氷の令嬢の転職計画〜私を追放した祖国が破産寸前ですが、今は皇帝兄弟からの過剰な愛情表現の処理で手一杯です〜

氷の令嬢の転職計画〜私を追放した祖国が破産寸前ですが、今は皇帝兄弟からの過剰な愛情表現の処理で手一杯です〜

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By:  ぱすた屋さんUpdated just now
Language: Japanese
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「君との婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」 建国記念祭の夜、王太子から突然の不当解雇(婚約破棄)を言い渡された「氷の令嬢」こと、公爵令嬢エルゼ・フォン・ブラウベルト 「左様ですか。では、過去10年分の融資金、金貨1億5800万枚を即時一括で返済していただきますね」 エルゼはただの冷たい令嬢ではない。持ち前の計算能力とビジネス手腕で、王国のインフラと財政を裏から一人で支えていた超・合理主義な「有能経営者」だったのだ! 対価を払わない無能な王太子と自称聖女から、文字通り身ぐるみ(特注品のドレスと靴)を剥がし、インフラを完全停止させたエルゼは、さっさと見切りをつけて超大国・アウグスト帝国へと「転職」する。

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Chapter 1

プロローグ

「エルゼ・フォン・ブラウベルト! 貴様との婚約を破棄する! 私は真実の愛、聖女ミリアを見つけたのだ!」

 建国記念祭を祝う王城の大広間。

 数百人の貴族が見守るなか、シャンデリアの輝きに負けないほど自信満々な表情で、王太子アルフォンスが叫んだ。

 彼の隣には、桃色の髪をなびかせ、いかにも「守ってあげたくなる弱き乙女」を演じている自称・聖女のミリアが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。

 周囲の貴族たちから、さざ波のような私語が漏れる。

 哀れみ、嘲笑、そして「ついに来たか」という好奇の視線。

 私、エルゼ・フォン・ブラウベルト公爵令嬢は、持っていた扇子をゆっくりと閉じ、優雅に一礼した。

「左様でございますか。殿下、そのご決断は、アルフォンス・ド・グランゼール王太子としての公式な決定と受け取ってよろしいですね?」

「ふん、今さら命乞いか? 見苦しいぞ! ミリアこそが、この国の真の太陽。政略結婚で結ばれた、氷のように冷徹なお前など、王妃の座に相応しくない!」

「命乞いなどと。ただ、手続き上の確認が必要なだけです。……セバス、例のものを」

 私が合図を送ると、背後に控えていた初老の執事セバスが、重厚な革張りの書類鞄から、魔導インクで署名された分厚い束を取り出した。

「殿下。婚約とは、家格を維持し、国を安定させるための『相互扶助契約』です。それが破棄された以上、この10年間に我が公爵家が提供してきた『支援』は、全て遡及して無効となります。……事務手続きに移らせていただきますね」

「何を……事務手続きだと?」

 アルフォンスが鼻で笑う。

 私は彼を無視し、指先を小さく振った。空中投影魔法が発動し、大広間の空壁に巨大なグラフと数字が浮かび上がる。

「まずはこちらをご覧ください。過去10年、我がブラウベルト公爵家が王家に無利子・無担保で融資してきた『特別軍事維持費』『王都インフラ整備費』、および『王族遊興費代補填分』の総計です」

 投影された数字の末尾には、ゼロがいくつも並んでいる。

「総計、金貨1億5800万枚。内訳として、殿下がミリア様に贈られた『女神の涙』を含む宝石類12点、総額金貨800万枚。連日の夜会にかかった食費と人件費、計金貨2200万枚。……さらに、現在この城を維持している魔導回路の触媒代、過去3年分が未払いでございます」

