運命のような恋だった

運命のような恋だった

last updateÚltima actualización : 2025-08-27
Por:  桃口 優Completado
Idioma: Japanese
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 安藤 茉白は、小学生の頃に佐々木 シオンに恋をする。  でも、思いを伝えることはできなかった。  伝えられなかったことが、今後の彼女の人生に大きな影響をもたらすことになり⋯⋯。

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Capítulo 1

一章 「想いのはじまり」

"If you think you can do it, put yourself out there and make more money. I'm the homemaker. If it weren't for me, can you even single-handedly support this big family?"

Adeline Simpson, who had just returned home, overheard a shrill voice coming from her house. Her brows furrowed, and she stopped at the doorway. She could feel the tension in her house even before stepping in.

Hearing that the sound of footsteps stopped abruptly, a toadying middle-aged man's voice rose, "Helen, Adeline will be back soon. Lower your voice!"

"So? You have the guts to do it but not the backbone to admit it? Ronald, if it weren't for your misjudgment, the company wouldn't have lost three million dollars. You should think about how you are going to make up for this loss!"

"Helen..."

"Dad!" Adeline called out. She waited until the voices in the house stopped before she walked in. She saw her father, Ronald Simpson, sitting on the couch with a frown on his face.

"Adeline, you're home!" Ronald raised his head to look at her. He smiled bitterly and asked, "Did you hear everything Helen said earlier?"

"Well, is the company in a pickle now? Judging from Aunt Helen's tone, it doesn't sound good!"

Adeline said as her eyebrows knitted in worry.

Although the family wasn't doing badly, the company's operations for the past few years had been getting worse. Ronald was often rebuked by Helen Quartley, Adeline's stepmother, because of it.

Ronald was the breadwinner in the family. After being scolded so many times, he must have felt uneasy. However, he dared not speak up with Adeline there.

Smiling, Ronald changed the topic and asked, "Have you had your dinner, Adeline? Why don't I ask Rosa to warm some food up for you? Since you're usually at school and don't come back that often, this time you can stay longer, right?"

"Dad, don't you remember? It's Independence Day tomorrow. We will have a three-day-long holiday," Adeline nudged.

"Is that so? My memory has been failing me these days. I've completely forgotten!" Ronald stood up and looked at Adeline, who was almost as tall as him. The smile on his face widened.

"Dad, if there's anything wrong with the company, you must let me know. I'll find a way to help you!"

Helen, who had returned to the living room, overheard Adeline's words and immediately said, "Find a way? What do you think you can do?"

Turning her head in Helen's direction, Adeline curled the corners of her lips a little. She softly replied, "Aunt Helen, I'm only trying to help Dad."

"Help dad? Or do you just want to take over the company?" said someone lazily. A young girl in a pink princess dress came down the stairs. She scoffed as she eyed Adeline.

"Zoey, don't talk to your sister like that!" Ronald looked at his younger daughter, Zoey Simpson, and gently chided her.

Helen sat on the sofa and mocked, "I think Zoey is right. Maybe Adeline feels threatened now that Zoey is grown up. That's why she's trying to infiltrate the company now to help so that she can take over the company."

"Aunt Helen, you worry too much! I'm a performing arts student. I won't be taking over the company."

"Am I?" Helen snorted. "Who knows? Maybe one day you'll really take over the company!"

"Helen!"

Ronald's face darkened as he looked at how Helen and Zoey were ridiculing and mocking Adeline.

Helen stood up and said to Zoey, "Let's go, Zoey. We're not as adept as them!"

As she walked by Adeline, Helen suddenly stopped in her tracks. And she sneered, "I heard that the Lockwood family is looking for a July-born girl old enough to get married. You fit the bill, right?"

