騙されましたわね、王子様!「メロメロ」にして国を乗っ取ってやりますわ!

騙されましたわね、王子様!「メロメロ」にして国を乗っ取ってやりますわ!

last updateLast Updated : 2025-12-01
By:  霧原いとCompleted
Language: Japanese
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純真令嬢、ハニートラップを仕掛けようとしてスパダリ王子に返り討ち!? 『私の使命は、王子様をメロメロにして国を乗っ取ることですの!』 父の冗談を真に受けた8歳の公爵令嬢エリザベスが大暴走。 しかし婚約者の王子様はスパダリだった。 「私がメロメロになるんじゃないんですの! 私がメロメロにするんですのー!」 手強い王子様に、果たしてエリザベスは勝利できるのか!? 成長するにつれて少しずつ変化していく二人の関係は、やがて大事件に発展する! 8歳から15歳までのエリザベスと王子の関係を綴った、胸キュンラブコメです。

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第1話 メロメロ大作戦ですわー!(8歳)
「ふっふっふ、ついにこの日がやってきましたわね!」 私はエリザベス・スパイシュカ、8歳。  アゼラン王国の公爵家令嬢である私は、今日、同い年であるこの国の王太子殿下と婚約を結ぶことになっている。「でも、それは表向きの話ですわ。私には、重大な使命がありますのよ!」 私はテディベアの"ランランちゃん"に、声を潜めながら伝える。  これは極秘任務だから、他の誰かに聞かれる訳にはいかないのだ。「私の大いなる使命は、王子様を騙してこの国を乗っ取ることですわー!」『ええーっ、す、凄いね、エリザベス!!』 私は裏声を駆使して、ランランちゃんにも台詞を喋らせる。「国を乗っ取れば、ケーキも食べ放題ですわー!」『最高だよ、エリザベス!』「ランランちゃんには、特別に分けてあげますわー!」『ありがとう、エリザベス!』  きゃっきゃとはしゃぐ私を遠目に眺めつつ、お父様とお母様が何かお話されている。その内容が、私に届くことは無い。「貴方、本当に大丈夫なの? この婚約はハニートラップ目的だなんて、エリーに嘘を吐いて」「いやぁ、婚約の顔合わせがあると言ってから、あまりにエリーが緊張して夜も眠れていないようだったから……気分を紛らわせようと冗談を言ったつもりだったんだけど、真に受けるとはなぁ。はっはっは」「笑い事じゃないわよ! どうするの、あの子に本当のことを言わないと」「このままで良いんじゃないかな? 楽しそうだし。可愛いし」「また、そんないい加減なこと言って!」  お母様が溜息を吐きながら頭を抱えている。  きっと、お疲れなのね。この国を乗っ取れば、お母様にも元気になって貰えるはずだわ。頑張らないと! 私が気合を入れたところで、迎えを知らせるノック音が響いた。◇ ◇ ◇「お初にお目にかかります、スパリオ王子様。エリザベス・スパイシュカですわ」 王宮の応接間で、私は優雅にカーテシ―をする。 私の作戦はシンプルだ。ずばり、王子様を可愛い私にメロメロにさせて、そのまま国を乗っ取ってしまおう大作戦である。 お父様は私のことをいつも「世界で一番可愛い!」と言ってくださるから、この作戦は完ぺきなはずだ。 しかも、今日の私は凄くおめかしをしている。  自慢の栗色の長い髪を、お気に入りの赤いレースのリボンでまとめて、ドレスだってリボンとお揃いの赤いフリル
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第2話 お茶会は最高ですわー!(8歳)
