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第1116話

Auteur: 小春日和
真奈に見事に丸め込まれている伊藤の姿を見て、幸江は思わず額に手を当てた。「……もう、好きにしなさい」

――ただし、あとで泣き言を言わなければ、だけど。

「美琴さん、ちょっと聞きたいんだけどさ……高島にやったあの一手、前から習ってたの?」

「ええ、そうよ」

幸江はあっさりとうなずいた。「私だけじゃなくて、智彦もできるわ。子供の頃ね、うちのおじいさんが私たちをよく訓練してたの。わかるでしょ?私たちみたいな家の子は、小さい頃から誘拐なんて日常茶飯事だったのよ。ライバル企業にさらわれたり、身代金目当ての連中に狙われたり。だからおじいさんはね、男の子も女の子も、自分の身は自分で守れるようにって、徹底して教えてくれたの。

でもね、本当の難しさは技じゃないの。いちばん難しいのは、最初に自分を弱く見せることなのよ」

伊藤が横から口を挟む。「黒澤おじいさんは、俺たちが子供の頃からこう教えてたんだ。もし捕まったら、まずは弱いふりをして相手の警戒を解けって。で、油断したタイミングで一気に逆襲するってね。組み討ちとか、背負い投げとか、そういうの一通り教わったよ……まあ、俺は美琴ほど上手くはないけど
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