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一章 「想いのはじまり」
 始まりとは、いつも些細なことだ。 佐々木 シオンくんを気になるようになったのは、小学校五年生の時だ。 彼は私と同級生だ。 今でもその日のことは鮮明に覚えている。 その日は新学期が始まる日で、体育館で校長先生が全校生徒に向けて話をしていた。 私は背の順で一番前だから、校長先生の話を聞かず後ろの子とお話をすることができず残念に思っていた。 お話を聞かなきゃダメなこともわかっているし、お話を聞くのが嫌というわけでない。ただつい誰かとわいわいお話をしたくなる。 そんなことを思いながら、自分のクラスの隣りの男子をちらっと見た。  空の色に似た目の彼は、校長先生の方をまっすぐ向きじっと話を聞いていた。 彼は私の視線に気づいたのか、私の方を見た。 その瞬間時間が、そして世界が止まった。 今見えるものは彼だけになる。 視線がゆっくり重なり合っていった。 そして、私の心は大きく揺れたのだった。  それから彼と特別親しくなる出来事もなく、私から声をかける勇気も出ないまま、私たちは中学生になった。 中学は学区制だから、私と彼は自動的に同じ中学校に進学した。 この頃の私は、彼のことを知りたいという気持ちがどんどん湧き上がってきていた。 彼は勉強することが好きということを、最近友だちから聞いた。 友だち伝いで得られる情報は決して多いとは言えないけど、私が行動できていないから仕方ないと思っている。 でも、〝行動〟って何をどうすればいいのだろう? 恋って何をすればいいの? 胸のゆらぎに戸惑いなから、また彼のことを考えていた。 勉強ができる人はいるけど、勉強自体を好きな人はなかなかいないと思う。 そう思える彼を尊敬する気持ちが、心の中で大きく膨らんでいった。 同じ年の子を尊敬するなんて今までになかった。 中学校一年の今も彼と同じクラスだ。今思えば、彼のことが気になり始めた小学校五年の時だけでなく、六年生の時も同じクラスだった。 クラス替えがあるのに、彼とは別のクラスになったことが今までない。 ただの偶然なんだろうけど、そのことを思い出すとなんだか嬉しい気持ちになる。 前向きな感情は、時に自分の背中を優しく押してくれる時がある。 担任の先生が教室に入ってきて、朝のホームルームの時間が始まった。 ホームルームの時間は、堅苦しすぎて私はあ
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二章 「突然の別れ」
 放課後一緒に作業をするようになり、私たちの関係は少しずつ変わっていった。 学校に着くと「おはよう」と毎日挨拶をするようになり、今では休み時間に時々足を止めてお話をするようになった。 仲よくなれたことは、素直に嬉しかった。 少し前まで声をかけることでさえめちゃくちゃハードルが高いように思っていたけど、きっかけとはどこに落ちているか本当にわからないものだ。 でも、彼への思いがさらにふくらんでいくのと比例して、彼が私とお話をしている時どんなことを感じているのか気になるようになった。 楽しく感じてくれているのか、それともの他の感情なのか。  私といて楽しく感じてくれていたら嬉しいけど、それは相手の感情だから私にはどうすることもできない。 そうだとわかっていても、彼には楽しい気持ちでいてほしかった。 私にできることは、もっと楽しめるように様々なお話をするぐらいだろう。 でも、それも何がいいかわからないから、余計に悩んでしまう。彼の好きなことをもっと聞いておけばよかったと少し後悔が押し寄せてきた。 仲が良くなることはいいことしかないけど、〝異性の友だち〟という枠には入りたくないなと私は強く思っている。 異性の友だちという関係性を完全には否定しないけど、私には今までそんな人がいないからどんな存在か想像ができない。 そして、私はただ仲良くなれればいいわけでない。 私は彼のことが好きで、この思いを叶えたいのだから。 一方で、誰かに好かれるほどの魅力が自分にあるようにはあまり思えなかった。 