩織は、自信満々に答えたのだ。

「柊也が私を負けさせたりしない」

その信念だけを頼りに、彼女はエイジア・キャピタルが上場するその日まで、ひたすら耐え抜いたのだった。

柊也が本港市で上場を知らせる鐘を鳴らしたあの日、詩織が部屋に閉じこもって、一人で泣きじゃくっていたことなど誰も知らない。

泣き終えると涙を拭い、詩織は柊也へのプロポーズのサプライズを準備し始めた。

仕方ない。柊也はあまりにも忙しすぎた。

エイジア・キャピタルが上場を果たし、いくつものプロジェクトを抱えている。親しい友人や仕事仲間からの祝いの席にも、次から次へと顔を出さなければならない。二人のことまで考える余裕なんて、きっとないはずだ。

だから、自分から動くことにした。

柊也の負担を、少しでも軽くしてあげたかったのだ。

早くから覚悟を決めていたというのに、いざその瞬間を前にすると、詩織は心臓が張り裂けそうなくらい緊張していた。

ドアの外に立ち、何度も深呼吸を繰り返しながら、震える手をもう片方の手でさする。

口を開く前に声が詰まって、暗記するほど練習したプロポーズの言葉が出てこなくなってしまいそうで、怖かった。

ドアの向こうではパーティーがたけなわで、男たちの大きな話し声が聞こえてくる。

「なあ柊也、柏木志帆(かしわぎ しほ)とはまだ連絡取ってんのか」

「柏木志帆?それって、柊也の『忘れられない女』だろ?なんで今さらその名前が」

「あいつ、近々桜国に帰ってくるらしいぞ」

「マジで?じゃあ、柊也もついに本命とよりを戻せるってわけか」

その言葉に、興奮で微かに震えていた詩織の手が、ぴたりと止まった。

「つーか、志帆ちゃんの親父さん、最近じゃかなり出世してるらしいじゃないか。柊也が彼女と結婚すりゃ、柊也自身にとっても会社にとっても、メリットは計り知れないだろ。エリートと美人のお嬢様、家柄だって釣り合ってるしな。

