冷徹な夫が暴走愛?それでも妻は絶対に許さない

冷徹な夫が暴走愛?それでも妻は絶対に許さない

Par:  相沢美咲Mis à jour à l'instant
Langue: Japanese
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妊娠25週目の健診の日、中山美羽(なかやま みう)は夫の浮気を目撃してしまう。 太って見た目も気にしなくなった美羽は、大きなお腹を抱えていた。そんな彼女を、夫の若く美しい愛人は「おばさん」と呼び、夫本人も人前で冷たく突き放したのだ。 中山翔平(なかやま しょうへい)と初めて会った頃の美羽は、キラキラしていて、みんなの人気者だったのに。 美羽が自分を誘惑して結婚したのだと思い込んでいた翔平は、彼女に離婚を切り出す。 この瞬間。 美羽の心は完全に冷え切ってしまった。学生時代から8年間も続けた片想いも、翔平への献身も、すべてが無意味になったのだ。 美羽は子供を産むと、離婚届にサインをして、翔平の前から姿を消した。 …… 5年後。 美羽は、誰もが息をのむほど美しく、資産も数十億を超える女性経営者へと大変身を遂げていた。美しく才能あふれる彼女に、言い寄る男は後を絶たない。 ところが、自分から離婚を言いだしたはずの翔平は離婚届を提出しておらず、二人は戸籍上、まだ夫婦のままだったのだ。 美羽は離婚を成立させるため、訴訟を起こした。 あれほど美羽を冷たく突き放した翔平が、今になってまた彼女に付きまとい始める。そして、美羽に言い寄る男たちを、次々と排除していった。 そんな中、美羽は別の男性と腕を組み、堂々と婚約を発表する。 翔平は美羽を壁際に追い詰め、感情をむき出しにして言った。「美羽、他の男と結婚するなんて、この俺が許すわけないだろう」

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Chapitre 1

第1話

妊娠25週目の健診の日、中山美羽(なかやま みう)は夫の浮気を目撃してしまう。

黒いコートを羽織った背の高いハンサムな男性が、腕の中にいる可憐な美人をかばうように立っている。その女性は白いコートを着て、頬はほんのりピンク色に染まっている。ふわふわのマフラーに包まれた小さな顔は、まるでお人形のように精巧な顔立ちだった。

美羽は健診結果の用紙を指が白くなるほど強く握りしめた。冷たい風が頬をかすめる。だけど、体の芯まで凍えさせるのは、ズキズキと痛む心のせいだ。

中山翔平(なかやま しょうへい)は、遠くにいる美羽の姿に気づいた。でも、その表情は平然としていて、浮気現場を見られた気まずさなんて微塵も感じさせない。それどころか、彼はその女性のために自ら車のドアを開けてあげるなど、終始優しい態度を崩さなかった。

いつもは人を寄せ付けない冷たいエリートなのに、こんな風に誰かを気遣う優しい一面もあるなんて。

その女性は美羽の視線に気づいたようだ。一瞬動きを止めると、不思議そうに美羽を見てから、翔平に尋ねた。「翔平さん、あのおばさん、ずっとこっちを見てるけど、知り合いなの?」

冷たい風が耳元で低く鳴った。

美羽には、その女性が翔平に何を言ったのか聞こえなかった。

それでも、彼女の口の動きで「おばさん」と言われたことだけは、はっきりと分かった。

「おばさん」って?

きっと、自分のことを言っているのだろう。

美羽は、心の中で力なく笑った。

まだ今年で24歳になったばかりだというのに。

もともとぽっちゃり体型なのに加え、顔立ちもごく普通。黒のダウンに黒のニット帽をかぶれば、妊娠後期のむくんだ体は重苦しく見える。やつれた顔も相まって、たしかに30代みたいだ。若くてきれいな美人とは比べものにならない。

翔平は、その女性が車に乗るのを優しくエスコートした。

美羽は体がこわばって、その場に立ち尽くした。車が走り去っていくのを、ただ見送ることしかできなかった。

美羽と翔平は、お腹の子供がきっかけで結婚した。翔平のようなエリートにとって、この不本意な結婚は順風満帆だった人生に生じた唯一の瑕のようなもので、お腹の子も、美羽が自分を縛りつけるための手段にすぎなかった。