私は、自分に自信がないから。 好かれたいと願うけど、たぶん叶わらないだろうとも感じてしまう。 反対の気持ちがいつも心の中にある。 それに私の行動によって二人だけの放課後の時間がぎこちないものには絶対にしたくない。あの時間だけは私にとって希望のようなものだから。 結局、私はどうしていいかわからなくなってしまった。  次の日。 教室で彼の姿を見つけることができなかった。 彼はいつも私より先に教室にいる。きっと時間ぎりぎりの私と違って、余裕をもって学校につくようにしているのだろう。  彼がいないことが寂しいなと感じた。 風邪を引いたのかなとも思ったけど、なんだかその考えはピンとこなかった。 どうしてだろう。心がざわざわする。 先生が教室に入ってきて
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三章 「初めての感情」
 彼のいない毎日は色のない世界だった。 見えるものは、全て白色と黒色だけになった。 他の友だちと話していても、私の心が色づくことはなかった。 他に楽しいと思えることも見つからなくなった。 何をしてもつまらないと感じた。 いや、探す気力がなくなったという方が正しいかもしれない。 彼の代わりはどこにもいないというわかっていたことを、様々な時に思い知らされるから。 私の全ての原動力は彼になっていた。彼を好きという気持ちが、私の気持ちの中でいつの間にか大部分を占めていた。 そんな大事なことを彼がいなくなって初めて気づくなんて、私は本当に遅い。 私にとって初恋だった。そして、いつの間にかこんなにも恋焦がれる思いになっていた。 それなのに、初めて生まれたきらきらした感情を放置してしまった。 彼はもう近くにはいない。直接思いを伝えることができない。 この虚しさはどうしたらいいのだろう。 学校に行きたくないな。 家に帰ってきては、その思いがあふれ涙で枕を濡らした。 一週間とか一ヶ月という期間ではなく、一日の中で彼のいない事実を何度も何度も思い出すから。 今日も胸が痛くて、息がしにくかった。 恋をするって、こんなにも苦しいことだと知らなかった。 子どもだった心の中に、急に大人の感情が入ってきて、正直戸惑っている。 大人ってこんなに大変な感情をいつも抱えているの? 私が今弱っているだけかもと自分を無理に納得させようとするけど、なんだかしっくりこない。 一方で、放課後に彼と二人で作業していたことはまだ終わっていない。 彼と仲良くなったきっかけを嫌な形のもの絶対したくない。それだけは素敵なままにしておきたい。 また、作業を投げ出してしまうことを彼は望んでいない気がする。 彼の代わりのまとめ役として、川田 悠人くんがなったと担任の先生が話していた気がする。 私は頑張ろうと心に気合いを入れた。 次の日、私は学校に着くとすぐに川田 悠人くんに話をしに行った。「校外学習のまとめ役の作業の進み具合を伝えたいんだけど」「おっ、安藤か。わざわざ悪いね」 彼の大きな声が耳に響く。 彼は、男女のどちらからも人気があり、さらには高身長だ。みんなでわいわい騒ぐのが好きそうだと思った。佐々木くんとは明らかに違うタイプの男子だ。 人を比べてはいけないと
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四章 「メッセージともどかしさ」
スマホが通知音を鳴らした。 私はすぐさまスマホを見た。 でも別のアプリの通知で、彼からの返信ではなかった。 なんだと残念に思った。 まるで音に反応するかのように、私はその後同じことを何度も繰り返した。 その間にメッセージが既読になっているかも確認したけど、なかなか既読にはならなかった。 既読にならないと返事は来ないのはわかっているけど、つい期待してしまう。 そんな奇跡は起きないけど、ついロマンチックなことを考えてしまう。 そして、私ってこんなにせっかちだったかなと自分でもこの反応に驚いている。普段の私はどちらかというとせっかちに分類されるけど、ここまでせっかちではないはずだ。 