しかも相手は柊也の『忘れられない女』だ。仕事も恋も、一気に手に入れるってか。最高じゃん」

そう言ったのは、柊也の幼馴染である宇田川太一(うだがわ たいち)だった。

自分は柊也と「ガキの頃からの付き合いだ」といつも豪語している男だ。彼の言葉に、嘘はないのだろう。

柊也に……忘れられない人が、いたなんて。

詩織の心臓が、不意にぎしりと軋むような痛みを立てた。

「じゃあ、詩織さんはどうなるんだ?」誰かが興味本位といった口調で尋ねる。「なんだかんだ、もう長年尽くしてくれたんだろ」

太一は、それを鼻で笑った。

「手切れ金でも渡してやればいいだろ。

そんなに惜しいなら、結婚してから囲っとけばいい」

彼の周りでは、そういった男は珍しくもなかった。家庭を壊すことなく、外にも女を作る。それが彼らにとっては当たり前の感覚だったのだ。

ドアの外で、詩織は感覚がなくなるほど強く拳を握りしめていた。

彼女は、柊也の答えを必死に待っていた。

彼がすぐに反論し、そして皆に宣言してくれることを。愛しているのは詩織で、結婚するのも詩織なのだと。

しかし、いくら待っても聞こえてきたのは、彼の気のない一言だけだった。

「いつからそんなゴシップ好きになったんだ、お前ら」

反論も、否定もしない。

それは、まるで事実だと認めているかのような響きだった。

「はいはい、わかったって。せっかくのめでたい日なんだ、もっと面白い話をしようぜ。退屈で寝ちまいそうだ」

太一がソファから身を起こし、その場の空気を変えようとする。彼は札付きの遊び人で、いつも変わったゲームを提案しては場を盛り上げる役だった。

「各自、今までで一番ヤバかった経験を一つ話すってのはどうだ」

すると、誰かがとんでもないことを口にした。

「カーセックス」

太一が茶化す。

「そんなの、別にヤバくもなんともねえだろ」

相手は付け加えた。

「新幹線で、な」

その一言で、個室全体がどっと沸いた。

「お前、やるな!」

太一は興奮気味に、退屈そうにしている柊也に尋ねた。

「柊也は?なんかヤバい経験あるか」

柊也は数秒考え込んだ後、静かに口を開いた。

「好きな女のために、不倫した」

その一言で、部屋中が先ほど以上に沸き立った。

あの賀来柊也が、だぞ。この江ノ本市でも指折りの名家の跡取りで、どんな女だって手に入るはずの男が。本気で愛していなければ、そんなことまでするはずがない。

太一の反応は、誰よりも激しかった。その甲高い声は、ドアを隔てていても詩織の鼓膜をビリビリと震わせる。

「相手、柏木志帆だろ!やっぱりまだ志帆ちゃんのこと、好きだったんだな!昔、お前は志帆ちゃんが好きで、志帆ちゃんは俺のいとこ、宇田川京介(うだがわ きょうすけ)が好きだった。だから、お前は不倫相手に甘んじたのか! 柊也、お前ってやつは……マジもんの純愛ファイターだな!」

男たちの囃し立てるような笑い声が、頭から浴びせられた冷水のように、詩織の体を芯から凍えさせた。

胃の奥から、何かがせり上がってくる。気持ち悪さに耐えきれず、詩織はその場にゆっくりと蹲った。

太一はまだしつこく食い下がっていた。

「なあ柊也、正直に言えよ。十月十日、お前、志帆ちゃんに会っただろ」

柊也が聞き返す。

「なんで知ってる」

「あいつがあの日、SNSに上げてたんだよ。『再会はこの世で一番ロマンチックなこと』だってさ。絶対あんただと思ったぜ!

