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第696話

Penulis: 花朔
授賞式のバックステージ。

鏡に映るのは、シルバーのマーメイドドレスをまとい、完璧に仕上げられたメイクの自分。けれど指先は、氷のように冷えきっていた。

紗夜は海羽の冷たい手を握り、自分の体温で温めようとする。

「大丈夫」

その声はとても柔らかい。それでも、人の心を落ち着かせるだけの力があった。

「海羽なら、きっとできるよ」

「賞のことじゃないの」

海羽は首を振る。

鏡の中の自分を見つめるその瞳は、いつもは鋭く人を射抜くのに、今は不安で満ちている。

「ノミネートされた時点で、もう十分評価はもらってる。受賞できるかどうかは、正直どうでもいいの」

一瞬、言葉を区切る。

「ただ......壇上で、彼に公にお礼を言う機会がなかったらって、それが怖いの」

一輝は、客席最前列に座っている。

舞台にいちばん近く、そして彼女にいちばん近い場所に。

彼は彼女のためにすべての重要な会議を断り、わざわざ爛上から飛んできた。

今夜の、彼女の輝かしい瞬間を見届けるために。

彼を失望させたくない。

そして何より......自分に後悔を残したくなかった。

「きっとチャンスはある」

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    授賞式のバックステージ。鏡に映るのは、シルバーのマーメイドドレスをまとい、完璧に仕上げられたメイクの自分。けれど指先は、氷のように冷えきっていた。紗夜は海羽の冷たい手を握り、自分の体温で温めようとする。「大丈夫」その声はとても柔らかい。それでも、人の心を落ち着かせるだけの力があった。「海羽なら、きっとできるよ」「賞のことじゃないの」海羽は首を振る。鏡の中の自分を見つめるその瞳は、いつもは鋭く人を射抜くのに、今は不安で満ちている。「ノミネートされた時点で、もう十分評価はもらってる。受賞できるかどうかは、正直どうでもいいの」一瞬、言葉を区切る。「ただ......壇上で、彼に公にお礼を言う機会がなかったらって、それが怖いの」一輝は、客席最前列に座っている。舞台にいちばん近く、そして彼女にいちばん近い場所に。彼は彼女のためにすべての重要な会議を断り、わざわざ爛上から飛んできた。今夜の、彼女の輝かしい瞬間を見届けるために。彼を失望させたくない。そして何より......自分に後悔を残したくなかった。「きっとチャンスはある」紗夜は彼女の手を強く握る。声は揺るぎない。「みんな、海羽を応援してるから」......「本年度最優秀主演女優賞の受賞者は――」プレゼンターがわざと声を引き延ばし、会場中の心を喉元まで吊り上げる。バックステージのモニター前で、紗夜と海羽のチームも息を詰めた。「――『スパイ・ローズ』!白鳥ミウさんでございます!」その名が読み上げられた瞬間、会場は雷鳴のような拍手に包まれた。歓喜に、海羽の頭は真っ白になる。数秒間、立ち尽くしたまま動けなかったが、紗夜の興奮した抱擁に包まれて、ようやく意識を取り戻す。ゆっくりと立ち上がると、スポットライトが一斉に彼女を照らした。その瞬間、彼女は眩い光を放っていた。まるで雲を突き抜け、夜空にきらめきながら姿を現した星のように。裾を持ち上げ、一歩ずつ――栄光へと続く階段を上る。前年度の最優秀主演男優から、重みのあるトロフィーを受け取る。それはK国映画界最高の栄誉を象徴するもの。こみ上げる感情に、目が自然と赤くなる。マイクの前に立ち、彼女は客席を見渡した。自分のために瞬く星の海。そして最

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