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第818話

Penulis: ちょうもも
たとえどれだけ男を転がす術を駆使しても、最終的な結果が本人の思い通りでなければ、伶には一切通じない。

まして今回は、その「ぶりっ子」が悠良にまでちょっかいを出した。

見過ごすはずがない。

その時、光紀が一歩前に出て、書類を伶に差し出した。

玉巳の姿を視界に捉えると、彼の目には敬意すら浮かぶ。

伶は本当に先を読む。

玉巳が来ることを見越して、しかも悠良に絡むとまで予測して調査を命じていたのだから。

この書類が役に立つタイミングも、まさに今だ。

すべて自業自得。

よりによってこんな時期に自ら飛び込んできた玉巳を、誰が庇えるというのか。

伶はその書類を手に、史弥の前へ歩み出る。

彼はいつだって単刀直入で、遠回しな物言いをしない。

「俺の記憶が正しければ――石川は前に妊娠してたよな?流産したんだが」

史弥は目を見開いた。

「それをどうして......」

「腹の子を失った原因は交通事故。そして君は、彼女と離婚するつもりだったが、その件があって踏みとどまった。違うか?」

伶がこうまで踏み込むからには、理由があると史弥も分かっている。

「何を知っている?」

伶は書類を差し出した。

「これを見れば、大体察せるはずだ」

史弥が手を伸ばそうとした瞬間、玉巳が飛びつくようにして奪い取ろうとする。

だが、伶はあらかじめ予測していたかのように、ひらりと持ち上げかわす。

その必死さこそ、やましさの証拠だ。

伶は冷たい視線を下ろし、蒼ざめた玉巳を見据える。

「石川さん、何をそんなに慌ててる?俺はまだ中身について一言も言ってないぞ。そこまで必死に取ろうということは......」

玉巳は凍りつき、慌てて史弥を伺う。

「わ、私は......」

次の瞬間には泣き顔に切り替え、肩を震わせ後ずさる。

大きな瞳の縁に涙を揺らし、耐えている風を装った声を出す。

「なんで私たちの関係を壊そうとするの?叔父さんは悠良さんが好きなんでしょ?お互い自分の好きな人と一緒になれて、もう十分じゃない?

それとも......叔父さんは悠良さんのために私と史弥を別れさせようとしてるの?」

悠良は目を丸くし、言葉を失った。

......前はただのぶりっ子だと思っていたが、ここまで来るともう「病的」の域だ。

伶は唇を固く結び、くだらない言いがかりなど歯牙にもかけない。
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