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中道 舞夜
中道 舞夜
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Novels by 中道 舞夜

離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー

離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー

離婚を切り出した翌日、慰謝料10億円の書類にサインをし妻は消えた。失踪後、双子の妊娠、父親は別人説、謎の海外送金疑惑が発覚。妻が今まであんなに尽くしてくれたのは嘘だったのか?もう一度、結婚していた頃に戻りたい御曹司社長の後悔
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Chapter: 113.玲の陰謀、監視の影
書斎にて仕事をしていたが、一息つくために部屋を出て廊下を歩いていると、普段使っていないはずの来客用の部屋の扉がわずかに開いていることに気づいた。不審に思い、静かにその部屋へと近づくと、中からひそひそと誰かと電話をしているらしい玲の声が聞こえてきた。電気もつけずにスマホのわずかな光りが、彼女の頬と肩を青白く照らしている。(こんなところで、こそこそと何をやっているんだ?)俺は息を殺し、耳を澄ました。「いい?しっかり監視して。不審な点があったらすぐに報告して。いいわね?」声は抑えられていたが、その語気は鋭く、確実に「監視」という言葉が聞き取れた。玲は一体、誰に、誰を監視させるように指示しているのか。一抹の不安と、背筋が凍るような疑問が募る。『玲が誰かに監視の依頼をしている電話を聞いた。注意してくれ』俺はすぐさま空にメッセージを送った。玲のハラスメントや横暴を抑制するため、空に社員との間に入ってもらったり、問題点を指摘する役目を依頼していた。そのおかげで、社内の風通しは良くなったが、その分、玲からは俺と空の二人とも恨まれている可能性が高かった。プライベートでは、玲は両親に気に入られようと必死で、一条ホールディングスでの副社長の立場を今よりも強固にすべく、俺の業務や決定権を譲渡して欲しいと父に懇願している。さらに、彼女は保有株を増やし株主として一条グループを支配することも画策しているようだった。
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 112.護の行動力と共有する時間
華side: 「え?東京の家を引き払ったの?」 プロポーズされてからしばらくして、私が返事をする前に、護さんは長野の別荘の麓にあるファミリー向けのマンションを購入した。 「うん。ここだったら高速もすぐに乗れるし、慶くんや碧ちゃんの通園にも支障がないと思って」 そう言って新しいマンションを嬉しそうに案内してくれた。 瑛斗が訪ねてきてから、護さんは頻繁に別荘に来るようになり、私は彼の身体を心配していたがまさか引っ越してくるとは思わなかった。そして単身ではなくファミリー用にしたのも、私や子どもたちが住むことも視野に入れてのことだろう。 私は、護さんの行動に驚きを隠せないでいた。 購入した物件は、別荘に比べてアクセスも良く、周辺には大きなスーパーやショッピングモールもあり、専属の運転手がいなくても買い物にも困ることはなさそうだった。 私は、子どもたちが幼稚園に行っている間に、護さんと一緒にマンションの部屋を掃除したり、引っ越し準備を手伝った。護さんが休みの日は、近くの家具店へ二人で出かけ、新しいソファーやカーテン、ベッドを選んだ。 「こうしていると、なんだか新婚の気分だよ」 私の手を繋ぎながら、そう言ってはにかんで喜ぶ護さんが可愛くて私も微笑み返した。 家の中は、一緒に選んだ家具やお揃いのグラスなど少しずつ二人の物で埋め尽くされていった。部屋のあちらこちらに思い出が出来ていく。 そして、護さんが休みの平日はこのマンションで二人きりで過ごすようになり、子どもたちのお迎えの時間になると一緒に別荘へと帰り、次の日の朝まで過ごすようになった。 次第に私の生活は、護さんと過ごす時間で埋め尽くされていった。
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 111.不安と影