私がメッセージを送ってから二時間が経ったぐらいの頃、彼から返事が返ってきた。「安藤さん、メッセージを送ってきてくれてありがとう。今はまだバタバタしているけど、元気にしてるよ。安藤さんはどう? 元気にしてる??」 私は返事が返ってきたことにホッとした。 そもそも返事が返ってくる保証はなかったから。 彼はそんな人ではないと思うけど、めんどくさいと思われたら、ただスルーされる。 スマホを通したコミュニケーションは相手の気持次第ですぐに壊れる。 しかし、短いメッセージの中に彼の優しさを感じた。 きっと自分のことでいっぱいいっぱいだろうに、私のことまで心配してくれている。 何気ない言葉かもしれない。 でも、彼がここにいるとすごく嬉しくなった。 私はすぐに返事を返した。「こっちこそ返事くれてありがとうね。佐々木くんが、元気にしていてよかった。心配だったからさ。私は変わらず元気にしてるよ」 私はそう返事を返した後、こんな風な言葉でよかったのかなとわからなくなった。 言葉を文字化すると、急に温度がなくなるように私は感じている。 冷たい感じなどになっていないだろうかとか読んでどこかの文で嫌な気持ちにならないだろうかと様々なことが心配になってきた。 しかも、送った後に思ってしまったからどうしようもできない。 私は、いつも思ったらまっすぐで、大抵の場合考える前に行動してしまう。 彼からの返事は一時間ぐらいだった。 たった二通やりとりをしただけで、すぐに反応がないメッセージというものにもどかしさを私は感じてしまった。 仕方のないことだと頭では理解して
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五章 「校外学習と」
 学校では、クラスのまとめ役の資料作りが終わり、もうすぐ校外学習の日となる。 私は彼と始めたことを最後までしっかりやり遂げたいと気合いが入っていた。 川田くんにも「最近やる気がめっちや入っているじゃん」とちゃかされるぐらいだった。 最初、川田くんはサッカー部にも入っていて明るくて爽やかでタイプが違うかなと思っていた。 でも一緒に作業をしていると、思ったより普通にしゃべれている自分がいた。 それに川田くんは、小さな変化に気づいてくれて気が利くところもある。 タイプが違うと決めつけ、最初から関わらないのはよくないなとわかった。 校外学習の日、私は資料を片手にクラスの人たちに説明をしたり、点呼をとったりした。 全てのクラスメートが私の説明を真剣に聞いてくれていたわけではないけど、中には立ち止まってじっくり見ている人もいた。 興味が持てない人もいるのも当たり前のことと思っているから、私としてはとても満足のいく出来となったのだった。 「終わったー」「お疲れ」 私と川田くんはクラスのまとめ役の仕事も終わり、二人で少し休んでいた。「茉白の説明、すごい熱入ってたよね」「やめてよ、恥ずかしい」 ちゃかしながらも、川田くんがほめてくれていることも私にはわかっていた。 川田くんは実はシャイなのかもしれないと今更気づいた。 人と接していても、その人について知らないことは思ったよりもある。 私は彼のことをどれぐらい知っているだろう。「シオンもきっと喜んてくれているよ」 彼のことを考えていた時に川田くんの口から、彼の名前が出てきて胸がドキッと大きく跳ねた。「そうかな?」 私の顔がピンク色に変わっていないか心配になった。 恋している顔を他人に見られるのは恥ずかしい。「大丈夫! 茉白は、資料作りも説明も完璧だったから」「それは、川田くんも一緒にしてくれたからだよ」 私はほめられまくってさすがに照れてきたので笑った。  川田くんも一緒に笑ってくれた。 その後少し沈黙が訪れ、川田くんが「茉白」と私の名をゆっくりと呼んだ。 川田くんの整った顔が少し赤く染まっているように見える。「シオンのことをまだ思っていてもいい。茉白、俺と付き合ってくれないか? 俺が茉白をもっと笑顔にしたい」 川田くんはそう言いながら自分の短い黒髪を触った。 突然の告