 王宮での迷子大事件の後、保護された私は応接間のソファーでお父様によしよしされていた。「うえええっ、ひっく、ひっく……」「怖かったねぇ、エリー。もう大丈夫だよ」 どれだけ慰められても、泣き止むことが出来なかった。  だって、王宮って広くてガランとしていて、すれ違うのも知らない人たちばかりで、とても怖かったのだ。「すみません、王様。うちの娘が」 「ははは、構わんよ。お転婆で良いじゃないか。王妃の子供の頃のようだよ」 「あら、嫌ですわ、陛下!」 お母様と王様と王妃様が談笑している内容も、ほとんど耳には入ってこない。 私は悲しすぎて、何が何だか分からなくなってきた。今日は何をしていたのだっけ。  ああ、そうだ、王子様との婚約の初顔合わせだったんだわ。 ――そして私の使命は、王子様をメロメロにして国を乗っ取ること! そのためにも早く泣き止まなくちゃと思うのに、涙は全然止まってくれない。「大丈夫ですか、エリザベス嬢?」 そんな私に、スパリオ王子様が優しく声を掛けてくれた。 跪くようにしながら身をかがめて、ソファーに座っている私に目線を合わせてくれる。  透き通るような彼の青い瞳が、柔らかく細まった。「お辛かったですね。どうでしょうか。お茶会には、お菓子も沢山用意しています。甘い物でも食べて、元気を出しませんか?」 そして、彼は輝くばかりの微笑を私に向けたのだ。「はっ、はむにゃん!?」 びっくりした。美しすぎて変な声が出た。  何なんですの、この王子様! なんでこんなに格好良いんですの!?  ともあれ、驚きすぎて涙が引っ込んだ私は、目をごしごし擦りながら高笑いをするのだった。「お、おーっほっほっほ! どうしてもと仰るなら、お茶会をご一緒して差し上げても宜しくってよ!」「うん、嬉しい。ありがとう」 私の言葉に、王子様が本当に嬉しそうにそう答えるものだから、私の頬は一気にぶわっと熱くなる。「ふえぇ……」 真っ赤になる私を、「あらあら」と遠巻きに大人たちが見守っていたのだが、そんな様子にも当然気づいてはいないのだった。◇ ◇ ◇ お茶会の会場に辿り着いた私は、目を輝かせた。 白いレースのテーブルクロスの上に、焼き菓子やフルーツの飾られた大皿が幾つも並び、中心には三段のケーキスタンドまである。「ふわあっ! こ、ここは夢の国
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第3話 デート大作戦ですわー!(10歳)
 私はエリザベス・スパイシュカ、10歳になりましたの。 アゼラン王国の公爵家令嬢である私は、同い年であるスパリオ王太子殿下と婚約し、順調に仲を深めておりますわ。 ――でも、私には、実は密かな使命がありますの。 それは、王子様をメロメロにして、最終的に国を乗っ取ること! 「ねえ、貴方。そろそろエリーに、あの使命の話は嘘だって真剣に伝えた方が良いわよ?」「それが、何回も話しているんだけど、頑固で受け入れて貰えないんだよねぇ」 お父様とお母様が、何かお話されながら溜息を吐いていらっしゃるわ。きっとご苦労が絶えないのね! そんな苦労も、きっと私が国を乗っ取れば解消されるはずよ。 両親の為にも、私は頑張りますわー!「お嬢様、お手紙が届いております。」 気合を入れる私の背中に、侍女から声がかかった。 明らかに品の良い封筒に包まれたその手紙の送り主は、スパリオ王子様だった。(ま、まさか、私のハニートラップがばれたのかしら……!?) 私はごくりと息を飲んで、その手紙の内容を確認する。 そして数十秒後、絶叫することになった。「でっ、ででででっ、デートのお誘いですわー!!」◇ ◇ ◇ デート当日、私は鏡の前で入念な身だしなみのチェックを終えると、談笑している両親の前に姿を現した。「お父様、お母様、どうかしら?」 今日はお忍びデートだから、街でも目立たない桃色のワンピースを選びましたの。でも、花の刺繍があしらわれていて、とても素敵なのよ。 栗色の髪は、濃い紅色のリボンで編み込み入りのポニーテールに仕上げて貰いましたわ。もう10歳ですもの、少し大人っぽい色だって似合うんですのよー!「エリー、可愛いよ! 世界で一番可愛い!」「ふふ、素敵よ。とても可愛いわぁ」「むふふー!」 大絶賛する二人に、私も大満足ですわ。 これならきっと王子様も私を一目見ただけで、メロメロになるはず!『エリザベス、君は何て美しいんだ。メロメロになったよ! この国は君に全てあげよう!』「――なんてことになったら、どうしましょう! うふふ、いやですわ、王子さまってば!」  心の中でスパリオ王子様の反応を想像して、私はにやにやが止まりませんわ。「本当にうちの子は、世界一可愛いなぁ。ねえ、ママ?」「可愛いけど大丈夫かしら、この子……」 妄想を膨らましていると、侍
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第4話 初めての王都は楽しいですわー!(10歳)