翔平は、美羽のことを心から憎んでいる。

美羽は翔平に8年間も片想いをしていた。でも、自分が翔平にふさわしくないことを、美羽は分かっていた。だから、必死に勉強して、翔平を人生の目標として、その後を追いかけ続けた。

そしてついに願いが叶い、翔平の秘書として、そばに居れるようになった。

あの夜は、翔平の人生を狂わせただけじゃない。自分が大切にしてきた誇りもプライドも、無情に引き裂かれてしまった。

後になって、翔平が自分に向けた、まるで汚らわしいものでも触ったかのような、あの嫌悪に満ちた目を、一生忘れない。

だから、翔平にふさわしいのは、あんな風に綺麗で可愛らしい女性だけなんだ。

熱い涙が目じりを伝ってこぼれ落ちた。その直後、下腹部に激痛が走る。美羽は慌ててお腹に手を当て、もう片方の手でそばの石柱に寄りかかった。

通りがかった看護師が美羽に気づき、すぐに駆け寄って支え、診察室へ連れて行ってくれた。

どうやら、強いストレスでお腹の子に影響が出たらしい。

しばらくして、落ち着きを取り戻した。

美羽は病院を出て、心身ともに疲れきった体を引きずり、一人で車を運転して月見ヶ丘の家へ帰った。

ここは、翔平の私邸だ。

本邸にいる中山家当主夫人の中山日和(なかやま ひより)が、経験豊富な家政婦をよこして、美羽の世話をさせていた。

その頃。

美羽の世話係であるはずの家政婦二人は、まるでこの家の主人のように、暖房の効いたリビングで食事を楽しみながら談笑していた。

家政婦たちは物音に気づき、ドアの方へ振り返った。

美羽が帰ってきたのを見ると、家政婦の一人が立ち上がって近づき、こう尋ねた。「検診の結果はどうでした?」

その態度は横柄で、口調には侮蔑の色がにじんでいた。

世話係という名目だったけど、実際は自分を監視し、この家の主人にふさわしいかどうかを見張るためだった。

美羽はただ冷ややかに家政婦を一瞥しただけで、何も答えずにまっすぐ階段の方へ向かった。

家政婦は不満そうに眉をひそめた。

「聞いてますか?」

美羽は、それでも無視を続けた。

家政婦は美羽の後ろ姿を見ながら、悪態をついた。「デブのくせに。本当に自分がここの女主人だとでも思ってるのかしら。気取っちゃって」

美羽は寝室に戻り、ベッドに腰を下ろした。心は空っぽで、どうしていいか分からなかった。

翔平も、中山家も、自分を嫁として認めていなかった。

日和の判断で、自分と翔平は入籍した。

でもそれは、ちょうど自分が妊娠して翔平の元を訪れた時に、彼の祖父である中山剛(なかやま つより)が重病だったから。病気の剛のために縁起を担いで、入籍と出産という重なる喜びにあやかり、せめて祖父の快癒を願いたかったのだ。