で、どうだったんだよ、その夜は。再会を祝して一発、ってとこか?」

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プロローグ これは全部私の所為
 ──立ち入り禁止ほど踏み入りたくなる。開かぬ鍵こそこじ開けてみたい。  そう。だって〝冒険に危険はツキモノ〟から……。 だが今まさに、ネクター・エヴァレットは、その言葉を信じたことを心の底から後悔していた。  天井から崩れ落ちる岩石が、轟音とともに彼女の背後を凄まじい勢いで追いかけてきていたのだ。(立ち止まったら、死ぬ──!) 呼吸は乱れ、心臓は今にも破れそうなほど激しく脈打っていた。必死に走っても、前方に出口の光は見えない。 彼女がこの地底洞窟へやって来たのは、ただの探検目的だった。  祖父の遺した冒険手帳に記された謎──〝五百年の孤独〟とやらを、この目で確かめたくて。 ネクターはちらりと後ろを振り返る。  だがその行為を、すぐに後悔した。 崩れ落ちてくる岩だけではない。  それに引き連れられるように、〝人のような何か〟が迫ってきていたのだ。 人のような何か──。  そう呼ぶのは、人間と断定できない理由があった。  暗闇の中、その存在は赤く光る双眸をぎらつかせていたのだ。その色はまるで、警告ランプのそれのよう。 見たところ、自分とそう変わらない年頃か、或いはやや年下に見える。  十七歳か、それ以下。体格は小柄で、顔にはまだ幼さが残っていた。 ──けれど、それは決して純粋な子どもが持つ無垢な幼さではない。  むしろ、カエルの口に爆竹でも突っ込みそうな──そんな狡猾で残酷な性質を孕んでいそうな稚さだった。  その顔立ちは、整ってはいる。だが三白眼気味の吊り上げった瞳のせいでどうにもこの印象を際立たせていた。 見た目だけなら、どう見てもただの人間だ。ただ、悪人顔というだけで──。 その〝何か〟と、視線がカチリと交差した瞬間、ネクターは慌てて前を向き直した。顔は青ざめ、心は凍りつく。 轟音の中、背後からその存在の掠れた叫び声が追いかけてくる。  何かを必死に訴えているようだが、異国の言葉のせいで、まったく理解できなかった。(──っ! どうして、どうして、こんなことになっちゃったの!) 思えば、全ては自分の所為だ。  ネクターの脳裏には、走馬灯のように、たった十七年の短すぎる人生が浮かび上がっていた。
last update최신 업데이트 : 2025-08-14
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1話 機械仕掛けの夢と、空飛ぶ少女
 五月中旬。青々とした新緑が輝く丘陵地帯では、羊たちがのんびりと牧草を食んでいた。  昼下がりの空は快晴で、雲ひとつない蒼天が頭上に広がっている。    そんな玻璃のように澄み切った空に、黒い点がひとつぽつりと浮かんでいた。雷鳴に似た重低音を響かせながら、その点は南西の空へ向かって猛烈な速度で移動している。 その正体は、空を駆けるバイク──飛行二輪だった。    陽光に鈍く光る黒鉄色の大型車。側車付きのその機体に跨がるのは、枯れ草のような生成り色と焦げ茶色のドレスを着た少女。  彼女はレザー製のパイロットヘルメットをかぶり、二つに結った桃金色の長髪を風になびかせていた。 唇には機嫌の良さを隠しきれない笑みが浮かんでいる。   (──やっとの休暇! 今日は絶対に、良い日になるわ!)    ゴーグルの下、金色に近い琥珀の瞳を爛々と輝かせながら、彼女──ネクター・エヴァレットは、最近ラジオでよく流れている流行歌を、鼻歌まじりに口ずさんだ。 ──十七歳の少女、ネクター・エヴァレットを一言で言い表すなら、〝異端者〟だろう。 金色の瞳に、赤みを帯びた髪──それはまさに、古くから伝わる〝魔女〟の姿そのもの。  しかも、魔女といえば物語の中で空飛ぶ箒に乗るのがお約束だが、彼女の場合は飛行二輪に跨がって空を駆けるのだから、さしずめ〝現代の魔女〟といったところか。 とはいえ、すでにこの国──イフェメラ王国では、貴族制は数十年前に廃止され、蒸気機関の発展により産業が飛躍的に成長している。魔女狩りや異端審問といった時代も、今や数百年も前の話。忘れられて当然の過去となっていた。 ……そんな時代に生まれて、殺されずに済んでよかった。生まれた時代が良かった。  ネクター自身、何度そう思ったことか。だが、彼女が〝異端者〟と呼ばれる理由は、容姿だけにとどまらない。  むしろ、その〝職業〟こそが最大の理由だった。 産業革命の始まりから二百年程が過ぎたとはいえ、女性が職業に就くのはまだまだ珍しい時代。商人や農婦、或いは娼婦などがその例外に挙げられる程度だ。 同じ年頃の乙女といえば、上流階級の娘なら教養を身につけるため学生生活を送りながら縁談を待ち、庶民の娘なら家の手伝いをしながらやはり縁談を待つ──そんな未来が〝当然〟とされていた。家
