เข้าสู่ระบบ女神エステルの加護を受けたリンドベルム王国の王女セレーネは、ある日、婚約者から「異母妹フローラを愛している」と告げられ、婚約破棄を自ら国王に申し出るよう迫られる。絶望の中、庭へ飛び出した彼女は雷に打たれ、その衝撃で前世の記憶を取り戻す。なんと彼女は、かつて好きだった小説の“破滅する悪役王女”に転生していたのだ! 物語通りなら、妹が神託を受けてヒロインとなるはずなのに、現実は違っていた。時系列もズレていて、神託を受けたのはセレーネ自身。そして自分の補佐官であるローラントのことが気になりだし……。これはもう、小説とは違う“別の物語”かも? ならば、運命に流されるのではなく、自分の意思で未来を選ぼう。
ดูเพิ่มเติม雷に打たれたようなではなく、文字どおり雷に打たれたショックで、恐ろしいほどたくさんの記憶が一気にセレーネの脳内に流れ込んできた。
「あれ? ここって『エステルの戴冠』の世界じゃない?」
そんな言葉を呟いた後、セレーネは気を失った。
セレーネが気を失う少し前に時間は遡る。
「……ヴィンセント。これはいったい……どういうことなの?」
婚約者であるヴィンセントのもとに訪れたセレーネは衝撃を受けた。なぜなら彼はセレーネの異母妹であるフローラを膝の上に乗せ、「愛しているよ、フローラ」と囁いていたからだ。
「セレーネ殿下!?」
ヴィンセントは慌ててフローラを膝の上から降ろそうとしたが、フローラがそれを止める。そして、堂々とヴィンセントの胸に頭を預けて甘えるような仕草をすると、にやりと口端をあげた。
「お姉様、こういうことですの。ヴィンセントとの婚約を破棄してくださらない?」
婚約者の裏切りを目の当たりにしたセレーネは、震える体を両腕で抱きしめきっと二人を睨む。
「いつから……いつからなの? 貴方たちはいつの間にこんな仲に……」
絞り出すように問いかけるセレーネにフローラは嘲るような笑みを向ける。
「いつから? 幼い頃からずっとですわ。ヴィンセントは元々わたくしの婚約者になるはずでしたの。突然正妃の娘である貴女が現れなければね」
セレーネはリンドベルム王国の第一王女で正妃の娘である。対してフローラは側妃の娘で第二王女だ。しかし正妃の娘でありながら、セレーネは十四歳まで市井で育った。
「卑しい市井の育ちのくせに、正妃の娘というだけでヴィンセントの婚約者の座は貴女に盗られてしまった」
理由ありではあるのだが、王女でありながら市井で育ったセレーネをフローラはことある事に見下していた。
セレーネが十六歳の時にヴィンセントとの婚約が結ばれた後、セレーネに対するフローラの当たりはさらにきつくなったのである。「ヴィンセント! 貴方もそうなの?」
堪らず婚約者にも問いかけると、ヴィンセントはセレーネを一瞥いちべつし、ため息をつきながら前髪をかきあげる。
「そうですよ。僕はフローラと結婚するものだとばかり思っていた。王命でなければ誰が市井育ちの王女なんかと婚約するものですか」
「そんな……」
知らない。こんなヴィンセントは知らない。初めて出会った時から彼はいつだってセレーネに対して優しかった。いつだって青空のような瞳はセレーネを優しく見つめてくれていたのに……。
「そうだ。セレーネ殿下から婚約を破棄していただけませんか? 国王陛下は貴女に甘い。きっと婚約破棄を認めてくださるはずだ」
良いことを思いついたというような顔をしてセレーネに笑いかけるヴィンセントだが、その表情には優しさのかけらも見られない。
ヴィンセントの言うとおり、国王はセレーネに甘い。長年市井で育ち苦労をさせたとセレーネをとことん甘やかしている。ヴィンセントとの婚約を破棄したいと願えば、きっと叶えてくれるだろう。
だが、政略で結ばれた婚約とはいえ、セレーネはヴィンセントのことが好きなのだ。婚約破棄してくれと言われても、簡単に諦めることはできない。
「それは……できません」
婚約破棄はできないと言うセレーネにフローラが鼻で笑う。
「バカなお姉様。愛されていないのに婚約破棄をしないなんて。でもそうね。どうしてもヴィンセントのそばにいたいのであれば、側妃になるのはどうかしら?」
「なっ!?」
突拍子もないフローラの提案にセレーネは言葉に詰まる。
「僕の妻になる人は君一人だけでいい。愛しているフローラ」
フローラの髪に口づけを落としながら愛の言葉を囁くヴィンセントは、最早セレーネへの裏切りを隠すつもりもないらしい。
「ふふっ。そう? でもお姉様を側妃に迎えれば、面倒な執務を全て押しつけられるのに?」
「それはいい考えだね。でも愛しているのはフローラだけだから、形だけの側妃になるな。それでもよろしいですか? セレーネ殿下」
セレーネへ向けられる二人の眼差しは侮蔑ぶべつに満ちている。耐えられずセレーネは部屋から飛び出した。
気づけばセレーネは王宮の中庭にいた。ここには四阿あずまやがあり、いつもヴィンセントとお茶会をしていたお気に入りの場所だ。