 会場の貴族たちの顔から血の気が引いていく。

 当然だ。彼らがこの10年、贅沢三昧できたのは、私の実家である公爵家が「未来の王妃の実家」として、国家予算の半分近くを肩代わりしてきたからなのだから。

「なっ……なんだその数字は! そんなもの、私が許可した覚えはないぞ!」

「いいえ、全て殿下と国王陛下の署名入りです。契約書第8条『婚約が一方的に解消された場合、乙(王家)は甲(公爵家)に対し、過去の全融資額を法定利息5%を上乗せして一括返済する』。……殿下、今この場でお支払いいただけますか?」

「ふ、ふざけるな! そんな大金、一朝一夕で用意できるはずがないだろう!」

「でしょうね。ですから、契約書第12条に基づき、即座に『担保権』を行使させていただきます」

 私は再びパチンと指を鳴らした。

 その瞬間、大広間の天井を彩っていた魔導灯が瞬き、完全に消灯した。

「きゃあああ!? 暗い! 何事!?」

 ミリアが悲鳴を上げる。

 非常用の燭台が慌てて灯されるなか、私は冷徹に告げた。

「王都の魔力供給システム、および上水道の管理権は、我が家の私有財産です。今、供給をストップしました。あ、ご安心ください。貧民街や病院などの公共施設は予備電力で維持しますが、王城と貴族街への供給は、たった今完全に遮断いたしました」

「エルゼ……貴様、正気か!? 城を闇に包むなど、大逆罪だぞ!」

「大逆? いいえ、これは正当な権利の行使です。対価を払わない者にサービスを提供する義理はありませんわ。殿下、真実の愛があれば、魔法の光など不要でしょう? 愛の温もりで夜を明かしてはいかがかしら」

 暗闇の中、ミリアが震えながら口を開く。

「ひ、ひどいわ! 聖女である私が祈れば、神様が光をくださるはずよ!」

「ああ、ミリア様。ぜひお願いします。ついでに、王都の食料搬入路である『ブラウベルト運河』の封鎖も解いていただけますか? あそこ、我が家の領地を通らないと船が入ってこられないんですよ。明日の朝から、王都の市場に並ぶ小麦はゼロになりますが、聖女様の祈りでパンが増えるのを民衆も期待していることでしょう」

 ミリアの顔が、非常用の火に照らされて真っ青になる。

 彼女には聖なる魔力など微塵もない。ただの「少し魔力が高いだけの娘」であることを、私は調査済みだ。

「さあ、殿下。返済の意志がないと見なし、差し押さえを続けます。セバス」

「はい、お嬢様。……アルフォンス殿下、失礼いたします」

 セバスと二人の騎士が、アルフォンスの左右を固めた。

「なっ、何をする! 私に触れるな!」

「殿下がお召しのその『金糸の礼服』。そしてその『竜革の靴』。これらは我が家の工房が、将来の夫のために特注した非売品です。所有権は我が家にあります。……今すぐ脱いで、お返しください」

「な……ここで、脱げというのか!?」

「はい。さもなくば、窃盗罪としてその場でお引き摺りいたしますが?」

 王太子は屈辱に顔を歪めながら、衆人環視の中で靴を脱ぎ、上着を剥ぎ取られた。

 靴下姿で立ち尽くす王太子。その姿に、さっきまでの威厳はどこにもない。

「あ、ミリア様も。そのドレス、我が家が支援している絹織物ギルドの最高級品ですわ。それから、その首飾りも。……身に付ける資格のない方に貸し出せるほど、我が家は寛容ではありませんの」

「や、やめて! 来ないで!」

 ミリアが必死にドレスを抑えるが、無情にも騎士たちが宝飾品を回収していく。

 結局、彼女は薄汚れたシュミーズ一枚になり、床にへたり込んだ。

「これでおしまいです。ああ、最後にお知らせが」

 私は扉へと向かいながら、振り返って微笑んだ。

「王家が抱えたこの1億5800万枚の債権、先ほど『隣国の帝国』へ譲渡することを決定いたしました。帝国皇帝陛下からは、債権と引き換えに私を『財務卿』として迎えたいと、直々に熱烈な招待状をいただいておりますの」