last update최신 업데이트 : 2025-08-14
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2話 誰にも縛られぬ空の下
 そんなネクターの生家は、イフェメラ王国の西方に位置する大都市スチールギムレットにある。  その地の名門──ブラックバーン家と聞いて、知らぬ者はこの国にはいないだろう。 ブラックバーン社。王国軍を主な取引相手とする飛行船製造の巨大企業だ。  莫大な資本力を持ち、「ブラックバーン社なくしてイフェメラ軍は成り立たない」とまで言われている。 そして、その社の経営を担っているのが、ネクターの母・アナスタシアである。 婿を取って女が家督を継ぐ──代々続く女系家族という点もまた、異端の名を広める一因となっていた。  だが、それは同時に、ネクターの人生に重くのしかかる宿命でもあった。 なにしろ、ブラックバーン家では〝長女が経営者を継ぐ〟のが絶対的な決まり。  ネクターは一人っ子。  つまり、家督を継ぐことは、生まれた瞬間から決まっていたのだ。 将来の夫となる相手は優秀な技術者に限る。  雇う人材もまた、王国屈指の技術者ばかり。  経営を担う女は、まるで女王蜂のようにその頂点に立ち、全てを掌握する──。 けれど、ネクターの関心は経営などではなかった。  幼い頃から、自社工場に入り浸っていた彼女の心を捉えていたのは、むしろ〝技術〟のほうだった。 壊れた時計やラジオをお小遣いで買い取り、分解しては中を観察するのが日課。  歯車、リベット、ゼンマイ、香箱……その全てが精密に噛み合って動く、〝完璧な小さな世界〟にネクターは夢中になった。『私、大人になったら叔母さんみたいな修理技師になりたいの!』 『おじい様みたいに素敵な冒険もしてみたい!』    そう語る幼いネクターに、母は困り顔で笑っていた。だがその想いは年を経ても変わらず、十三、十四になっても言い続けた。 そして十五歳の春、ついに母の堪忍袋の緒が切れた。  家庭教師による教育が一段落し、進学を控えた時期だった。 激しい口論の末、ネクターは与えられた未来を拒絶し、半日かけて汽車に乗り、アッシュダストの叔母の元へと家出したのだ。  ──それも、入学が決まっていた学院の入寮日前日に。 その選択が母を怒らせることは、もちろん分かっていた。  だが、それでもなお、自分の手で夢を叶えたかった。 当然、母は激怒し、ネクターを連れ戻しにアッシュダストまで訪ねてきた。  けれど、ネクターは頑とし
last update최신 업데이트 : 2025-08-14
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3話 地底に灯る星々
 ──ネクターの祖父が遺した冒険記録には魅力溢れる言葉が沢山散りばめられていた。『風の祭壇』に『海神の祝福』、それから『魔獣の舌』なんていうユニークなものも。そのようなロマンに満ちた言葉で、十ほどの遺跡が記されていた。    中、ネクターが子どもの頃から引きつけられた言葉は『五百年の孤独』だった。 どんな場所で、どんな光景が待っているのだろうか。  幾度となく想像を巡らせてきた。  かつての王族や貴族が遺した財宝か、或いは古代の人々が残した儚い壁画か。はたまた岩の隙間に眠る巨大な金剛石の原石か── 飛行二輪から降り立ったネクターは、今一度、古びた冒険手帳を取り出して確認した。 地底遺跡──その名の通り、深い洞窟であることは想像に難くない。  ただ、祖父の手記によれば、縦穴ではなく、比較的なだらかで、狭すぎもしない洞窟らしい。中腹には蒼く澄んだ地底湖があり、それはそれは美しいのだと、余談のように記されていた。 だからこそ、ネクターは登山用の厳重な装備ではなく、仕事用の地味なドレスで訪れることにした。それでも念のため、飛行二輪の側車からロープを取り出しリュックサックへ詰め込むと、ガス式カンテラを手に取った。「さて、行きましょ……」    独りごちるが、すぐに身震いが起きた。  ──やっとだ。やっとこの日が来たのだ。   幾度も夢に見た場所へ、自分の足で辿り着いた。その喜びに、思わず声を漏らす。  一頻り喜びに唸った後、ネクターは〝落石注意・立ち入り禁止〟の札の下がったロープを跨いで洞窟に向かって歩み始めた。 *** 洞窟に潜ってしばらく経った頃、彼女は地底湖の近くまで辿り着いていた。  だが──あれほど心を躍らせていたネクターだったが、この遺跡の正体に気付いたのは、意外と早い段階だった。 そう。ここはどうやら、戦争遺跡、或いは軍事遺跡だったのだ。 あちこちに錆びついた甲冑や短剣が転がっており、澄んだ地底湖の底を覗き込めば、黄ばんだ人骨らしき影がちらほらと沈んでいる。 正直、気味が悪い。──だが、この程度の雰囲気には慣れていた。探索者として数々の遺跡を踏破してきたネクターにとって、そう珍しいことではない。 とはいえ「五百年の孤独」と銘打たれた戦争遺跡となると──  どうにも胸騒ぎがする。   (綺麗な軍服
