LOGIN学校では冴えない男でも実はネットアイドル。しかしながら、ネットアイドルでもすべてが不詳。年齢・性別・本名etc. そんな彼の日常を書いた話です。 現実では無理無理って高音をと低音を歌いこなすイケメン・美人(貧乳だけど)です。 ネットに投稿してるのは、自分が歌ってる動画。男なのか?女なのか?全世界を巻き込む凡人(?)。
View More「昨日の配信みた?」
「お前、更新されたのに見てねーのかよ?」
「え?今回は男?女?」
「今回は女だった。やっぱり超美人だよなぁ。年齢もわかんないし」
「そうなんだよね。男バージョンの時はめっちゃイケメンだし。どうなってるの?って感じ」
一人のクラスメートが俺の机にぶつかった。
「あ、悪い。お前には縁遠い話だよな。っていうかお前、インスタとかやってんの?それ以前にスマホ持ってんの?」
一応授業前に俺も回収されるんだが。学校にはガラケーしか持って来てないからな。用ないし。
「高校生がガラケー?家との連絡に使ってるんですかー?」
「優等生じゃん放っておきなよ、きゃはは」
というのが俺、田中タロウ(17)の学校での評価。
ま、もっさりとした容貌。猫背。黒縁眼鏡。インテリ。ガラケー持ち。なんで友達はいない。所謂陰キャというやつだ。
今日も授業時間が終わった。
「田中君は塾ですかー?」
暇なのか?相手にしなきゃいいのに、どうして絡んでくるんだろう?
「まっすぐ家に帰る…」(俺だって投稿画像撮るので忙しい。速く帰らせろ)
「インテリ君だから塾かと思ったら、マザコンだったんでちゅね」
勉強は授業をまともに聞いてればできる。そして、マザコンではない!
うちの家族構成は俺・両親・姉だが、俺の仕事は知らない。俺は一人暮らしをしている。
俺は無視して帰った。俺の頭の中は今回の更新は男バージョンにするか女バージョンにするかだ。
うーん、イライラするし、女バージョンにするか。
なんか、化粧したりするとストレス解消になるんだよな。
こうして俺は『T』になった。
我ながらなかなか美人だと思う。世間ではハスキーボイスと言われている。
最近のコンピュータの編集力様様だ。喉仏を編集で誤魔化せる。
前なら首になんか巻いてたりして、性別が徐々に明らかになっていったもんだが、『T』の性別は不詳のまま。
歌唱力もそこそこあってよかった。これでも女声の歌も歌える。
化粧の仕方など独学。要は美人になればいいのだ。
翌日
「昨日の更新見たかー?二日連続女バージョン!」
「あー、男バージョンの『T』様見たいよ~」
『T』に‘様’が付いた。
「わかる~。『T』様ロス?」
「そんな感じ」
ふむふむ、今日は男バージョンにしようか?
「それにしても『T』様は歌上手くない?男声も女声もOKでしょ?すごくない?」
『T』をネット検索しても、年齢・性別・本名全てが不詳。
まぁ、俺なんだけど・・・。
俺はネットアイドルとして全世界で人気を博し、収入がある。ありがたや~☆
俺の家は声が外に漏れない完全防音。なおかつ、ネット環境も完備。各種スタジオも完備。
収入があるって素晴らしい!
今回は男バージョンになるわけね。
これはわりと簡単で、普段もっさりとしている髪をちょっといじって顔が見えるようにして、ちょっと化粧をすればOK。顔バレしないもんだ。いやぁ、先入観とかすごいなぁ。
声は普段と変わらないし、歌う歌はジャンルを問わず。何故ばれないのか不思議なくらいだ。
翌日の教室は今度は女子がうるさい。
「久しぶりにみた『T』様最高♡」
語尾が♡なんですけど、そこまで?
「一昨日は美女だったのに昨日はイケメンでイケボでしょ?どうなってるんだろ?」
「編集で変えてる?とか?」
「いやー!!『T』様はそのまま天然素材でイケメンなのよー!!」
お褒めにあずかり光栄です。
「ゴメーン、冴えない陰キャにはわからない話よね、ガラケーだし?」
「そういうなよ。世間では『T』様で持ち切りだぜ?って言っても何の事かわからないだろうな」
「「「はははっ」」」
そこまで笑うか?とりあえず、ワイドショーで話題になってたからそこらの奥様でも知ってると思う。
「お前はどーせ、髪の毛いじったってたいした顔じゃないんだろ?」
たいした顔です。保険で黒縁眼鏡をかけているわけですね。
髪をオールバックにされたが、黒縁眼鏡が陰キャさをまだまだ残してくれた。猫背なのも良いだろう。『T』様は姿勢もいいからな。
「う゛っ…」
一瞬バレたか?と思ったけど、そいつが一瞬ちょっとイケメンを感じただけのようだ。ほっ。
「やっぱ、陰キャはどう転んでも陰キャだよな」
捨て台詞っぽい。卒業式にでもばらすかなぁ?『T』様は永遠に謎の方がいいかな?墓まで持って行く?