「ひどい……ひどいわ」
四阿に設置されているテーブルに倒れ込むように突っ伏すと、セレーネは声を上げて泣いた。
大好きな婚約者はよりにもよって異母妹を愛しているという。しかも幼い頃から二人は想いあっていたというのだ。「形だけの側妃なんていやよ!」
二人は両想いだ。セレーネが婚約破棄をすれば、ヴィンセントはフローラに婚約を申し込むだろう。だが、仮にセレーネを側妃にとヴィンセントが望んだとしても、国王は決して許さないはずだ。
「貴女にヴィンセントは渡さないわ、フローラ」
セレーネは立ち上がり、ふらつく足取りで四阿を出ると、国王の執務室へ向かおうとする。こうして泣いている間にも、ヴィンセントがセレーネとの婚約破棄を国王に願い出てしまうかもしれないのだ。先手を打っておかなければならない。
「婚約破棄なんて絶対にしない!」
しかし、四阿を出て王宮の回廊に辿り着く寸前、突如雷鳴がしたかと思えば、一筋の閃光がセレーネを貫いた。
記念するべき三百回目の建国祭は歴史に残る事件が勃発し、波乱に満ちていた。だが、事件は迅速に解決し、幕を引いたのだ。 セレーネの暗殺を企てたハルヴィオン侯爵は裁きの後、毒杯を賜った。だが、家族はハルヴィオン侯爵の企みを知らず家の取り潰しは免れ、爵位は長男が引き継いだ。実行役の家令は家族の命を盾に取られたこと、暗殺が未遂に終わったことで情状酌量となり、家族とともに国外追放となった。 そして、今日はフローラが離宮に旅立つ日だ。 セレーネは国王とともに王宮の門まで馬を駆ってフローラの見送りに来た。「あの……お姉様。今までいろいろとごめんなさい。わたくしお姉様が羨ましかったの。美しくて賢くてわたくしにはないものをたくさん持っている。それなのにお父様の愛情や女神エステルにも愛されてずるいって妬んでいたの。逆恨みもいいところよね」「本当に困った子よね。私はずっと貴女と仲良くしたかったのよ。だって腹違いでも私たち姉妹だもの」「お姉様!」 フローラが涙を流してセレーネに抱き着いてきたので、子供をあやすように背中を優しく撫でてやる。「お許しが出て王宮に帰ってきたら、お茶会でもしましょう。その前に私が離宮に遊びに行くけれどね」「本当に? 約束よ。お姉様」「ええ。約束よ。ほら! 小指を出して」 フローラは首を傾げながら、おずおずと小指を出す。セレーネは小指を絡ませて指
「家族の命を盾に取られて命令に背くことができなかったのです! お許しくださいとは申しません。わたしはとうに覚悟はできております。ですが、どうか家族の命だけはお助けください! 王太女殿下!」 家令は涙を流しながら、家族の命乞いをする。王族の弑逆は重罪だ。未遂だとしても極刑は免れない。場合によっては一族郎党処刑ということもあり得るのだ。「ハルヴィオン侯爵。シャンデリアには貴方の魔力の痕跡が残っておりました。殿下がシャンデリアの真下に来た時に落下するよう、魔力操作をしていましたね?」 ハルヴィオン侯爵は魔力操作の才能が飛び抜けている。正確に魔力を操ることが上手いのだ。花火を爆発させたのも侯爵の仕業だ。巧みに魔力操作をして炎上させたのだ。「証拠は揃っているのですよ、ハルヴィオン侯爵。まだ申し開きがありますか?」 黙したままのハルヴィオン侯爵にセレーネが問いかける。「嘘よ! 伯父様がそんなことをするはずがないわ! そうだわ。お姉様がわたくしを貶めようと伯父様を犯罪者に仕立てているのね?」 これだけ証拠を突きつけているというのに、フローラが的外れなことを言い出すのでセレーネが窘めようとした時だ。「くくく。どこまでも愚かな娘だ」「伯父様?」 それまで黙していたハルヴィオン侯爵が口を開く。「偽物の王女だとしても、もう少
そろそろガーデンパーティーが終了するので、今日帰国予定の賓客たちが国王に挨拶をしている。そんな中、ハルヴィオン侯爵は落ち着かない様子で時折一定の場所に視線を向けていた。誰かを待っているようだ。「ハルヴィオン侯爵」 だから、意外な人物が目の前に現れた時に驚愕の表情を浮かべた。「おっ! 王太女殿下!? なぜここに……」「どうしました? 私がここにいるのが不思議ですか?」 首を傾げるセレーネにハルヴィオン侯爵は動揺を隠すように笑顔を取り繕う。「い、いえ。先ほど急いで王宮に戻られたようなので……」「急ぎの用件でしたが、もう終わりました」 セレーネが頷くと、ハルヴィオン侯爵の前に黒づくめの装束を着た男が引きずり出された。その男は後ろ手に手枷をはめられ、口元には猿ぐつわをかまされている。「これは……我が家の家令ではありませんか? 何故このような仕打ちをなさるのですか!?」「ハルヴィオン侯爵、そのまま動かれませんよう」 ハルヴィオン侯爵が家令を助け起こそうと身を屈める前にローラントがけん制をする。助けるふりをして口封じをする可能性があるからだ。「ドレンフォード卿! 何をしているのです?