last update최신 업데이트 : 2025-08-14
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4話 覚醒とともに、地は裂ける
 ──解錠を試みて、どれほどの時間が過ぎたのだろうか。  地底にはもちろん太陽の光など届かず、時刻の見当もつかない。けれど、腹の減り具合から察するに、とっくに宵の帳は落ちて、夜も更けている頃合いだろうと想像できた。 何百通りもの数字の羅列を書き出した指の感覚は、もはやおかしくなっていた。真新しかった筈のノートは、最初のページから最後の一枚まで、夥しい数字でぎっしりと埋め尽くされている。「……多分、いけるでしょう」 ネクターは聴診器を外し、ノートを片手に三つのダイヤルへと向き直る。  カチリ、カチリ……カチリ。  全てが噛み合った小気味よい音とともに、蓋がわずかに浮いた。  見事、解錠成功。思わず小躍りしたくなったが、浮かれそうになる気持ちを抑え、ネクターはひとつ深く息を吐いた。 やっとの対面だ。──だが、期待外れだったら? 不穏な何かが眠っていたら?  頭をよぎる不安を押し殺して、ネクターは意を固める。蓋に手をかけ、ゆっくりと持ち上げた。 錆びた金属の蓋はずっしりと重かったが、ある角度まで持ち上げると、勝手に開いた。  その瞬間は中を見ずにいたが──いよいよだ。どうか、白骨死体だけは勘弁してほしい。  生唾を飲み込み、ネクターは緊張した面持ちで箱の中を覗き込む。 だが──それを目にした途端、言葉も悲鳴も出なかった。 白骨死体ではなかった。だが、それが遺体でないとも言い切れない。  そこに横たわっていたのは、少年とも青年とも判別がつかない、小柄な体格の男性だった。 身に纏っているのは、古風なデザインのリネンシャツに、炭のように黒い下衣。枯れ葉色の編み上げ長靴を履いている。  背丈は、ネクターよりわずかに高いくらい。十七歳の彼女と同年代か、もしかしたら少し年下にも見える容姿だった。 ──だが、遺体にしてはあまりにも綺麗すぎる。  服も傷んでおらず、肌の色艶もよい。まるで、今この瞬間まで生きていたかのようで──  ネクターは思わずしゃがみ込み、じっと彼を見つめた。 雪のように白く、さらさらとした白金髪。  透き通るようなきめ細やかな肌。貝殻のように伏せられた瞼には、長く濃い睫毛。──そこには、儚くも美しい存在感があった。 ネクターは、衝動に突き動かされるようにグローブを外し、そっとその頬に触れてみる。  そして──目を丸く
last update최신 업데이트 : 2025-08-16
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5話 人造悪魔と崩れる窟
 息は絶え絶え限界を迎えていた。膝はガクガクと笑い、進む事を拒もうとする。   よろめいたネクターは奥歯を噛みしめた瞬間──背後から、何かに強く抱きすくめられた。  否、抱擁というにはあまりにも力強い。それはまるで、羽交い締め。  だが悲鳴を上げる気力も残っておらず、ネクターは強張った表情のまま、恐る恐る後ろを振り返った。   「離して!」    もはや懇願に等しい言葉しか出てこない。  すると彼は、腕の力を更に強めながら、乾いた唇をゆっくりと開いた。    「悪い。焦りすぎてて、すっかり忘れてたわ。そういえば、そうだっな……」    彼の発した言語は、ネクターでも分かる言語。この国の言語──イフェメラ語だった。   怯えながらも、ネクターは彼の顔を凝視する。    「多分、出口まで間に合わねぇと思う。圧死確定。良くても生き埋め。おい。どうすっか?」    まるで冗談のように軽い言いぶり。  怒っているわけではない……少なくとも、そう見えた。 だが、どうするも何も、答えはひとつしかない。   「──離してよ! 逃げなきゃ!」 掠れた金切り声で叫ぶと、彼は困ったように首を横に振った。   「話は通じるだろ? 出口見えねぇ。おまえの足じゃどう足掻いても脱出できねぇって言いてぇんだけど」 「お願いだから……!」    今にも泣きそうになってネクターが懇願した刹那。彼はぽつりと「お願い」と復唱し、まるで品定めするように目を細めた。 そして──  「なぁ。おまえに忠誠を尽くす誓いを立てて良いか? 契約してくれね?」 まるで天気の話でもするような、けろりとした調子で告げた。 忠誠? いったい、何を言っているのか。  今もなお崩落の轟音は近付き、土埃は息苦しいほどに満ちていた。  このままでは死んでしまう。恐怖に脳が支配され、ネクターは言葉を失った。 そんなネクターの顔を見て、彼ははぁとひとつため息をつき──   「却下。やっぱ、さっきのナシ。時間もねぇ、勝手にボクが契約させる!」    そう告げた途端だった。  背後から頤を持ち上げられた。上を向かされ、彼は目を瞑り顔を近付ける。白い睫毛が間近で震えている。そう思ったも束の間。  彼はネクターに噛みつくような口付けを与えた。    その口付けはほ