 私は王子様――スパリオと一緒に、お忍び王都デートにやってきましたの。(さあ、スパリオをメロメロにしますわよー!) まずは大通りを散策ですわ!  普段は公爵令嬢としてお屋敷で教育を受けている私は、こうして街中にやってくるのは初めてですの。「すっごーい!! 人が沢山! お店も沢山!」 あまりの賑わいに、思わず声を弾ませてしまいましたの。だって、仕方がありませんわ?  絵や本で見たまま、いいえ、それ以上に楽しそうな世界が広がっていたんですもの! あれも見たいし、これも見たいですわ!  ……何か大切な目的を忘れている気がしますが、まあ良いですわね!「スパリオ、行きましょう! まずは、あっちの雑貨屋さんに……、いいえ、待って、本屋さんも気になるわ! ああでも、服屋さんも素敵ね! あら、あの屋台には何が売っていますの?」 手を繋いだまま、あちらこちらへ忙しなく動き回る私に、スパリオは文句ひとつ言わず付き合ってくれましたわ!「ふふふっ、そう慌てなくとも、時間は沢山ありますよ。全部、見て回りましょう」「やったー!」 そして言葉通り、気になるお店に次々と入っていきましたの。  はしゃぎ回った後、最後に通りすがったお菓子屋さんに、私は目を奪われましたわ。   (はわわわわっ!?) なんと店先には、私のお気に入りのテディベアである”ランランちゃん”にそっくりな絵が描かれた、可愛らしいマカロンが飾ってありましたわ!(可愛い、けど、そろそろ次の予定が――) このあと、スパリオと一緒に池でボートに乗る約束をしていましたの。今日の為に、ボート漕ぎの練習をしてくれたんですって! そもそも大通の散策も十分時間があったはずなのに、私ばかりがお店を選んでしまいましたわ。いくらスパリオが私にメロメロだからといって……これ以上のわがままはよくないですわよね?(またね、ランランちゃん!) 私は後ろ髪を引かれつつも、大通りを後にしましたわ。◇ ◇ ◇ 午後、私たちは街外れにある公園の湖にやってきましたの。 今日はお天気もよくて、お日様がぽかぽか気持ち良いですわ。陽の光に反射した水面がきらきら輝いて、まるで宝石みたいに見えましたの。「ボートに乗るなんて、初めてですわ!」 私はスパリオの手を借りながら、そっとボートに乗り込みましたわ。  思ったよりもグラグ
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第5話 社交界デビューですわー!(12歳)
 私はエリザベス・スパイシュカ、12歳になりましたの。  最近は背も伸びましたし、立ち居振る舞いも大人っぽくなったと評判ですのよ!「エリー、社交界デビューの日が決まったよ」 食事中に告げられたお父様の言葉に、私は驚いて顔をあげましたわ。「社交界デビューですの!?」「そうだよ。2週間後に遠方から、同盟国の王族の方々が我が国を訪問することになってね。エリーとスパリオ王太子殿下も、皆さんにご挨拶をして欲しいんだよ」「成程、流石お父様ですわ!」「おや、娘に最高の晴れ舞台を用意したパパを、褒めてくれるのかい?」「スパリオが私にメロメロであることを他国の方にも見せつければ、国の乗っ取りが容易になりますわね!」「うん。まだその設定続いていたんだね!」「ふっふっふ、見ておいでなさいまし、他国の王族の方々! スパリオがどれだけ私にメロメロであるかを、見せつけて差し上げますわー!」「普通で! 普通で良いんだよ、エリー!」「もういいじゃない、貴方。張り切っているんだし」 何かを諦めたように話し込んでいるお父様とお母様のことは知る由もなく、私は燃えていましたわ!◇ ◇ ◇「社交界に一番大事なものが、分かるかしら? ランランちゃん」 私は自室の椅子にテディベアのランランちゃんを座らせて、得意げに先生役をしていますの。   『えー? わからないなぁ!』「分かりませんのね。ならば、教えて差し上げましょう!」 裏声でランランちゃんの台詞を喋ってから、私は部屋のクローゼットに近づいて扉を指さしましたわ。「それは――ドレスですわ!」 言うと同時にクローゼットを開けると、そこには素敵なドレスが沢山収まっていましたの。「私に似合う、最高の一着を見つけてみせますわー! これでスパリオも、更にメロメロ間違いなしですの。おーっほっほっほ!」 高笑いする私の声を、ノック音が遮りましたわ。「お嬢様、失礼いたします。スパリオ王太子殿下より、贈り物が届いています」「ふぇっ!? どうしてですの?」「急ぎでお届けしたいとのことで、受け取って参りました」 そうして部屋に運ばれてきたのは、綺麗な包装の施された大きな箱でしたわ。 私がドキドキしながら、その中を確認すると――薄い青色に、金色の刺繍があしらわれた美しいドレスが入っていましたわ。「綺麗……まるで、お星さまみ