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六章 「避けられない運命」
 時間とは何もできなくてもちゃんと進むもので、あの日から十年が経った。 私は時間とは恐ろしいと感じている。 後悔しても時間は返ってこないけど、彼のことに関しては悔やまれることばかりだ。 どうしてもっと踏み込めなかったのだろう。どうして気持ちを伝えられなかったんだろう。なぜあんなことをしてしまっただろうか。 疑問系ばかりが残る。 それでも、今の私は少しは前を向きたいと思っている。 私は、二十五歳になった。 今会社に向かっている。 朝の日差しが暖かくて気持ちいい。 茶色のカールされた髪が歩く度に揺れている。子どもの頃は黒色でそれほど長さもなかった。 大学を卒業後、就職のために上京してきた。 今は広告会社の営業職として働いている。 子どもの頃から人と話すのは好きだったというもあるけど、知的な彼に憧れてこの仕事を選んだというのが大部分だ。 大学生の頃は私の考える軸は、彼だけだった。 働き始めるまでに、男の人に「付き合ってほしい」と声をかけられることは正直数回あった。でも、彼が好きだから、全て断ってきた。 そんな状態だったのに、働き始めて忙しさから自分の時間がとれなくなると、私は彼への連絡を段々としなくなっていった。いや、正確にはそんな体力が残っていなくてしたくてもできなかった。 それまではあれからずっと彼と連絡をとっていた。多くはないメッセージも不満ではなかった。 楽しいと心から感じていた。 仕事が休みの日には、彼にメッセージを送った。今なかなか連絡できないことも謝った。でも私はいつものようにすぐに返事が返ってこないことにその時いらいらを感じてしまった。普段なら気にならないことなのに、仕事をしているとレスポンスが早いから余計にもやもやしたのだ。仕事と私生活を完全に一緒のものと考えてしまっていた。 私は線引きができなくなっていた。 環境が変われば、生活も変わるのは仕方ないかもしれないけど、彼のことを好きという気持ちは変わらないのにそんな風に感じている自分が嫌いだった。 でも仕事の忙しさは変わらず、どうにもこうにもできなかった。 どんどんそれが普通になっていった。 そして、少しずつ減っていた私からの連絡はいつの日からか全くなくなった。 彼からそのことについて何度も連絡が来ることもなかった。 彼の態度が変わったわけではないのはわ
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七章 「動き出す時間」
 たくさんの人が行き交う中で、私は彼にゆっくりと近づいていった。 それはまるで呼吸するかのようなスピードだったかもしれない。 早すぎず遅すぎず、これから二人がうまくとけあうかのような感じだったと思う。「佐々木 シオンくんですよね? 私は中学生まで一緒の学校だった安藤 茉白です。私のこと覚えていますか??」 私はすごく舞い上がっていた。彼しか見えていなかった。 でも、これが本来の私の姿かもしれない。 大人になり、いつの間にか様々なものを着飾るようになっていた。「えっ、はい。そうですが。えっ、安藤さんなの? こんな人の多いところで出会うことってある!?」 彼はめちゃくちゃ驚いたようで、テンションが上がっていた。「本当だよね。私もすごくびっくりしてる。久しぶり。元気にしてた?」 私は連絡をしなくなった申し訳なさがあったけど、久々の感動の再会の雰囲気を壊したくなかったから、あえてそのことは今言わなかった。でもまた会った時かメッセージでちゃんと言おうと考えている。「久しぶりだね。僕は元気にしているよ。あっ、今会社に向かっている途中?」「そうだよ」 彼は私のスーツ姿を見て、そう聞いてくれたのだと思う。 彼の変わらない優しさがとても心地よかった。「じゃあ今はあまり話せないだろうし、次の休みの日を教えてもらってもいい? その日にこの近くのカフェでゆっくり話そうよ」「うん、いいよ」と言いながら、私は次の休みの日を彼に教えた。 まさか彼からお誘いがあるなんて思ってもいなかったので、私はすごく嬉しかった。