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196.瑛斗、反撃の狼煙

last update Dernière mise à jour: 2025-09-22 19:57:58

瑛斗side

不正取引が疑われる会社の情報を得るため信用調査会社に調査を依頼したところ、思わぬ回答が返ってきた。

「法人登録された会社ですが、郵送で送ったところ住所不明で戻ってきてしまいました。直接、現地に行くと看板はあったのですが、事務所に誰もおらず不在でした。電話をしても繋がりません」

信用調査会社からの報告は、玲の不正を確信させるものだった。しかし、これ以上の調査は信用会社では限界があると思った俺は、より深く潜入調査を行う探偵に事務所の状況を調べさせた。

数日後、探偵から詳細な報告が届く。

「このビルですが、オーナーは外国人名義になっており連絡がつきません。二週間張り付きましたが、登録されてるフロアに人の出入りは一切なく、恐らく使用されていないでしょう」

二つの報告を聞き、俺は空と目を合わせ、静かに頷きあった。探偵には、この実体のない会社の代表者の情報を渡し、徹底的に洗い出すように指示をした。

俺の胸に、静かに燃え盛る怒りがこみ上げてくる。そして、その怒りは、玲の不正を暴くだけでなく、俺と華、そして子どもたちを引き裂いたすべての嘘を、白日の下に晒すための強い決意へと変わっていった。

「空、玲を引きずり下ろすぞ。すぐに書類をまとめてくれ。俺は、会長への報告や今後の対応を練る」

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