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第6話 ドキドキの舞踏会ですわー!(12歳)
 社交界デビューの日には、王城の大広間で舞踏会が開かれることになっていましたの。  その日に向けて、私は礼儀作法やダンスの特訓を頑張りましたのよ。    素敵なドレスと洗練された動きで私の魅力を発揮して、スパリオに可愛いって思われたい――じゃなかった、これも彼をメロメロにして国を乗っ取る為ですの!  ――そして舞踏会当日、私はスパリオが贈ってくれた薄い青色のドレスに身を包みましたわ。 栗色の長い髪は大人っぽく、お団子に結いあげて貰いましたの。ドレスの刺繍と同じ金色の、お星さまの髪飾りが素敵でしょう?  お化粧だって、少しだけ施してもらいましたの。似合うかしら。 この姿を一刻も早くスパリオに見て貰いたかったのに、彼は他の公務ですぐには会えないんですって。  舞踏会の挨拶のときに合流すると、伝えられましたの。「そうですの。スパリオは他にもお仕事がありますのね……」「ほら、エリー、元気を出して? すぐにスパリオ王太子殿下にもお会いできるよ」 「少し会えないだけでも寂しいのよねぇ、ふふっ」「ち、違いますわっ! 私はただ、スパリオが間に合うかを心配しただけで!」 お父様とお母様の慰めるような言葉に、私はむきになって言い返しましたの。  スパリオがいないからって、寂しいだなんて、そんなこと!◇ ◇ ◇ 王族による挨拶が始まる前から、舞踏会の会場は既に華やかな賑わいを見せていた。  テーブルに並ぶワインや軽食を片手に、大勢の貴族や他国の要人たちが交流を深めている。「うううっ、寂しいですわ。早く会いたいですわー……」 早めに会場入りをはたしていた私は、しょんぼりと壁際に佇んでいましたの。  お父様とお母様は、大臣さんと難しいお話があるということで、何処かに行ってしまいましたわ。 私は巨大な会場で見知った顔も少なく、小さくなっていましたの。 時折、挨拶をしてくださる方はいらっしゃいましたが、すぐに通り過ぎてしまわれましたわ。  貴重な他国の方と交流できる機会ということで、皆さんお忙しそうでしたの。「……失礼、レディ?」 そんな中で聞こえてきた声は、最初、自分に向けられたものだと気が付きませんでしたわ。  けれど、見渡してもこんな壁際にいるのは私だけでしたもの。  だから恐る恐る、顔をあげましたの。「あの、わ、私のことですの?」
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第7話 ライバルの出現ですわー!(14歳)
 私はエリザベス・スパイシュカ、14歳になりましたの。 この春から、王立学園に通うことになりましたわ。 婚約者である王太子殿下――スパリオをメロメロにして国を乗っ取ることを計画している私に、最近、大きな悩みが出来たんですの!「ほら、見てみろよ、聖女さまだぜ」「平民出身だけど凄く優秀だって話よ」「可憐で清楚で、長い銀髪が美しいわね。なんて素敵なの」「スパリオ王太子殿下と並んでいると、お似合いで絵になるわよね」 カフェテリアで他の生徒たちが交わす噂話に、私はこぶしを握り締めましたわ。 彼らの視線の先には、中庭の便利で仲睦まじく会話する、スパリオと銀髪の可憐な少女の姿がありましたの。「ぐぬぬぅ!」 この王立学園は基本的には貴族家が在席していますわ。 けれど、珍しい才能を持つ人間は特例として通学が認められますの。 その中でも一番特別なのが、聖女として認められた娘ですわ。 これは30年に1度現れる、女神様に認められた存在であるらしいんですの。 聖女は女神のお告げを聞く力があり、国に幸運をもたらすと言われているんですわ。「だからって、どうしてスパリオがそのお目付け役なんですのー!」 いえ、分かりますわ、分かりますのよ。 スパリオはとても優秀ですし、面倒見も良いですし、格好良いですし、何よりも王太子という立場ですし、国の要となる聖女さんのお世話役に任命されるのは当然かもしれませんわ。 