last update최신 업데이트 : 2025-08-18
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6話 眠れる悪魔の忠誠の誓い
 臆しながらネクターが彼を見つめた、その矢先の事だった。一拍も置かぬ間に、頭上から大きな岩が落ちてきた──かと思ったが、彼の脚と尾が目にも留まらぬ速さでそれを粉砕する。 だが、尚も天井からはガラガラと崩落の音が響き続ける。今にも、自分たちの頭上にある岩塊が落ちて潰されてもおかしくはない。「恩返しだ、守ってやんよ!」 渇いた叫びとともに、彼は天井へと右手を突き上げた。 その瞬間──キンと耳を刺すような高い音が鳴り、ネクターは反射的に瞼を伏せる。 途端に訪れるのは静寂で……地面から感じていた振動はピタリと収まった。    ネクターは恐る恐る、瞼を持ち上げて頭上を見るが、その瞳はすぐに丸く見開かれた。  天井から落下しかけた岩石は、空間に浮いたまま留まっているのだから   (時を止めた? 重力を操っている……?)    あまりにも現実離れした現象だった。ネクターは戦慄しながらも、彼の方を振り返る。彼は牙のような歯を覗かせ、まるで悪戯っ子のように笑った。「ほら、ボサッとしてねーで歩けよ?」 促されるように背を押され、ネクターはその支えを借りて、ゆっくりと歩み始めた。 どれほど歩いたか。やがて前方に、ぽっかりと空洞が見えた。 出口だ──そう分かると、ネクターは余力を振り絞って駆け出した。そして地上へ辿り着くと、そこには澄んだ紺碧の空が広がっていた。    眼球が光った時点で殺されるのかと思っていた。だが、まさか──助けられるなんて。  一応、礼は言うべきだろう。 背を支える彼を振り返った、その矢先だった。   「あーやば。ダルっ……助かったな。良かった」    そんな曖昧な声がすぐ近くで聞こえたかと思うと──彼はネクターの背から離れ、そのまま草の上に崩れ落ちた。 まるで魔法が解けたかのように。 その身体を覆っていた人工的な強靱な腕と、蠍を思わせる尾は、たちまち光の粒子となって弾けるように消え失せた。   「ちょ、ちょっと!」    慌て
last update최신 업데이트 : 2025-08-20
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7話 赤錆の街、眠る少年
 ──工業地帯アッシュダストに辿り着いたのは、夜明けが近付く頃だった。 空はまだ白み始めていなかったが、紺碧の闇は徐々に色を薄めてゆき、鉄屑と赤錆を混ぜ込んだような街の輪郭が、ぼんやりと浮かび上がっていた。  ネクターは、飛行二輪のエンジンを切り、川沿いの土手に着地すると、前のめりに車体を押しながら帰路についた。 居候先である叔母・ドリスの工房──ロウェル・ブルームまでは、ここから少しばかりの距離だ。 入り組んだ路地を進み、工房の裏手に辿り着くと、ネクターは丸めて積んでいた毛布を取り出すと、彼を隠すように巻きつけ、側車から引き摺り下ろした。 この時間、叔母はまだ眠っている。労働者の朝は早いとはいえ、夜が明けきる前から活動を始めるような人ではなかった。 ネクターは静かに裏口を開け、彼を引き摺るようにして工房の中へと忍び込んだ。  自室兼作業場は、裏口を入ってすぐの階段を上がった先にある。ネクターは毛布ごと抱え直し、腰を折り曲げながら、一段一段を慎重に登っていく。 カタン、カタン── 彼の編み上げ長靴が階段に触れる音が、静まり返った工房にやけに大きく響いた。 叔母に見つかるわけにはいかない。 やましさがあるのは否定できないし、何より得体の知れぬ彼を連れ帰ったことは、厄介事の火種にもなりかねなかった。 階段を登りきったところで、ネクターは一度足を止めてひと息ついた。 彼を毛布越しにぎゅっと抱きしめたその瞬間、ふと気付く。あの時──悪魔のような鋼鉄の姿を見せたにも関わらず、彼は驚くほど軽く、抱き心地は人と変わらぬ柔らかさだった。 何の気なしに、ネクターはその感触を確かめるように、もう一度ぎゅうっと抱きしめたが、次の瞬間、はっと我に返る。 そういえばこの毛布の中身は、男の形をしていたのだ──と。 それも、唐突な口付けをしてきた相手である。 思い返しただけで、頬が一気に熱を持ち、ネクターは勢いよく首を横に振った。(な……なにしてるの、私!) その時、階下から玄関
last update최신 업데이트 : 2025-08-22