華side:瑛斗が別荘を訪れてから、護さんは以前にもまして頻繁に足を運ぶようになった。平日は仕事終わりに寄り、週末は必ずと言っていいほど別荘で私たちと一緒に過ごしてくれている。「華ちゃんに、もしものことがあったら心配だから……」そう言ってちょっとした買い物や子どもたちの送迎バスまでのほんのわずかな距離にもついて来てくれる。その優しさはありがたかったが、その熱心さに少し戸惑いを感じていた。「護さん、心配してくれるのは嬉しいけれど、別荘には私以外にも仕えてくれる人がいるから大丈夫よ。休みのたびにここに来ていたら護さんの身体が休まらないし、かえって心配だわ」私の言葉に、護さんは少し困ったように眉を下げた。「ありがとう。でも彼がどうやってここを知ったか分からないけれど、もしかしたら僕が尾行されていて場所を教えてしまったのかもしれないと責任を感じてね」「護さん、尾行されていると感じるようなことがあるの?」私は慌てて彼のそばに駆け寄った。「大丈夫。もしもの話で、そう感じるようなことはないよ。ただ、一条社長ほどの人物ともなれば、財力や人脈を使って探偵を雇ったり、場合によっては『良からぬ人物』に何か依頼することも可能だと思ってね」
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 110.渦巻く疑惑、三上護の影
瑛斗side:5年前、俺が離婚協議書を渡した翌日に華は失踪した。しばらくして華は見つかったが、その際に神宮寺家との縁は切れ、今では誰も華の消息を知る者はいないと玲からは聞かされていた。では、何故、華は三上と一緒にいるのか。人里離れたあの豪華な別荘は誰のものなのか。なぜ神宮寺家の専属医の三上が、あんなにも華と親密な関係を築いているのか。様々な疑惑が俺の心の中で渦巻いていた。俺は探偵に、今度は三上護について調べるように依頼した。華の調査を依頼した時とは比べ物にならないほど焦燥感と疑念に駆られていた。数日後、探偵からの報告が届く――――――――――――――――――――――――――三上護職業:医師(専門:内科、産科)家族:母(父親は幼い頃に他界、生前は神宮寺家の専属医)――――――――――――――――――――――――――探偵の報告書を読み進めるが、亡くなった父の代わりに神宮寺家に入ったこと以外に特に
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 109.密会と次なる機会
瑛斗side「空、お疲れ様。よくやってくれた」この日俺は都内の格式高い料亭の一室で、周囲に聞かれたくない話があったため、接待でも使うような壁も厚い完全な個室を選び、空と二人きりで食事をとっていた。アワビや伊勢エビなど高級食材を惜しみなく使った懐石料理に舌鼓を打ちながら、俺は本題に入った。「それで、どうだった?」俺の問いかけに、空は箸を置き真剣な眼差しで答えた。「退職者に何人か話を聞いたけれど、やはり玲さんの影響だったよ。だけど、言葉での攻撃や理不尽な要求ばかりで決定的な文面や証拠は残されていなかった。急な呼び出しも多くて録音を持っている人もいなかったね。それに、ハラスメントだけでは降格や出向で完全に事業から離すのは難しいと思う」空の言葉に、俺は歯がゆい思いを噛みしめた。玲がどれだけ悪辣な手を使おうと、その証拠がなければ断罪することはできない。「そうか……。何か、他に手立てはないか」「瑛斗も薄々気づいていると思うけれど、ここ数年で接待交際費や役員報酬など、営業外の費用が不自然に増えているんだ。ここをもう少し詳しく調べれば、何か解決策があるかもしれない」業務から切り離すことは難しいが不正会計となれば話は別だ。玲が金銭面で
Last Updated: 2025-08-08
Chapter: 108.空の尽力と一条グループの再生
「一条グループの今期の年度末決算としましては、増収減益となりました。減益の要因は、昨今の急激な円高による為替差損となります――」一条グループホールディングスの事業戦略部責任者である空が、今期の決算状況について説明していた。彼の声は、社内の空気を一変させるような確固たる自信に満ちている。玲が副社長に就任してからの数年間、一条グループの業績は悪化の一途をたどっていた。最初の年は、社会情勢によるものと見られていた。しかし、その翌年から数年間は、売上自体は減ったものの利益はかろうじて増えていた。だが、その中身を詳細に分析すると、会社の深刻な病巣が見えてくる。原価の単価改定、そして人材の流出による人件費の減少が利益増の主な要因であり、会社が健全に機能しなくなる危険性をはらんでいたのだ。従業員たちの給料が減る一方で、役員報酬や接待交際費などの費用は増え続け、玲が副社長に就任してからというもの、業績を管理する者たちからは不満の声が上がっていた。そして、この費用の大部分は玲によるものだった。今年は、空が戻ってきたことで会社の膿を洗い出し、正常な状態へと戻すための改善に努めてきた。空は、玲が社員に圧力をかけ、下請業者や部品納入の取引先に対し再三にわたって単価を下げるよう強要していた事実を突き止めた。「副社長、このような行為は、相手から訴えられた場合、敗訴するだけでなく、社会的信用を失う。最悪の場合、下請法違反で指示した者が逮捕されるケースもあります」関連部門の責任者同席
Last Updated: 2025-08-08
誰が契約結婚だって?ハイスぺCEOは私しか見ていない

