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第17話

Author: 雲間探
茜は少し嬉しくなって、好きな料理を一気に話し始めた。

智昭はそばで黙って聞いていた。

茜が話し終えると、優里は茜の服を褒め始めた。「茜ちゃんの服、すごく可愛いわ。とても似合ってるわね」

「本当?」

優里は笑顔で答えた。「もちろん本当よ」

そして尋ねた。「茜ちゃん、今日は学校楽しかった?みんなと仲良くできた?」

二人は楽しそうに会話を続け、智昭はほとんど口を挟まず、ただナイフとフォークで優雅に食事を続けていた。

事情を知らないウェイターたちは、三人を見て家族だと思い、優里に羨ましそうな視線を送っていた。

その時、茜は玲奈からのビデオ通話を受けた。

この電話は、朝に茜が頼んでいたものだった。

でも今は優里との会話が楽しくて、電話を切りたくなかった。

今朝、玲奈が他の子を抱きしめているのを見て、確かに不機嫌になった。

でも今日の授業で先生が言っていた。パパとママは自分の子供を一番愛していて、子供はどのママの心の中でも、かけがえのない存在で、他の子供に取って代わられることは決してないのだと。

それを聞いて安心できた。

玲奈は茜が電話に出ないので心配になり、担任の先生に電話をかけた。

担任は休憩室にいて、玲奈の電話の理由を聞くと、笑って答えた。「茜ちゃんは大丈夫ですよ。お父様と、確かおばさまとビデオ通話をしているところです……では、茜ちゃんに伝えて……」

「いいえ、結構です」

玲奈はここまで聞いて、茜が優里と智昭とビデオ通話をしているのが分かった。

つまり、智昭は今、優里と食事をしているということだろう。

彼女は優しく言った。「大丈夫です。そのままにしておいてください。邪魔したくありませんから」

電話を切ると、玲奈は茜にメッセージを送った。学校での様子や、新しい友達ができたか、お昼ご飯は何を食べたかを尋ね、時間になったら先生の言うことを聞いて、ちゃんとお昼寝をするように言い添えた。

十数分後、やっと茜から音声メッセージが届いた。

「分かってるよママ、ちゃんと寝るから」

午後になって、理香と一日接してみると、玲奈は彼女が明るい性格で、社交的で、仕事もできる人だと分かった。

夜の六時過ぎ、玲奈が帰ろうとしていると、理香が今日の指導のお礼に夕食に誘ってきた。

「これは私の仕事ですから、理香さん、そんなに気を遣わなくても」

理香がま
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Comments (5)
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中久喜京子
私も同じ気持ちなります。
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村上あずさ
読み進んでいくうちにちょっと気分が沈んでしまう暗さかもしれない。
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にゃんくっち
なんか…うだうだと疲れる話しデスな… でも展開が気になる
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