 会場に衝撃が走る。

 この国の債権を帝国が握る。それは、この国が実質的に帝国の支配下に入ることを意味する。

「ま、待て! エルゼ、私が悪かった! 婚約破棄は取り消しだ! お前が必要なんだ!」

 裸足のアルフォンスが、無様に這いずりながら私の靴を掴もうとする。

 私はそれを、汚いものを見るような目で見下ろした。

「殿下、勘違いしないでください。私は『氷の令嬢』ではなく、ただの『有能な経営者』なのです。不採算部門を切り捨て、優良な投資先へ乗り換えるのは、商売の基本でしょう?」

 私はセバスから差し出された、白真珠が埋め込まれた新しい扇子を広げた。

「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ。……さようなら、無能な元婚約者様。暗い城の中で、せいぜい『真実の愛』とやらを噛み締めてください」

 私は一度も振り返ることなく、豪奢な扉を押し開けた。

 城の外には、帝国の皇帝が差し向けてくれた、豪奢な飛空艇が待っている。

 夜空には満月。

 これから始まる帝国での生活に、私は胸を躍らせる。

 数字は裏切らない。そして、私の価値を正しく評価できない男に、これ以上費やす時間は一秒たりとも残っていないのだ。

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「エルゼ・フォン・ブラウベルト! 貴様との婚約を破棄する! 私は真実の愛、聖女ミリアを見つけたのだ!」 建国記念祭を祝う王城の大広間。 数百人の貴族が見守るなか、シャンデリアの輝きに負けないほど自信満々な表情で、王太子アルフォンスが叫んだ。 彼の隣には、桃色の髪をなびかせ、いかにも「守ってあげたくなる弱き乙女」を演じている自称・聖女のミリアが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。 周囲の貴族たちから、さざ波のような私語が漏れる。 哀れみ、嘲笑、そして「ついに来たか」という好奇の視線。 私、エルゼ・フォン・ブラウベルト公爵令嬢は、持っていた扇子をゆっくりと閉じ、優雅に一礼した。「左様でございますか。殿下、そのご決断は、アルフォンス・ド・グランゼール王太子としての公式な決定と受け取ってよろしいですね?」「ふん、今さら命乞いか? 見苦しいぞ! ミリアこそが、この国の真の太陽。政略結婚で結ばれた、氷のように冷徹なお前など、王妃の座に相応しくない!」「命乞いなどと。ただ、手続き上の確認が必要なだけです。……セバス、例のものを」 私が合図を送ると、背後に控えていた初老の執事セバスが、重厚な革張りの書類鞄から、魔導インクで署名された分厚い束を取り出した。「殿下。婚約とは、家格を維持し、国を安定させるための『相互扶助契約』です。それが破棄された以上、この10年間に我が公爵家が提供してきた『支援』は、全て遡及して無効となります。……事務手続きに移らせていただきますね」「何を……事務手続きだと?」 アルフォンスが鼻で笑う。 私は彼を無視し、指先を小さく振った。空中投影魔法が発動し、大広間の空壁に巨大なグラフと数字が浮かび上がる。「まずはこちらをご覧ください。過去10年、我がブラウベルト公爵家が王家に無利子・無担保で融資してきた『特別軍事維持費』『王都インフラ整備費』、および『王族遊興費代補填分』の総計です」 投影された数字の末尾には、ゼロがいくつも並んでいる。「総計、金貨1億5800万枚。内訳として、殿下がミリア様に贈られた『女神の涙』を含む宝石類12点、総額金貨800万枚。連日の夜会にかかった食費と人件費、計金貨2200万枚。……さらに、現在この城を維持している魔導回路の触媒代、過去3年分が未払いでございます」 会場の貴族たちの顔から血