偶然か、本当に縁起担ぎの効果があったのか、剛の病状は少しずつ良くなった。

それから、日和の自分に対する態度も少しは改まった。

それでも、中山家の他の人たちは、相変わらず自分を軽蔑していた。

今日、病院へ検査に行ったのも、お腹の子の性別を確かめるためだった。結果は、女の子。

翔平の母親である中山百合(なかやま ゆり)のもとには、もう病院から連絡がいっているだろう。

その時、スマホが震えた。

美羽ははっと我に返った。

バッグからスマホを取り出すと、表示された名前に少し驚いた。指導教授の佐野隆(さの たかし)からの電話だった。

美羽は通話ボタンを押した。

「佐野先生、こんにちは」

「エルスタンフォード大学で博士課程に進める枠が一つあるんだが、挑戦してみないか?」

隆の言葉に、美羽はしばらくの間、呆然としてしまった。

美羽からの返事がないので、隆は言った。「必要ないなら……」

「行きます」

美羽は我に返り、すぐにきっぱりとした声で答えた。

今度は隆の方が黙り込んでしまった。

美羽が翔平のそばに立つ資格を得るために、どれだけ努力してきたか、隆は誰よりもよく知っていたからだ。

今ようやく念願の思いが叶い、結婚して妊娠までしたのに。そんな美羽が、簡単に全てを捨てて離れるはずがない。

手元に残っていたこの枠について、ただダメ元で美羽に尋ねてみただけだった。

「佐野先生」

美羽は呼びかけた。

隆は言った。「それなら、明日の午前10時に私の研究室に来てくれるかな」

「はい」

隆はそれ以上何も言わず、電話を切った。

スマホを置くと、美羽は長く息を吐き出した。

突然、立ち込めていた暗雲が晴れ、明るい月が見えたような、不思議な解放感を覚えていた。

もう、目を覚まさなきゃ。

あなたを愛していない男にとって、子どもは彼をつなぎとめる理由にはならないし、振り向いてくれることなんてないのだ。

そこへ、日和から電話があり、本邸に来るように言われた。美羽は了承した。きっと、お腹の子のことで話があるのだろう。

美羽は気力を取り戻した。

まずバスルームへ向かい、ゆっくりとシャワーを浴びた。

ドレッサーの前に座ると、美羽は鏡の中の自分を見つめた。むくんでまん丸になった顔、目の下のクマ、たるみ、くぼんだ目元、両頬にできたシミ。

こんな醜い姿、誰が見たって嫌になるだろう。

こんな自分が、どうして翔平のような恵まれた人の隣に立つ資格があるというのだろう。

美羽は化粧をし、ピンクのダウンに着替えた。そして白く丸い帽子をかぶると、ずいぶん生き生きとして見えた。

美羽は、自分で車を運転して本邸へ向かうつもりだった。

しかし、ちょうど家を出たところで、翔平から電話があった。彼の平坦な声が聞こえる。「外へ出ろ」

美羽は驚いた。

きっと、日和が翔平にも本邸へ戻るように言ったのだろう。

美羽は答えた。「はい」

家を出ると、翔平のロールスロイスが入口の前に停まっていた。ほんの数時間前、この車は他の女を乗せていたのに。

美羽は息を深く吸い込んでから、車に近づき、ドアを開けて乗り込んだ。

車に乗った途端、ほのかに香水の匂いがした。甘く若い女性の香りだ。車内にはピンクのクマのぬいぐるみが置かれていて、いかにも若い子の趣味なのが分かる。

ふと顔を上げると、翔平の手首にヘアゴムが巻かれているのが目に入った。

これは、女性が「私の彼氏よ」と周囲に示すための印だった。

翔平は、きっとあの女性のことがとても好きなんだろう。

美羽は胸の奥の苦い気持ちを押し殺し、席に座ってシートベルトを締めた。

運転手がゆっくりと車を発進させた。

美羽は黙ったまま、窓の外を眺めていた。

以前なら、翔平と二人きりになれる時間を大切にして、関係を縮めようとしただろう。たとえ嫌がられても、めげずに話題を探して話しかけていたはずだ。

それは、自分たちがもう夫婦で、子供もいて、これから先も長い人生を共にする、という純粋な幻想を抱いていたから。良き妻、良き母親であれば、いつか翔平も自分を振り向いてくれるかもしれない、と。