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8話 海の向こうの〝バケモノ〟
 ※ ──貴方は、何者なの……? 遠くから囁くような声が響いた。それは、またしても、あの少女の声だった。  次の瞬間、背中がじわじわと焼けるように痛み出し、彼はゆっくりと寝返りを打つ。 さっき目覚めた時も同じだった。決して我慢できない痛みではないが、皮膚の奥をじくじくと炙るような、不快な痛みだった。  痛みに意識が囚われる前に、彼は気を紛らわせようと、最後の記憶を辿る。 ──あの少女は、〝誰か〟によく似た声をしていた。澄んだ、透き通るような高い声。 だが、記憶の中にある〝その声〟は、もっと尖っていて落ち着きもなかった。第一、言葉も違う。あの少女は、自分が本来使っていたものと違う言語を語っていた。それだけでも、彼女が自分の思う〝誰か〟とは明らかな別人と、はっきり分かった。 ──それでも、どこか似ている気がしてしまう。 そんなことを思いながら、ふと鼻先をくすぐる甘い匂いに気付いた。花の蜜のような、どこか懐かしい香りだった。  その香りに誘われるように、彼はゆっくりと瞼を持ち上げる。 視界に入ったのは、やはりあの少女だった。桃金髪がふわりと揺れ、蜂蜜のような金色の瞳が彼を覗き込んでいる。だが、はっきりと目が合った瞬間、彼女の表情が強張った。 怯えるのも無理はないだろう。  目覚めの直後、彼は「忠誠を尽くす」と口にして、少女の返事を待たずに唇を奪ったのだ。  ──助けたかった、という思いがあったにせよ、やり方はあまりに強引だった。 口付けが〝永遠の誓い〟を意味するもので、特別なものという認識は、自分でもはっきりと理解していた。 だからこそ、一言でも謝っておこうと口を開きかけた、その時だった。「ねぇ……お願いなの。大人しくしてて? 貴方のこと、誰かに知られたら……きっと、まずいの」 彼女は懇願するように言う。  やはり、その声は感情が滲むと、やはり遠い記憶の〝誰か〟に似ているように思える。けれど──それが〝誰か〟は、どうしても思い出せない。  いくら思い巡らせても、それより前の記憶がごっそり抜け落ちているのだった。 自嘲気味にため息を吐きながら、彼は静かに頷いた。  すると彼女は、琥珀色の瞳を驚いたように見開く。「安心しろよ。今はろくに動けやしねぇ。忠誠を尽くすって言ったろ? 男に二言はねぇよ。……あの重力操作は無理があった。範囲
last update최신 업데이트 : 2025-08-23
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9話 聞き分けの良い古代兵器
 ※ 叔母のドリスが、二階にあるネクターの部屋へ来ることは滅多にない。 腰を痛めてからというもの、階段の上り下りは億劫になっていたし、何よりの理由は、ネクターの部屋が〝足の踏み場もないほど散らかっている〟からだった。  聡明で真面目。一見、非の打ち所がないようなネクターだが、致命的な欠陥がひとつある。 ──片付けが極端に苦手だった。  部屋のあちらこちらには、冒険で拾ってきたガラクタや骨董品、修理待ちの品々、そして脱ぎ捨てられた衣類などが所狭しと積み上がり、ベッドやソファ以外にまともな空間はほとんど残されていない。 何度となく叔母から「片付けなさい」と注意されてきたが、それだけはどうにも直らなかった。 ネクター本人に言わせれば、もはやそれは〝習性〟だろう。 整頓されすぎた状態では、かえって物のありかが分からなくなってしまい、使い勝手が悪い。 呆れたドリスは、いつしか何も言わなくなっていた。  だが、そんな散らかった部屋でも唯一整理の行き届いた綺麗な場所がある。 部屋の窓辺にある作業机だ。  そこだけは、ネクターの手で常に整理が行き届いていた。仕事道具である工具やパーツ類は、木箱や引き出しに丁寧にしまわれ、いつでも作業に取りかかれるよう整然と整っている。  その机の前に腰掛けて、ネクターは今、黙々と修理品と向き合っていた。  ──地底探索から早くも二日が経過した。 今ではすっかりと女職人としての日常に戻りつつある。  休暇中に溜まった依頼品は、時計修理が二点。それから、ラジオにミシン。 古代兵器と思しき彼は、ネクターの背後にぴったりと寄り添うように座って作業風景を眺めている。 彼は、目覚めた時に見せた禍々しさからは想像できないほど、穏やかで物分かりの良い性格をしていた。 やんちゃそうな悪人顔ではあるが、その言動はいたって常識的で、素直だった。 「見つかるとまずいから、静かにしてて」――その一言にも、すんなりと頷いてくれた。
last update최신 업데이트 : 2025-08-25
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