聖女さんは平民出身ということで、貴族社会でこれから苦労することもあるかもしれませんの。 スパリオが傍について、しきたりなどを教えるというのも理にかなっているのかもしれませんわ。  でも、でも……。「折角、同じ学園に通えましたのに。これでは全然お話も出来ませんわ……」 こんなのあまりにも寂しい――ではなくて、このままでは、スパリオをメロメロにする計画に支障が出てしまいますわ! しょんぼりと一人で紅茶を飲む私に、三人の女生徒が近づいてきましたの。「あの、ちょっと宜しいでしょうか。エリザベス様」「……何ですの?」 見上げれば、上品ないでたちと仕草から、高位の貴族の娘さんたちであることはすぐに分かりましたわ。 三人の内の真ん中にいる、茶色の巻き毛の女生徒が丁寧にお辞儀をしてきましたの。「お初にお目にかかります。私はルアード侯爵家の長女、マリリンと申
last updateLast Updated : 2025-11-27
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第8話 私は悪役令嬢なんですの?(14歳)
 王宮の応接間に呼び出しを受けて参上すると、そこにはスパリオと聖女さんの姿がありましたわ。  二人は仲睦まじく腕を組んでいましたの。 やってきた私に、スパリオは微笑みながら言いましたわ。「エリー、僕は真実の愛を見つけたんだ。この聖女さんと結婚するよ」「えっ……スパリオ、急に何を言い出しますの?」「僕たちは、所詮は親同士の決めた婚約だからね。はっきり言わないと分からないかい?」 狼狽える私を見つめるスパリオの眼差しが、氷のように冷たく変わりましたわ。「エリザベス・スパイシュカ。今日をもって、僕は君との婚約を破棄する!」◇ ◇ ◇「いやあああああっ!!」 叫びながら飛び起きると、そこは自室のベッドの上でしたの。 どうやら夢を見ていたようですわ。とても恐ろしい夢。  目が覚めたはずなのに、夢の中のスパリオの冷たい瞳が忘れられませんの。 きっと、最近図書室で借りて読んだ小説の影響ですわね。  平民出身の娘が王子様と恋に落ちて、婚約者である意地悪な”悪役令嬢”の妨害にもめげずに真実の愛を勝ち取るお話。街でも流行しているんですって。 私とスパリオと聖女さんの関係をこの小説に見立てて、私を”悪役令嬢”みたいだと陰で噂する声があるのも知っていますわ。  勿論、見当違いなので気にしていませんけれど。  だって私は悪役令嬢ではなく、ハニートラップ令嬢なのですわ!「ああ、いけない。今日はスパリオと会う日でしたわね」 婚約者同士である私とスパリオは、学園で顔を合わせる機会が少ない代わりに、週末には必ず 一緒に過ごす時間を作っていましたの。 ――いつもは楽しみな時間なのに、夢のせいで今日は憂鬱に感じてしまいますわ。「駄目よ、エリー。私はスパリオをメロメロにするんだから。聖女さん相手でも、負けてられないわ!」 弱気になりかける自分の気持ちを奮い立たせて、私は支度をはじめましたの。◇ ◇ ◇「お待たせ、エリー。遅れてしまってごめんね」 スパリオは待ち合わせに10分程遅れてやってきましたわ。場所は王宮の中庭。テーブルにはいつかのように、お茶会の準備が綺麗に整えられていましたの。「おーっほっほっほ! 構いませんわよ。スパリオは毎日、お忙しく過ごしているようですもの」 ここ最近、端正な彼の顔に疲労の色が滲んでいるのは気になっていましたわ。何でも
last updateLast Updated : 2025-11-28
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第9話 婚約破棄なんて嫌ですわー!(15歳)