でも結局、それは全部、自分自身をだましていただけだった。

翔平は、美羽の今の気持ちなんて気にも留めていなかった。いつものように冷たい態度で、こう尋ねた。「子供の性別は?」

美羽は答えた。「女の子よ」

その言葉を聞いても、翔平の端正な顔には何の変化もなかった。ただ、淡々とした声で言った。「子供が生まれたら、離婚しよう」

その言葉が心を切り裂いた。

美羽は指先に力を込めた。

心臓をぎゅっとわしづかみにされたみたいに、息が苦しくなる。

この結婚が長く続くはずがないことは、もともと分かっていた。でも、いざ翔平自身の口からそう言われると、やはり胸が張り裂けそうに痛かった。

美羽は唇をきつく噛みしめて、答えた。「分かった」

翔平は美羽の方をちらりと見た。彼女があまりにもあっさりと同意したことに、少し驚いたようだった。
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「会社の財務レポート、お昼休みが終わるまでに仕上げておいて」美羽は自分のデスクに戻った。美羽は秘書課の一般職に降格させられたが、遥は美羽に本来の担当じゃない仕事まで、たくさん押し付けていた。それでも、美羽は黙ってすべて引き受けていた。文句ひとつ言わずに会社にしがみついているのだって、ただの自己満足に過ぎない。どうせ翔平は、見向きもしてくれないのに。美羽はレポートを完成させると、データと印刷したものを遥に提出し、それからデリバリーを頼んだ。会社には社員食堂があるけれど、美羽はいつもお弁当を持参していた。人が多い場所は苦手だから。じろじろ見られるのも、誰かと話すのも嫌だった。ただ一人で、静かに過ごしたかった。今朝はお弁当の用意ができなかったから、仕方なくデリバリーで済ませることにした。デリバリーが届くのを待っていると、お昼を終えた同僚たちが、興奮した様子で話しながらオフィスに戻ってきた。「社長の彼女、すごく若いね。まだ大学生じゃない?」「そうみたいね。本当に綺麗な子。まるでお人形さんみたい」「社長が彼女を見る目、見た?とろけるように優しくてさ。いつも厳しい社長にあんな一面があったなんてね。まるで少女漫画の『オレ様社長とナイショの恋』みたい!」……おしゃべりに夢中だった二人は、オフィスに入ってきてようやく席に座る美羽に気がついた。まるで置物みたいに、じっと座っていた。一般職に降格してから、仕事以外の話は一切しなくなった。日に日に孤立して、今は一日中マスクをして、まるで誰にも顔を見られたくないみたいに。半年前まで、敏腕の社長秘書として活躍していたなんて、今では想像もつかない。美羽は配達員から電話がかかってきて、席を立った。下の階へデリバリーを取りに行くと、ちょうど、高級レストランのスタッフがケータリングを運んできたところだった。受付の人が、社長専用エレベーターのカードキーをかざしている。美羽の目に、スタッフが持つワインボトルが映った。一本で数千万はする高級品だ。でも、たかが数千万。翔平にとっては、ほんの数分で稼げてしまう金額にすぎない。美羽は自分のカツ丼の袋を提げて、オフィスへと戻った。午後2時。遥がやってきて言った。「社長がお呼びよ」美羽はどきりとした。なぜか、嫌な予感が胸をよぎる。
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第5話
遥は顔色を変えると、勢いよく机を叩いて立ち上がった。「何んなのよ!」美羽は遥を無視して、その場を離れた。自分のデスクに戻ると、小さな鏡を取り出し、頬のかすかなひっかき傷を見た。傷は浅かったので、ウェットティッシュで拭くだけで十分だった。どうせこんな顔なんだから、傷が一つ増えたってどうでもいい。それにしても、瑠衣の顔は、どこかで見たことがあるような気がした。仕事が終わる頃、美羽に父親の今井正人(いまい まさと)から電話があった。杉山涼太(すぎやま りょうた)が帰ってきたから、実家で一緒にごはんを食べよう、という誘いだった。美羽は嬉しくなって声を弾ませた。「お兄ちゃんが帰ってきたの?戻って来るのに、あと数日かかるって聞いてたけど」「仕事が片付いて、早めに帰って来たんだと」「わかったわ。仕事が終わったらすぐ帰るね」美羽は車を走らせて今井家へと向かった。今井家は西区にある中堅クラスのマンションで、今年に入ってから購入した、少し広めの中古物件だ。