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第1話『不当解雇されたので、より優良な企業(帝国)へ転職します』
 眼下には、灯りの消えた祖国の王都が広がっていた。 本来ならば建国記念祭のフィナーレを飾るはずの夜景は、見る影もなく真っ暗だ。唯一、貧民街と病院施設だけが、私が設定した予備魔力回路によって淡い光を放っている。「見事なまでのブラックアウトですね。魔力供給のランニングコストを計算できない経営陣が上に立つと、インフラはこうもあっさりと崩壊する。良い実例です」「お嬢様、あまり身を乗り出されますと危険でございます」 帝国の紋章が刻まれた豪華な飛空艇のデッキで、私は夜風に銀髪を揺らしながら呟いた。後ろに控える執事のセバスが、すかさず最高級の飛竜の毛皮で作られたショールを私の肩にかけてくれる。「ありがとう、セバス。それにしても、帝国の飛空艇は素晴らしいわね。魔力効率が祖国の旧式とは比べ物にならない。この静音性と巡航速度、燃費計算のデータだけでも金貨十万枚の価値があるわ」「お気に召して何よりです。皇帝陛下も、お嬢様をお迎えするために最新鋭の特別機をご用意された甲斐があったというものでしょう」 そう、この飛空艇は乗り合いの客船ではない。隣国である『アウグスト帝国』の若き皇帝、レオンハルト・フォン・アウグスト陛下が、私個人のためだけに差し向けてくれた専用機だ。 祖国の王太子アルフォンスから婚約破棄(実質的な不当解雇)を言い渡されることは、数ヶ月前から私の計算上で「発生確率九十八パーセント」と弾き出されていた。 彼が自称聖女のミリアに入れ込み、公爵家からの融資を湯水のように浪費し始めた時点で、あの国は「不良債権」へと成り下がったのだ。 だから私は、次なる「優良な投資先」を探した。 圧倒的な経済力、軍事力、そして何より実力主義を掲げるアウグスト帝国。 私は帝国の内情を綿密にリサーチし、彼らが抱えている「ある財政的なボトルネック」を解決する事業計画書を作成して、匿名で皇帝直属の監査局へと送りつけたのだ。 結果は即日採用。 しかも、皇帝陛下直筆のスカウト状という破格のオファー付きだった。「……見えてきましたよ、お嬢様。帝国の首都、ガルデアです」 セバスの声に顔を上げると、夜の帳の先に、眩いばかりの光の海が現れた。 規則正しく整備された区画、途切れることなく稼働する魔導街灯、夜空を彩る高層建築の数々。祖国とは比較にならない、圧倒的な資本と技術の結晶がそこにあっ
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第2話『最初の業務は、引きこもり皇子の再建ですか?』
 帝国に到着した翌朝。 皇帝陛下が直々に手配してくださった特別室の寝心地は最高だった。最高級の羽毛布団と、魔力で最適化された室温。しかし、有能な経営者である私が、そんな快適さに溺れて時間を無駄にするはずがない。 私は早朝四時に起床し、昨晩のうちに皇帝陛下から決済をもらった『北部魔石鉱山のコスト削減案』の実行プロセスを各部署に通達し終えていた。朝食前のウォーミングアップとしては上出来だ。「おはよう、私の愛しい財務卿。昨夜はよく眠れたかな?」 帝城の最奥、皇帝専用の執務室。 朝陽を背に受けながら、レオンハルト陛下が優雅にコーヒーカップを傾けていた。淹れ立てのコーヒーの香りと、彼の放つ圧倒的なカリスマ性が空間を支配している。「おはようございます、陛下。寝具の品質は申し分ありませんでした。お陰様で睡眠効率が二パーセント向上し、今朝の業務も滞りなく完了しております。……さて、昨夜おっしゃっていた『厄介な案件』の詳細をお伺いしても?」 私が単刀直入に切り出すと、レオンハルト陛下は苦笑しながら、分厚い革張りのファイルと一枚の羊皮紙をデスクの上に滑らせた。「君のそういう一切ブレないところ、本当に好ましいよ。……これを見てくれ。