「『T』様って絶対テレビとかのメディアにはでないのよね。ネットのみ!」
「そうなんだよな。せめて雑誌とか…」
「男共がこぞって女性誌を買ったりするの?想像するとちょっとウケる(笑)」
「女子も同じだろ?男性誌を買ったりするわけだろ?同じ穴の狢(むじな)だ」
「「うーん」」
テレビとかはどっかから絶対性別がバレる。年齢も本名もぜーんぶ。
雑誌は……自分で化粧をするわけじゃないだろうから、その場合も年齢・性別等バレる可能性があるからNG。
やっぱネットのみが安全だよな。
その後、アキラもカエデも通信制で高校に通い卒業。 カエデは地味に大ちゃんにアプローチを続けていたらしく、高校卒業資格を得てすぐに大ちゃんと結婚する運びとなった。大ちゃんはA&Kを続けてもいい。というか、二人のファンだから、カエデ結婚後も仕事を続ける。 アキラはなんというか、俺は無理だと思ったのに声楽で音大に入学しやがった。音大の声楽はオペラのイメージだけど大丈夫なんだろうか? なんでも歌えるから大丈夫だろうけど、A&Kってバレないかなぁ? と、心配していたらあっさりバレたらしい。声でわかるよな。声楽指導するくらいなら声聞けばわかるだろう。 そこで、出会った教授(若い!美人!巨乳!)と結婚すると言い出した。「言うのは簡単だけど、まず二人は交際をしてるのか?」「父さん?俺がおいそれと顔出しでデートとかできるわけないだろう?」 つまり交際もしていない状態?その状態で結婚宣言?「それは、「結婚をしたい人を見つけた。」というのではないのか?」「多分、向こうも俺のこと思ってくれてると思うけど……」 確信が持てないのによく言ったなぁ。「まずはプロポーズしてこい!」 そう送りだしたら、アキラのプロポーズにOKで我が家を訪れた。 おう、話には聞いていたけど、教授にしては若くて美しい。そして爆乳!あ、傍にユカリがいるんだった。「私は両親がもう亡くなってしまっています。コウジさんとユカリさんがお義父さんとお義母さんになるんですね。二人とも若くてきれいですね!」 そんな貴女も若くて美しい。そして爆乳。あ、この人の脚もキレイだなぁ。 そんなわけで、うちの美脚遺伝子は脈々と受け継がれていくようです。大ちゃんとカエデのペアによって美脚遺伝子は濃くなるし、ここで新たなる美脚遺伝子が組み込まれるようだし。 『T』から始まってる声の遺伝子も脈々と受け継がれていきそうです。
案の定マイケルに聞いたところ、海外でもちょっと有名らしい。「あー、PVで入れ替わったりしたからなぁ。俺が女装して歌ってみたり?」「そういうのやったね。で、それで海外でも有名になっちゃったりしてるの?」「そうらしい。東洋人で、そういった双子のデュオは知らないか?って升田の親父さんが聞いてくれた。今度お礼に行かなきゃな」 決して、寿司を食べたいわけじゃないぞ!あくまでもお礼だ!「これじゃあどこでも同じだね。もう、日本の中で恋人探しで良くない?」「サンセー!」 こいつら…結託しやがった。周りを巻き込んでおきながら結論をさっさと出しやがって。「具体的にどうやって彼氏・彼女を見つけるんだ?」「この際だから、今後の活動をPVとCDのみにする。メディアに顔を出すことはしない…とか?」「A&Kの人気に影響しないか?」「せっかくだから、公式ホームページのみに顔を出すってのはどうですか?プロデューサー?」 こいつらはトークもなかなかウリだったんだよな。実際トーク番組に顔を出したりしてたし。「そんでお前らは今後どうするんだよ?」「なんか資格を取りたいなぁ?」「私も!」 遺伝でこいつらもそこそこ賢いだろうけど、なんの資格・免許を取るんだよ?「死なないような資格とか免許にしてくれよ」「「イエス・ボス!」」 「私は大ちゃんの助けになるような資格がいいなぁ。‘管理栄養士’とか?」「お前、まさか大ちゃんが好きなのか?」 カエデがまさかの赤面を。まあ、イトコだし結婚可能だけど、大ちゃんなぁ…。「そこは頑張れ~というしかないが」「え~?父親ってそんな奴に大事な娘はやれん!とか言うんじゃないの」 責める?応援してるんだけど?「カエデは出会いが少ないだろ?大ちゃんは昔から知ってるいい子だし。‘そんな奴’には該当しないんだよね。カエデの出会いが少ないってのがなかなか問題だなぁ。だから、アキラの方が心配になる。アキラはどんな資格を取りたいんだ?」「実生活に役に立つ資格かなぁ?‘気象予報士’みたいな?」 超難関じゃないか?大丈夫か?「国家資格がいいよなぁ。A&Kだっていつまでもできるわけじゃないだろうし。‘救急救命士’とか?」「お前が死ぬぞ?それは却下。A&Kがいつまでもできるわけじゃないってのは真理だな。声にも限界があるからな」「教職員ってのは
