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第256話

Penulis: 雲間探
礼二はこめかみを揉みながら、ほとんど目も開けられない状態で言った。「やっぱり君もまだ寝てないと思ったよ」

「今から朝ご飯食べるけど、あとで少し話せる?」

目がしょぼしょぼの礼二は、椅子にもたれかかりながらも、興奮気味に答えた。「話すに決まってるだろ!」

インスピレーションってのは一瞬で消えるものだ。

だからこそ、熱いうちに打たなきゃな。

「うん、分かった」

朝食を済ませた玲奈が、礼二とビデオ通話しようとした矢先、智希から電話がかかってきた。

「さっき藤田智昭の弁護士から連絡があって、前に彼が多めに分けてくれた別荘三軒分の権利証がもう出来たそうです。あとで私が受け取ってきますが、いつお渡しすればいいですか?もしお時間なければ、こちらからお届けに伺います」

玲奈はその件をすっかり忘れていた。

今はそんなことを考える余裕がなかった。

智希の言葉を聞いて、彼女は言った。「それじゃ、直江弁護士にお願いしてもいいですか?」

電話を切った後、彼女と礼二はすぐに本題に取りかかった。

昼ごろまで、二人は頭を酷使しすぎて、まるで脳が爆発しそうなほどだった。

玲奈が最後に藤田おばあさんを訪ねたのは、先週の日曜日だった。

今日の午後、玲奈が青木おばあさんと一緒に藤田おばあさんを見舞う予定だった。

だが、昨夜からずっと作業づめで、玲奈はまだ一睡もしていなかった。

昼食のとき、玲奈は「見舞いは夜にずらそう」と青木おばあさんに提案した。

青木おばあさんは彼女の顔色の悪さを見て答えた。「分かった、じゃあ夕食後に行きましょう」

玲奈はベッドで少し仮眠をとり、午後六時ごろにようやく起きた。

夕食を食べた後、彼女は青木おばあさんと一緒に病院へ向かった。

彼女たちが病院に着いたとき、智昭はまだいなかった。

玲奈と青木おばあさんは、病室で藤田おばあさんとほぼ二時間ほど一緒に過ごした。彼女たちがちょうど帰ろうとした頃、智昭が戻ってきた。

智昭は彼女たちを見ても驚かず、まるで来るのを知っていたかのような顔だった。

そして帰り支度をしていた二人に、「おばあさんを見舞ってくれてありがとう」と丁寧に言った。

玲奈も青木おばあさんも、彼に返事をする気はなかった。

それでも智昭は彼女たちをエレベーターまで見送ろうとし、玲奈に尋ねた。「権利証、もう受け取った?」

「まだ」
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