しかもスマートだった。 二人っきりなんて中学生のまとめ役以来のことだ。 懐かしくこそばゆい気持ちがこみ上げてきた。 私はたくさん話したいことがある。ずっと直接話せていなかったから。 こんな状態で、次に会う日をワクワクしないわけがない。 私たちは次に会う約束をして、お互いの仕事場に向かった。 彼と別れた後、私は彼と出会えた余韻に浸っていた。 急に私の目の前から消えた彼に、大人になってから再び会えた。 そんな奇跡って本当にあるのだなあと素直に驚いた。 どれほどの確率の先に、私たちは再び出会えたのだろう。 やはり私たちは運命で繋がっている。 そして、何より少年だった彼が、素敵な大人になっていてときめきを強く覚えた。 彼は、私の初恋相手
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八章 「あの日の真実」
 彼とカフェを出ると、夢の中から出てきたような感覚になった。 ずっとあの心地よい感覚の中にいていたかった。 でも、現実は突然やってきた。 私は心も身体も温かくなって指先をふと見た時、左手薬指にはまっている婚約指輪に目がいった。 おかしな話かもしれないけど、今の今まで私には婚約者がいることを忘れていた。 それぐらい彼のことしか見えていなかった。 今私には婚約者がいる。その婚約者と結婚するのがどう考えても常識だろう。 私の未来はもう約束されている。 基本的に変わることはないだろう。 もう数年彼に早く出会えていたら、悩むこともなかったのに。 そうすれば彼と恋人関係になれた。 いや、まだ彼に好きだという気持ちさえ伝えていない。 彼の気持ちも聞いていない。 私たちの恋は、何も始まっていない。 どうなるかなんて誰もわからない。 それなのに、どうしてこんなに胸のドキドキが収まらないのだろう。 どうして今のタイミングで彼に再び出会っただろう。 それには一体どんな意味があるのだろう。 ただ、私が初恋の人と出会って話をしていたということを卓也さんが知ると、どう思うだろう。 いい思いはしない気がする。 やはり運命は、私に優しくない気がする。 でも、今は流れに少し身を任せてみようと思った。 私は彼にメッセージを送り、次いつ会えるか聞いた。  心の中は感情が飛び跳ねていた。 返信はすぐに返ってきた。「今日は話できてすごく楽しかったし、会えて嬉しかった。ありがとう。次は、来週の土曜日とかはどう?」 私たちは互いに休みの日がほぼ同じだった。 それがなんだか運命のような気がして私は嬉しくなった。 運命的なことがたくさんあることはいいことだ。 私は、「その日は大丈夫だよ。時間帯は、11時でどう? 場所は、今度は私のおすすめのお店にしない? この後URL貼り付けておくね」と送ったのだった。 彼もそこにしようかと言ってくれた。 土曜日になり、私は前回よりおしゃれしてプリーツのついたピンクのスカートを履いてお店へと向かっていた。 彼に少しでもかわいく見られたいという思いがあるのだろう。 なんだか学生時代に戻ったみたいだ。「安藤さんも、今着いたの?」 彼が少し後ろから声をかけてきた。 私たちは同じ時間にお店の前に着いたようだ。 
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九章 「揺れる心」
 彼ともっと話したいという気持ちと私には婚約者がいるということの狭間で私は揺れていた。 ゆらゆら揺れている私はきっと悪い女だろう。 一層のこと、子どもの頃好きだった気持ちを言ってみようか。 ただ、今も思っていることは話さない。 それで彼が困った反応を示したら、少し彼のことも諦めがつく。 私は覚悟を決めた。 もし今の気持ちがバレてしまった時は、自分の感情に従おう。「私ね、子どもの頃、佐々木くんのことが好きだったんだよ」 恥ずかしくて、かみそうになった。 彼は一瞬驚いてから、私の目をまっすぐ見て「僕も子どもの頃、安藤さんのことが好きだったよ」と言った。 〝子どもの頃〟という言葉がなければ、今二人とも告白していることになる。 胸がドクンドクンしている。 