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第352話

Penulis: 小春日和
「上?誰だ?俺が直接話に行く」

冬城の表情はさらに冷えきったものとなった。

この海城で、司を知らない大物はいない。

藤木署長は少し汗をかいた。

瀬川真奈が収監されてからというもの、まったく気が休まらない!

やっと幸江美琴というお嬢様を送り出したと思ったら、今度は冬城司が来た!

藤木署長は言った。「冬城総裁、ご安心ください。瀬川さんはここでとても安全です。何の問題もありません。手続きが終われば、すぐに瀬川さんを解放します……」

「聞いているんだ。その上とは誰だ?」

冬城が詰め寄る。藤木署長はたまらず冬城のそばへ歩み寄り、声を潜めて言った。「冬城総裁……その上の方というのは、あなたもよくご存じの人物です。瀬川さんはすでに保釈されました。どうか、これ以上私を追い詰めないでください……」

その声には、言い訳というより切実な懇願が込められていた。

もう人はいないんだ!一人二人とまた来て探す!署長というのは本当に務まらないよ。

「黒澤か?」

冬城の頭に浮かんだのはその名しかなかった。まさか、海外にいるはずの黒澤の手が、すでに海城の警察内部にまで及んでいるとは。

「冬城総裁、私に言えるのはここまでです。瀬川さんには、警察署の中ではもうお会いになれません……」

藤木署長の言葉が最後まで届かぬうちに、冬城は静かに立ち上がり、未練ひとつ残さずその場を後にした。

中井さんは言った。「総裁、藤木署長が嘘をついているのでは?私が調べた限り、奥様は警察署に入ってから一度も外に出ていません」

「しっかり調べろ。彼女の動向を把握したい」

「はい」

「それと、黒澤が海城に残した人間も忘れずに調べろ。何か手がかりがあるはずだ」

「黒澤?」

中井さんは一瞬驚いた表情を浮かべた。

「黒澤が彼女をどこに隠しているのか、それを突き止めてこそ安全を確保できるんだ」

「かしこまりました」

その時、一台の車が冬城の車とすれ違った。

高級仕立ての黒いスーツを着た男が車から降り、警察署に入っていった。

警備員が慌てて駆け込み、藤木署長に声をかけた。「署長!また誰かが来ました!」

「また?今度は誰が来たんだ……?」

藤木署長は頭にきていた。

なんで次から次へと、こんなに人が押しかけてくるんだよ!

「忙しいと言ってくれ!追い返せ!」

「出雲(いずも)家の方です!」
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良香
この話、前世と今世の話が混ざって出てくるから時々混乱するのよ。 まあ、何度か読み返せば良いけど、ドキってしちゃう。真奈ちゃんの前世話、辛いんだよー。
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