正人は中堅の不動産会社を経営していて、大富豪というほどではないけれど、暮らしには余裕があった。だから、美羽も子供の頃から何不自由なく育ってきた。しかし不動産業界が不景気になり、半年ほど前、会社は投資の失敗で深刻な経営難に陥ってしまった。倒産寸前まで追い込まれたけれど、正人は美羽が翔平の子供を身ごもったと知っても、翔平に責任を取るよう迫ったりはしなかった。日に日にやつれていく父の姿を見て、家財を売り払って借金を返すまで追い詰められているのを知り、美羽はついに中山家へ行く決心をした。あの時、確かに下心があった。父のためだけじゃなく、自分自身のためでもあったのだ。望んだものを手に入れた。今井家は中山家からの多額の結納金のおかげで、借金をすべて返すことができた。でもその代わりに、自分も大きな代償を払うことになった。だから今、味わっている苦しみは、すべて自業自得だ。誰を恨むこともできない。今井家に着くと、杉山澪(すぎやま みお)がキッチンから出てきた。「美羽、おかえり」美羽が9歳の時、両親は離婚した。母は兄を連れて出ていき、美羽だけが残された。その後、正人は澪と知り合った。でも二人は入籍せず、事実婚という形で一緒に暮らしている。最初、美羽は澪を受け入れられず
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第6話
コン、コン、コン。澪がドアをノックした。「美羽、お父さんたちが帰ってきたわよ」美羽は特に何も考えず、アルバムを置いて部屋を出た。玄関にいる二人を見て、嬉しそうに声を上げた。「お父さん、お兄ちゃん」涼太と正人は、美羽の方を見た。「美羽、お土産があるんだ。こっちに来て、気に入るか見てみて」と涼太が声をかけた。美羽は嬉しそうに近づいた。「何のお土産?」涼太は大小の紙袋をいくつか抱えていて、それをテーブルの上に置いた。そして、その中からブランド物のアクセサリーケースを一つ取り出して美羽に渡した。「開けてみて」美羽は嬉しそうに受け取り、開けてみると、華奢な金のブレスレットだった。「ありがとう、お兄ちゃん。すっごく好き」「気に入ってくれてよかった」涼太は手を伸ばすと、可愛がるように美羽の頭を撫でた。涼太は澪にも、似合いそうな金のブレスレットを買ってきていた。他にも、二人にはそれぞれ化粧品のセット、正人にはお茶とお酒、それから出張先の特産品も買ってきてくれていた。温かく、和やかな空気が流れる。この家に帰ってくると、美羽は心から安らぐことができた。「美羽、出産予定日はいつなんだい?」と、涼太が心配そうに尋ねた。美羽の大きなお腹は、たしかに臨月間近の妊婦のように見えた。美羽は言った。「予定日までは、まだ十分時間がある」美羽のお腹を撫でながら、澪が微笑んだ。「美羽のお腹の子は、きっと女の子ね」美羽は頷いた。「うん、女の子だよ」「性別、調べたのか?」と正人が尋ねると、澪も何かに気づいたのか、途端に緊張した面持ちになった。「うん。でも、おばあさんはこの子をとても大事にしてくれているの」正人はほっと息をついた。「そうか、それならよかった。子供がいれば、お前と翔平さんの関係も、これから少しずつ良くなっていくだろう」美羽は俯いた。心が急に重くなる。翔平から離婚を切り出されていることを、どう話せばいいのか分からなかった。でも、このことはずっと隠しておけるわけじゃない。それに、月見ヶ丘の家を出て、この今井家に戻ってこようと決めていた。まあ、いいや、夕食が終わってから話そう。澪が腕によりをかけた豪華な夕食が食卓に並んだ。涼太は今、友人と共同でIT会社を経営している。2年前に会社を立ち上げる時、正人は
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第7話
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第9話