彼といるとときめいてばかりだ。 恋にときめきは必須なものだと私は考えている。「あの時、告白していれば運命が変わっていたかな。でも、今は僕が追いかける恋になったみたいだね。間に合うかな」と、彼は私の左手の薬指に目を移し冗談交じりに笑った。 私は思いもよらぬ展開に、正直頭がついてきていなかった。 彼は今も私が好きだとはっきりと伝えてくれた? 私の小賢しい作戦は失敗に終わったばかりではなく、予想外の方向に進んでしまった。 でも早く何か言わないと、気まずくなる。「もぅ、佐々木くんは冗談がうまくなったね」となんとか返事を返せた。 でも、告白めいたことを婚約指輪をつけた私にするのは、どうしてだろう。彼はどこまで本気なんだろうか。いや、婚約者がいるのに他の男性と会っている私の方が断然中途半端で、おかしいから何も言えない。 だけど、私は〝婚約指輪〟という言葉を口に出すことはできなかった。彼との今の関係が一瞬で粉々になりそうだから。 私は一体何をしているのだろう。 彼は少し考えているような顔をしていた。「じゃあさ、テレビ電話をしてくれた時、本当は何を伝えようとしてくれたかぐらいは教えてくれる?」 当時は特に何もなかったからと言ったけど、彼には気づかれていたようだ。「あの時は、校外学習が無事終わったことをどうしても直接伝えたかった。でも本当は、寂しくて佐々木くんの顔が見たかったの」 当時の気持ちがもう知られているから、私はそんなに答えにくくはなかった。「そうだったんだね。出れなかったの
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十章 「深い愛情に触れて」
 私は卓也さんとデートに行くことにした。   デートといっても、主に彼と会っていたことを話すのだから、相手にとってあまり楽しいものではないだろうけど。 気は重いけど、しっかり話さないといけない。これは避けてはいけないことだ。「少し待たせたね」 卓也さんの格好はオフィスカジュアルだった。卓也さんは仕事以外の日もいつもしっかりとした服装をしている。 身長も180センチと高く、落ち着いた雰囲気だから、そういう格好が本当によく似合う。 服装ってその人にとって似合うものがあり、卓也さんはそれをしっかり理解している気がする。「今日はちょっと話があって、デートに行こうと言ったの」 私はお店に入るなり、話を始めた。「話? 何か悩みでもあるの?」 卓也さんは、心配そうな顔を私に向けた。 彼の細い手が私の手に触れる。 そんな視線や態度は、胸に刺さり痛い。「いや、そうじゃなくて⋯⋯。実は、私最近子どもの頃好きだったけど思いを伝えられなかった人にたまたま出会ったの」「うん、それはいいことだね」 卓也さんは態度を変えず、話を聞いてくれている。「その後も、数回彼と会った」 私は頭を少し下げた。「久々の再会だから、そんなこともあるんじゃないかな」 ホットコーヒーを飲みながら、卓也さんはゆったりとしている。 いらだったりしている様子はなく、落ち着いている。「問題なのは、私がまだ彼のことを好きだという気持ちがあったことなの。卓也さんという人がいるのに、気になる人と何回も会ってごめんなさい」「だから、最近いつもと雰囲気が違ったんだね」「そう、だったかな」 卓也さんは私の変化に気づいていた。 それでも私に何も言ってこなかった。 それはどうしてだったのだろうか? 私は結構焦っていた。「私は、茉白がこうやって話しくれたからもう構わないよ」「えっ!? 何も言わないの?」 私は卓也さんの言葉に目をぱちりと開いた。長いまつ毛が少し揺れた。 私がそれをしたのだけど、そんなに簡単に許されることではない気がしていたから。 どうして何も言わないのだろう。 確かに卓也さんは心がかなり広い。 でも、さすがに婚約をしているならしちゃいけない行為だと冷静になった今ならわかる。 私は完全に浮かれていた。 卓也さんのことを全然考えていなかった。「私は、今の話
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