ママを辞める時

ママを辞める時

last updateLast Updated : 2025-12-04
By:  東雲桃矢Completed
Language: Japanese
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男子高校生の敏貴は父親とうまくいってない。 育ててくれてることには感謝こそしているが、父親の容姿、声、そして「ママ」という1人称が気持ち悪くて仕方ない

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Chapter 1

1話

「敏貴、どこ行ってたの? 遅くなるならママに連絡してって、あれほど……」

「うっせーんだよ、カマ野郎!」

敏貴は父である雅紀に、暴言とクッションを投げつけ、2階にある自室に行く。

「どうして……」

雅紀は涙をこらえ、階段を見上げる。

「敏貴……」

 小声で名前を呼んでも、返事などはない。もしあったとしても、暴言か大きな物音だろう。

 雅紀はリビングに行き、カレンダーを見た。今日は月曜日。

「良かった、今日が月曜日で……」

 ”火”の文字に触れる指は、震えていた。

 翌朝、雅紀は長い髪をポニーテールにし、着替えてピンクのエプロンを着用すると、台所に立つ。

 女性用エプロンは、雅紀には少々小さいが、これは敏貴が小学生の頃、貯めていたお小遣いで買い、プレゼントしてくれたものだ。

 ところどころほつれてきているが、捨てることも、他のエプロンに変えることもできない。

「さてと、今日も愛情と栄養満点のごはん、作りますか!」

 両頬を軽く叩いて気合を入れると、野菜も肉もたっぷり使って、朝食と弁当を作る。

 同時にヤカンでお湯を沸かす。

 ちょうど朝食が完成し、テーブルに並べ終えると、敏貴がのそのそと座る。

「おはよう、敏貴。洗顔とうがいはした? 寝起きの口内は雑菌だらけだから、ちゃんとうがいしてね」

「うぜーよ」

 鋭い目つきと言葉が、雅紀の心に刺さる。

(きっと反抗期だから仕方ないの)

 雅紀は自分にそう言い聞かせ、笑顔を作る。

「病気になられたら困るから言ってるの。それと、おはようは? 挨拶は基本でしょ」

「あーはいはいおはよ」

 舌打ちと投げやりな挨拶にうんざりするが、無視されるよりはマシだ。

「ママ、今日は遅くなるから、これで食べてきて」

 雅紀は2000円をテーブルに置くと、台所に戻って弁当を詰める。

 ルイボスティーのパックとお湯を水筒の半分に入れ、お弁当を保冷バッグに入れ終わるタイミングで、氷を入れる。

「はい、お弁当と水筒。今日も暑いから気をつけてね」

 返事はない。その代わりに冷たい視線が突き刺さる。

「あのさ……」

 うんざりしてますと言わんばかりの口調だ。

「なぁに?」

 気づかないフリをして、にこにこ返す。

「いつまでそんなボロいエプロンつけてんの? 新しいの買えば?」

「これはママの宝物なんだ。敏貴が小学生の頃、買ってくれて……」

 バンッ!

 雅紀の言葉は、敏貴がテーブルを叩く音で遮られた。

「いつまで昔に縋ってんだよ! そういうの、キモいしダサいから!」

 敏貴は弁当と水筒を乱雑にカバンに押し込むと、出ていってしまった。

 

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