「俺だってさぁ、年齢=彼女いない歴はヤダよ」「あ、そんなの私だって~」 と、二人は言うけど。アーティストとして忙しくしてて、顔バレしてるからなかなか出会いはないなぁ。「そうだなぁ?海外の人だったら二人の事知らないんじゃないか?日本語で歌ってばかりだし」「でも、ネットで俺達の画像あがってるらしいよ?」 それは著作権の問題だ。「それはソニアに言って、削除を頼もう。なんなら法的に慰謝料を…」「「そんな問題なんだ」」「そんな問題だ」 こいつらが本来稼ぐはずのものをネットで簡単にダウンロードなんかされては、収入減だ。迷惑千万!「あー、升田の親父さんの親戚が海外にいるから、連絡してみるか?」「「お願い!!」」 こいつら…鬼気迫ってるな…。 父さんとしてはこれ以上升田と親戚にはなりたくないだろうけど、こいつらの気持ちもわかるんだよなぁ。 三人で寿司をご馳走になりながら、話をした。「はぁ、マイケルかぁ。懐かしい名前だなぁ。よしきた!二人のお願いだもんな。おじさん聞いちゃう!」 おそらくだが…お爺さん世代だろう? カウンターには大成さんと……大ちゃんがいる。「「大ちゃん?見習い?」」「ああ、俺は俺で独立しないとな!」 何を言うか!店を継ぐんだよ! 変態一族は店を継ごう。大ちゃんは変態というよりは美しい脚を持って生まれてきたみたいだけど、変態の『美脚英才教育』(?)を受けているのかな? 美脚を売りにした寿司屋というのは斬新だな。客から見えねーじゃん。やはり、カウンター席をアクリルにするんだろうか?大成さんと親父さんが決めることだろう。俺に決定権があるわけじゃないし。 『T』から始まって、その孫はメジャーデビュー。だって、音域が広いんだもん!「これ聞いてるだけだと本当にどっちが歌ってるのかわかんないな」「「それがウリですから」」 孫に言われてしまった。より一層精進していきます。 二人はうまく恋人出来るのか?このネット世界で…。
紆余曲折を経て、ユカリは出産。 俺は、マンションを購入し、新生活に必要な家具・家電などを全部揃えた。 忘れちゃいけないのが、子供用のいろいろ。4LDKでよかったと思う。 ユカリが産んだのは男の子と女の子の双子。 男の子はアキラ。女の子はカエデ。 その後もなんだか色々あったけど(大学で色々言われる)、卒業しソニアに入社。 以前から構想があった『K』のカバーアルバムをメジャーデビューさせるということに挑戦した。当たった。爆発的ヒットを記録し、海外でも売れて、海賊版も出る始末。 そんなわけで俺は収入がめっちゃ増えた。うーん、これは安定しては得られないからなぁ。お金は大事にとっておこう。 代わりに、他のアーティストのプロデュースをするようになった。曲こそ作れないが、俺が作ったPVの評判はなかなかのもので、地味に高収入を維持している。こっちは安定しているのだろうか?貯金はもちろんするが、家計は結構潤っていると思う。 しかし、双子が相手の生活なので、いつ大きな出費が二倍で襲い掛かってくるかもしれないと、構えているのはユカリです。 俺は知らない人をプロデュースしながら、家計を支えています。 俺は意識していないけど、業界では俺は女性アーティストに露出をさせるというレッテルを貼られた。うーん、無意識だからなぁ。癖というんだろうか? 升田の親父さんのところで、愚痴っていたらねーちゃんに「あんたは他人に露出させてるの?自分が露出すればいいものを。全く呆れるわねぇ」と叱責された。リンカにも白い目で見られていたようで、心が痛い。 うちの双子達は順調に成長。 歌声は二人とも音域広いだろ?脚については升田の親父さんから「パーフェクト!」というお言葉をいただきました。俺とユカリの子だからなぁ。 二人は中学を卒業するや否やメジャーデビュー。 ユカリのご両親をハラハラさせているみたいだけど、二人とも楽しそうにやっています。 特に二人でデュエット曲を歌う時に、男性パートも女性パートも二人ともどっちを歌ってるんだかわからないところがファンの心を掴んでるらしい。二人とも全部一人で歌えるからなぁ…。アーティストネームはA&K。どっかで俺とかねーちゃんとか父さんの足がつきそうだけど、まぁ楽しそうだからいいかぁ。とほったらかしです。 父さんもねーちゃんもストップかけてな