舞踏会の翌日、招待客たちへの詫びを兼ねて急遽王宮の庭園でガーデンパーティーが開催された。 帰国予定の賓客や予定がある貴族はそのまま王宮を辞したが、大半の招待客はガーデンパーティーに参加したのである。「昨日の奇跡は素晴らしかったですな」「わたくしはシャンデリアの破片で腕を切ったのですが、奇跡のおかげで跡形もなく消えましたの」「王太女殿下に感謝ですな」 立食形式のガーデンパーティでは、昨日の舞踏会でセレーネが起こした奇跡の話題で盛り上がっていた。「何よ。お姉様ばかり……」 どこへ行ってもセレーネの話題ばかりでフローラは面白くなかった。奇跡を目の当たりにしても、フローラのセレーネに対する態度は変わらない。「フローラ殿下」 隅で一人佇んでいるフローラにハルヴィオン侯爵が声を掛けた。「伯父様。ごきげんよう」「浮かぬ顔をされていますね。せっかくの可愛らしいお顔が台無しですよ」「だって、皆様お姉様の話ばかり。つまらないのですもの」 フローラが拗ねたように頬を膨らませると、ハルヴィオン侯爵はふっと笑う。「今に面白い事が起こるかもしれませんよ」「え?」「いえ。こちらの話です。それではフローラ殿下。また後でお会いいたしましょう」 他の貴族に挨拶するために去っていったハルヴィオン侯爵の姿をフローラは首を傾げて見送った。 挨拶にやってきたキリアン・オーランドにセレーネはカーテシーをする。「オーランド大使。昨日は危ないところを救っていただきありがとうございました」「いや。昨日の奇跡はすごかったな。あれが女神エステルの力というわけか?」「はい。ところでオーランド大使も魔法が使えるのですか?」 昨日、シャンデリアが落下する寸前、キリアンは一瞬の間に場所を移動していた。ただ身体能力が高いだけでは不可能な技だ。「まあな。グラキア大陸では魔法を使える者はほとんどいないが、祖母がこちらの大陸出身で魔
神殿は王都の東にある。女神エステルを祭神として祀っている神殿は新年を迎える際の式典、民たちに与える祝福など様々な役目がある。魔法属性の鑑定は鑑定魔法を使える魔法使いでもできるのだが、『女神の愛し子』ともなると話は別だ。女神エステルに神託を受けた者は神殿で鑑定を受けることになっている。 その日、百年ぶりの『女神の愛し子』が訪れるということで、神殿内部は沸き立っていた。セレーネが姿を現すと、神官たちは歓喜する。「お待ち申し上げておりました、王太女殿下。神殿長のもとにご案内いたします」 丁重に迎えられたセレーネは神殿長が待つ部屋へと案内される。
王宮まで王都の民たちの盛大な歓声を受けながら、帰り着いたセレーネは休む暇もなく、国王に挨拶に向かう。「お父様。ただいま戻りました」 執務室に入室し、挨拶をすると国王は笑顔で出迎えてくれた。「セレーネ、この度の視察ご苦労であった。そして、よくぞアンカーレ地方を救ってくれた。女神エステルの神託を受けたそうだな?」「はい」 女神エステルの神託を受けた時のことを詳細に国王に話す。国王は時折頷きながら、真剣にセレーネの話に耳を傾けてくれた。「疲れてるいるだろうが、神殿より招聘があってな
金色の光はローラントとミレーヌを包みそのまま空中へと浮かび上がる。そして、セレーネのもとへと誘った。瞬間、堤防は決壊し水が辺り一帯に押し寄せ、住民たちの家屋を破壊していく。せっかく育った稲穂は濁流に飲みこまれていった。「殿下……その力はいったい……」 神々しい光に包まれたセレーネにそう問いかけたローラントだが、セレーネ自身混乱しており、答えることができない。ミレーヌは突然のことに呆然としていた。「エステルの力と名って……あっ!」 ようやくそ
アンカーレ地方に降り始めた雨はますます雨脚が強まり、夜には豪雨となった。時々雷も伴っている。雷に打たれた瞬間をセレーネは思い出すが、不思議と怖くはない。おかげでクズ男と無事に婚約破棄することができたことの方が、セレーネとしてはうれしい。まさに雷様様だ。 セレーネは初日と同じくローラントと夕食を食べながら、窓に激しく叩きつける雨を恨めし気に眺める。「収穫の様子を視察できなくて残念だったわ」「この雨ですと、例え晴れても明日も収穫はできませんね」 雨の後は地面がぬかるみ足を取られるので、すぐに収穫をすることができない。