瑠衣がこっちに来るのを見ながら、翔平はクスリと笑った。「瑠衣にお前に、血の繋がった妹がいるなんてバレたら、きっとやきもちを妬くぞ」浩平は言った。「お前と瑠衣が付き合うことに反対はしない。だけど、お前の身辺がきれいになるまでは、同棲なんて絶対に許さないからな」翔平は黙ったまま、口の端をあげて薄く笑った。「お兄ちゃん、二人で何の話をしてるの?」浩平は笑顔で「別に、たいした話じゃないよ」と答えた。……「どういうつもり?自分が偉いとでも思ってるわけ!?」遥は書類の束を、美羽の目の前に叩きつけた。ついさっき、遥はいつものように美羽の担当ではない仕事を押し付けようとした。しかし、美羽はそれをきっぱりと断ったのだ。美羽は怒りに震える遥を見て、鼻で笑った。「あら、その程度の仕事もできないで人に押し付けるなら、いっそ辞めたらどう?」「……」オフィスの同僚たちは、固唾をのんで成り行きを見守っていた。美羽の言葉を聞いて、みんな驚きを隠せない。もう辞めるつもりなんだろう。まさに、やけくそだ。その言葉にカッとなった遥は、美羽に歩み寄り、平手打ちをしようと手を振り上げた。だが、それよりも早く、美羽は机のコップを掴み、遥に向かって水を浴びせかけた。顔に水をかけられた遥は、一瞬固まったが、すぐに叫び声を上げた。「よくもやったわね、この性悪デブ!」「何をしているんです!」潤の声に、遥は美羽に掴みかかろうとしていた動きを止めた。潤は怒りを露わにズンズンと歩いてくると、ずぶ濡れの遥を見て「一体、何があったんですか?」と聞いた。遥は息を整えながら言った。「美羽さんに仕事をお願いしたんですけど、やってもらえなくて」潤は眉をひそめ、不快感をにじませながら美羽を睨みつけた。「自分だけ特別扱いされるとでも思ってるのですか?ここは会社で、君の家ではありません!」美羽は首から下げていた社員証を外すと、机の上に叩きつけた。そして潤を冷ややかに見つめて言った。「じゃあ、今すぐ辞めます。それで、いいでしょう!」そう言って、美羽は自分のバッグを手に取り、さっさとその場を後にした。「おい!」潤は顔色を変えて怒った。まさか美羽がこんな態度に出るとは、思ってもみなかったのだ。美羽がエレベーターで1階に下りると、ちょうど会社に戻ってきた翔平と
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第10話
美羽はベッドで横になり、そっとお腹に手を当てた。小さな命の鼓動を感じていると、高ぶっていた気持ちが少しずつ落ち着いてきた。竜之介の言葉が、何度も頭の中を駆け巡る。翔平は、本当にこの子を嫌っているのだ。たとえ日和がこの子を気にかけてくれても、いずれあの瑠衣が跡継ぎを産んだら、この子は一体どれほど大事にされるというのだろう。これ以上考えるのが、本当に怖かった。自分の子を愛してくれない家族のもとに、一人で残していくことなんてできない。絶対にこの子を連れて逃げるんだ。美羽は、固く心に誓った。コン、コン、コン。ドアをノックする音が聞こえ、美羽ははっと我に返ると、ゆっくり体を起こしてドアを開けた。そこに立っていたのは、意地の悪そうな顔をした翠だった。「翔平様がお呼びです」美羽がリビングへ向かうと、ソファに険しい顔をした翔平が座っていた。心の準備はしていたはずなのに、彼の冷たい表情と凍てつくような威圧感を前にして、思わず恐怖がこみ上げてきた。足がこわばり、翔平の顔をまともに見ることさえできなかった。美羽は翔平の前で立ち止まった。叱責されるかと思ったが、聞こえてきたのは、それよりもずっと冷酷で無慈悲な言葉だった。「この書類作成が全部終わるまで、寝るんじゃないぞ」そう言うと、翔平は組んでいた長い足をほどき、ダイニングの方へ歩いて行った。美羽はローテーブルの上に積まれた、分厚い資料の山に目をやった。今夜は寝かせるつもりがない、ということなのだろう。翔平の目には、自分は妊婦どころか、人間としても映っていない。それほどまでに、自分のことが憎くてたまらないのだ。美羽は指を固く握りしめ、くるりと背を向けると、翔平の背中に向かって言い放った。「退職届ならとっくに提出済みよ。もうあなたの仕事はしない」翔平はぴたりと足を止め、ゆっくりと振り返ると、冷たい視線を美羽に注いだ。美羽は勇気を振り絞り、その威圧的で陰鬱な視線をまっすぐに見つめ返した。「同じことを二度言わせるな」翔平は翠に視線を移し、命じた。「こいつの部屋に鍵をかけろ」それを聞いた翠は、待ってたとばかりに勝ち誇った笑みを浮かべた。「はい」と返事すると、翠は足早に美羽の部屋へと向かった。美羽は全身をこわばらせて、その場に立ち尽くすことしかできなかった。まるで深い
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