 私はエリザベス・スパイシュカ、15歳になりましたの。  隣国にスパリオと聖女さんが留学してから、私の学園生活は皮肉にも平和なものとなりましたわ。 悪役令嬢なんて噂をする人たちもいなくなって――ときどき、婚約者に逃げられた女だと憐れむような視線は感じますけれど、直接何かを言われることもありませんし。「エリー、また王太子殿下から手紙が届いているよ」 「本当に見なくて良いの?」  王太子殿下からはここ半年間ほどで、100通近いお手紙を頂きましたの。  心配そうに訊ねてくるお父様とお母様に、私は首を横に振りましたわ。「ありがとうございます。でも、読みたくないんですの……」 王家からの手紙を開封しないのは、本来ならば重罪ですわ。  でも、私に届いているのはスパリオ個人からの手紙という扱いのようですの。だから読まなくても、少なくとも家が罪に問われることはありませんわ。(誠実に手紙を送ってくださるスパリオに、申し訳なくはあるけれど) 手紙の内容が怖くて、開封できなかったんですの。  だって彼の美しい文字で”婚約破棄”だなんて綴られていたら、それこそ立ち直れませんわ。(でも、こうして引き延ばせるのもあと半年ですわね) あと半年で、留学を終えたスパリオと聖女さんは国に戻ってきてしまいますわ。  そうなれば流石に、私も逃げ続けることは出来ないでしょう。 どこかで現実と――向き合う覚悟を決めなくてはいけませんわね。  私が深い溜息を吐きながら学園までの道を歩いていると、背後から声がかけられましたわ。 「やあ、久しぶりだね。エリー」  それは聞き間違えるはずもない、スパリオの声でしたわ。  私が驚いて振り返ると、今は隣国にいるはずの彼が私に微笑みかけていましたの。 留学で旅立つ前より、彼は少し元気そうで、背も伸びたようでしたわ。「すっ、す、スパリオ……王太子殿下。どうして、ここに?」 声を裏返しながら問う私に、彼は苦笑しましたの。「やっぱり、手紙は読んで貰えていなかったんだね」「あ……、そ、それはっ! ……ごめんなさい」「良いよ。君に不信感を持たせてしまった、僕がいけなかったんだ」 殊勝に謝る彼に、私は何も言い返せませんでしたわ。  どこまでも優しい人ね。 久しぶりに彼に会えて嬉しい。沢山、話がしたい。  でも、それ以上に恐怖
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第10話 結婚して差し上げますわー!(15歳)
「うわああんっ、ひっく、うぇ、……婚約破棄なんて、嫌ですわー!!」 大泣きし始めた私に、スパリオは大慌ての様子でしたわ。  でも、私の涙は全然止まりませんでしたの。「びええん、うっく、嫌ですの! 私はスパリオが好きですの!!」「えっ、え、ちょっと待って、エリー?」「嫌です、待ちませんわっ!! 婚約破棄なんて、お待ちになって?」「婚約破棄ってなんのこと!?」「私は、ちゃんとスパリオをもう一度メロメロにするんですから! もう国を乗っ取るとかどうでも良いんですの! スパリオが好きなの! びええええんっ!!」「く、国を乗っ取るって!? え、と、というか、エリー……」 ずびずびと、淑女あるまじき勢いで泣きわめいてから、私はようやく我に返りましたの。 ――あれ、今、スパリオは、婚約破棄ってなんのことだと言ったかしら?「……」 「……」 私が泣きはらしたぼろぼろの顔でスパリオを見つめると、彼は見たことも無い位に真っ赤になっていましたの。 ……どうしてですの? い、意味が分かりませんわ?「ひっく、ぐすっ、あの、私、これから大ホールで、皆さんの前で婚約破棄宣言をされるのでは……?」「何がどうしたら、そんな発想になるんだい!?」 大真面目に問いかけた私を、スパリオは驚愕の顔で見つめていましたの。 そして、私は気づきましたわ。  大ホールの扉が、すでに半分開いていたことに。 中には沢山の人が集まっていて――後ろの方に横断幕が見えましたの。『エリザベス嬢、15歳のお誕生日おめでとう』 そこには、そう記されていましたわ。「??????」 私は自分の勘違いに気づいて、一気に頭が冷えていき――同時に頬が燃えるように熱くなるという特異体験をいたしましたの。「あっ、あのあの、これは……」 そして冷静に思い返してみれば、とんでもないことをスパリオに伝えてしまった気がしますわ?    ――ああ、もう駄目、耐えられませんの。 お誕生日会を開いてくださっているのに申し訳ないですが、先程までとは別の意味で、ここにはいられませんわ!「き、今日のところは、これくらいにして差し上げますわー!!」 そう言うと私は全力で身をひるがえし、逃走を試みましたわ。  でも、それはあっけなく阻止されましたの。「ふふっ、駄目だよ。エリー!」 嬉しそうに声を弾ませ
last updateLast Updated : 2025-11-30
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