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第17話

Auteur: 枝火
「言わないわ」

春日は首を振った。

もう少しだ、もう少しで縄を解ける。

雪葉は目を細め、冷ややかな声で言った。

「そう......言わないなら、あんたを徹底的に壊してやる」

「この顔をめちゃくちゃにしてやる。そしたら、もう二度と男を誘惑できないでしょ?今、天罰を代行してあげるわ!」

雪葉は完全に狂気に飲み込まれていた。

彼女は刃物を手に取り、春日の顔を傷つけようと振りかざした。

その瞬間、春日は縄を解くことに成功し、素早く身を翻して攻撃を避けた。

雪葉は状況が変わったことに気づき、すぐさま春日を掴もうとしたが、春日は体に滲む血を無視して全力で逃げ出した。

しかし、血が流れる体では走る力も限界があり、数歩進むと雪葉に追いつかれそうになった。

その時だった。

暗闇の中から黒い影が飛び出してきた。

「春日!」

春日の前に立ちはだかったのは千秋だった。

彼は鋭い蹴りを繰り出し、雪葉を突き飛ばし、春日をその腕の中にしっかりと抱き寄せた。

「病院に連れて行くよ」

その声には緊張、心配、後悔、そして強い自責の念が滲んでいた。

春日は彼の顔を見上げた。涙が瞳の中で揺れていた。

その瞬間、彼女は限界を超えた感情に耐えられなくなり、堰を切ったように泣き崩れた。

「痛い、千秋、本当に痛いよ......」

千秋は冷酷な目つきで地面に倒れ込む雪葉を睨みつけ、無慈悲に再び蹴り飛ばした。

これでもまだ足りないのようで、彼は背後の秘書に命じた。

「俺は女を殴らない。お前がやれ。徹底的に叩きのめせ」

「承知しました」

秘書は頷くと首を鳴らし、雪葉の前に屈み込んだ。

彼女は目の前の筋肉質な男を見て、怯えながら後ずさった。

しかし秘書は容赦なく拳を振り下ろした。

わずか数分の間に数十発の拳が雪葉の体を打ち据え、その攻撃は全て急所を狙っていた。

殴られた雪葉は力なく地面に転がり、瀕死の状態で春日を見上げた。

「なんでよ......?湊が破産したっていうのに、また湊より良い男を捕まえたの?なんであんたばっかり......!」

わからない。

一体春日のどこが、彼女よりマシというの?

春日は千秋の腕の中に縮こまりながら、彼の胸を押して言った。

「彼女に話したいの」

千秋は唇を引き締め、彼女の判断を尊重することにした。

春日は雪葉を冷たく見下
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