我がアウグスト帝国の第二皇子、ルカ・フォン・アウグストの直近三カ月間の『経費報告書』だ」 私は羊皮紙を手に取り、そこに羅列された数字に目を通した。 数秒後、私の青い瞳は氷点下まで冷え切っていた。「……陛下。これは、何かの冗談ですか?」「残念ながら、すべて事実だ。ルカは歴代皇族の中でも桁違いの魔力量を持って生まれた天才だが、それゆえに周囲から恐れられ、自身も力を持て余して三年前に完全にグレてしまった。今では離宮の一角に引きこもり、近づく者には無差別に魔法をぶっ放す始末だ」「私が伺いたいのは、殿下の非行の理由ではありません。この数字です」 私は羊皮紙を指先で弾いた。「破壊された歴史的建造物の修繕費に金貨五千枚。威嚇魔法による近衛騎士の負傷手当および精神的苦痛への慰謝料、金貨二万枚。さらには意味もなく燃やされた高級家具の補充費……。たった三カ月で、小国の年間予算に匹敵する額が『無駄金(ロス)』として計上されています。これは明確な『不良債権』です。なぜ損切りしないのですか?」「手厳しいな。だが、私にとってたった一人の弟だ。それに、あい
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第4話『飴と鞭の投資効果』
「ふふっ……いいぞ、エルゼ。まさかあのルカを土方仕事で使い潰すとはな」 薄暗い地下給湯施設に、楽しげな低い声が響き渡った。 振り返ると、入り口の影から姿を現したのは、黒の軍服をラフに着崩した皇帝レオンハルト陛下だった。背後には青ざめた顔の近衛騎士たちが数名控えている。どうやら、本当に執務を抜け出して視察(という名の見物)に来たらしい。「あ、兄上……! なんでこんな所に……っ!」 レオンハルト陛下の姿を見た瞬間、ルカ殿下の空気が一変した。 先ほどまでの、自分の成果に戸惑いながらも誇らしげだった表情は消え失せ、ハリネズミのように全身を強張らせている。その黄金の瞳には、圧倒的な力を持つ兄への強いコンプレックスと、怯えを隠すための反発心が色濃く浮かんでいた。「僕を笑いに来たのかよ! ええ、そうですよ! どうせ僕は兄上みたいに国を治めることも、魔法を綺麗に使うこともできない! だからこんな地下室で、ボイラーの火焚き役なんかをやらされてるんだ!」 ルカ殿下は自嘲するように叫び、ギリッと唇を噛んだ。 これまで彼は、天才すぎる兄と比較され続け、自身の規格外の魔力を制御できずに「破壊の皇子」として恐れられてきた。彼にとって今の状況は、「ついに自分は労働力として地下に追放された」という敗北の証明のように感じられたのかもしれない。 レオンハルト陛下は、そんな弟の痛々しいほどの反発を、余裕の笑みを浮かべて見下ろしている。「いや、笑ってはいないさ。お前がようやく自分の居場所(地下)を見つけたようだから、兄として労いに来ただけだ。だが、くれぐれもエルゼの足を引っ張るなよ? 彼女の時間は帝国にとって何よりも高価な——」「レオンハルト陛下」 私はバインダーをパタンと閉じ、ピンと通る冷たい声で、最高権力者の言葉を遮った。「言葉を慎んでください。ルカ殿下への侮辱は、直属の上司(プロジェクトリーダー)である私への侮辱と受け取りますよ」「……おや?」 皇帝の言葉を正面から叩き斬った私に、近衛騎士たちがヒッと息を呑む音が聞こえた。ルカ殿下も、信じられないものを見るように私を見つめている。 だが、私は怯まない。相手が皇帝だろうと元婚約者だろうと、不当な評価を下す者には容赦しないのが私のビジネススタイルだ。「陛下は先ほど『土方仕事』『火焚き役』と仰いましたが、認識が根本から間
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第5話『不良債権、優良銘柄へ覚醒す』
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