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第2話

Author: 青水
これまで、婿養子としてやっていくために、俺は神楽坂グループで身を粉にして働いてきた。

そして夜に帰宅すれば、気難しい義理の両親に尽くす毎日だ。

30を過ぎたばかりだというのに、もう白髪が目立ち始めた。

確かに、もう若くないのだ。

俺は背を向け、自室に戻って荷物をまとめることにした。

金を手に入れたら、どこでバカンスを楽しもうか、そんなことばかり考えていた。

後ろから舞夜がついてきているのには、気づかなかった。

「こんな遅い時間に、急いで出ていく必要はないでしょ。明日にしたら?

西区の別荘は空いているわ。そこに住めばいいよ。気が向いたら会いに行くから。

涼介、私を愛しているのは分かってる。意地を張らないで」

舞夜はそう言い、そっと自分の平らなお腹に手を添えた。

「でも、この子のことだけは我慢して。生まれてくるこの子を、最初から隠し子にしたくないの」

俺は何も答えなかった。

ただ荷物を持ち上げ、舞夜を振り返ることなく玄関へと歩き出した。

「君と話すことはもうない。離婚できて清々したよ。

本当に少しでも人の心があるなら、はやくお金を振り込んでくれ」

夜風に乗った雪が容赦なく肌を打つ。だが、胸の奥で燃え盛る怒りが鎮まることはなかった。

……

舞夜の仕事は、相変わらず速かった。

朝起きると、銀行口座には既に600億が振り込まれていた。

俺はその足で、海鳴市でも一番の会員制のメンズサロンを予約した。

メンズサロンでの全身スパ、フルコースの予約だ。

鏡の中には、やつれ切った白髪混じりの男の姿はなかった。

代わりに映るのは、派手な赤髪をした、鋭い目つきの青年だった。

着替え終えてすぐに、親友の吉川駿(よしかわ しゅん)から電話が入った。

彼はいきなり怒鳴るように言った。

「涼介!舞夜さんと何があったんだ?頭がおかしい、何もかもめちゃくちゃだぞ!」

俺は受話器を耳から遠ざけ、気だるげに聞いた。「どうした?」

「『どうした』じゃないだろ?ニュースを見てないのか!」

駿の声は、驚きで震えていた。

「トップニュースは、舞夜さんが例の若い男を連れてパーティーに出席したときの写真だぞ!

舞夜さん、記者たちの前でその男を夫だと言ったんだ!すぐ結婚式を挙げるともな!

お前のことを馬鹿にしていた彼女の両親も隣にいて、その男を褒めていたんだ!」

駿の声が少しずつ低くなり、慎重に言葉を選んだ。

「涼介、大丈夫か?」

俺は長年ずっと、舞夜に俺との関係を世間に公表してほしかった。

そのチャンスを、舞夜は出会って間もない男に捧げた。

「大丈夫だ」

俺は自分の新しい姿を楽しみながら、淡々と答えた。

「俺たちは、もう他人だからな」

「た……他人?」

駿の声色は信じられないという様子だった。彼は俺が舞夜に捧げた十数年を知っているからだ。

俺がこの結婚生活のためにどれほど彼女の態度を我慢し、尽くしたのかをと。

これ以上弁解せず、俺はふっと笑った。

「今夜は空いてるか?飲みに行こう、こっちのおごりで」

海鳴市で一番豪華なバーのボックス席には、高級シャンパンが並べられた。

店の女性たちが俺を取り囲み、グラスを満たしてくれた。

駿は目を丸くした。「まじかよ。これでやっと信じられる、お前、吹っ切れたんだな。昔じゃ考えられねぇな」

以前の俺は、舞夜との婚姻は金目当てじゃないということを示すために、お金を節約することばかり考えていた。

舞夜に見栄っ張りだとか、金遣いが荒いと思われることが何よりプライドに障ったからだ。

しかし今の俺は、豪華な個室でガラスに映る自分の姿を見つめていた。

派手な赤髪に、仕立ての良い高級スーツを着こなす自分を。

駿がグラスを上げ、俺と乾杯した。

「なんだか、A大学にいた時のお前を見てる気分だぜ。伝説の天才だった頃の涼介だよ」

駿は酒を一気に煽ると、憤りを含ませて言った。

「あの頃、どれだけの会社がお前を奪い合ってたことか。それにもしお前が自分で会社を立ち上げていれば、とっくに神楽坂グループなんて追い抜いてたんだぞ!

十数年もあの女に尽くしてきた結果が、たったこれだけの形でおしまいか。

お前が気の毒でならないよ」

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