誰が契約結婚だって?ハイスぺCEOは私しか見ていない

バリキャリ佳奈と独身主義者でCEOの啓介は 共に結婚願望がないことで盛り上がり交際に発展。しかし、突然佳奈からプロポーズを受ける。 「私たち最高の夫婦になると思うの、結婚しよう」突然の告白に驚く啓介。 しかも、ただの結婚ではなく『自由を手に入れるための結婚』独身のような生活は維持しつつ、結婚することで得られるメリットを享受しようとする2人。合理的な選択のはずが啓介を狙う元カノや跡取りが欲しい両親、佳奈を狙う同僚が迫ってきて新婚早々二人の生活に波乱が襲う!
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Chapter: 164.彼氏と元カレと3人での食事
佳奈side啓介がトイレで席を立った瞬間、私は今まで抑え込んでいた怒りを爆発させた。グラスを握る手に力を込めて夏也を睨みつける。「ねえ、さっきからどういうつもり?」夏也は、私のただならぬ雰囲気を察したのだろう。悪戯っぽく笑いながら、とぼけたように問い返してきた。「ん?何のこと?」「とぼけないでよ。さっきからわざと付き合っていた頃の話や、啓介に分からない話ばかりするじゃない!そんなことするために食事に誘ったなら、もう来ないし、啓介にも相手にしなくていいって言うからね!」私の真剣な眼差しに、夏也はニヤニヤしていた顔を少し引き締め、困ったように笑った。「おい、そんな怒るなよ。冗談だって。」「冗談じゃない!仕事はちゃんと依頼する気あるんでしょうね。ただの口実だったら、実家も出禁にするからね!」「おーこわっ。」夏也は、私の言葉に少し驚いたように、しかしすぐにいつもの陽気な表情に戻った。そして、ビールのグラスを一口傾けると真剣な眼差しで私を見つめた。「大丈夫、これでも仕事は仕事と割り切っているか
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 163.宣戦布告
啓介side食事が中盤に差し掛かった頃、佳奈が「ちょっとトイレに行ってくるね」と申し訳なさそうに席を立った。彼女の姿が見えなくなった途端、夏也は普段の陽気な表情とは全く違う、真剣な顔で俺を見てきた。その瞳の奥には笑みの欠片もなかった。「高柳さん、さっきからすみません。高柳さんがどんな対応をするかと思って、少し意地悪して、あえて昔の話ばかりしていました。」俺からすれば、到底「少しばかりの意地悪」には感じられなかった。俺の目の前で、佳奈との絆の深さを誇示して、威嚇しているようだった。「何故、そんなことを? それに、どうして俺にそのことを言うんですか?」俺は平静を装い、夏也の真意を探った。「俺は昔、佳奈を悲しませました。そのことをずっと反省していて……。佳奈には、絶対に幸せになってほしいんです。だから、もし佳奈が選んだ相手が、悲しませるような可能性がある人だったら……俺は、その人から佳奈を全力で奪い取ります。」夏也の瞳は真剣で冗談には思えなかった。佳奈を失った過去への後悔が入り混じった複雑な感情の表れだった。「……。木下さんには、今、私がどのように見えているんですか。これは警告ですか? それとも宣戦布告ですか?」俺は、動揺を隠しながら問いただした。すると夏也は、真剣な
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 162.過去の男との会食、そして心理戦
「あー今日はお時間を作って頂きありがとうございます。また会えて嬉しいです」遠くから、夏也で手を大きく振りこちらに近づいてきた。『佳奈も含めて食事がしたい』夏也から来たメールを無視するわけにもいかず、社交辞令で「都合がつけば行きましょう」と返信した。しかし、夏也は具体的な候補をいくつも送ってきて会うしかない状況に追い込まれた。佳奈に話すと、驚くことなくむしろ呆れたように笑って返した。「あー、夏也は社交辞令とか知らない人だからね。誘ったら何が何でも時間を見つけて会おうとするタイプ。」(マジかよ……。)俺も社交辞令は好きではないが、今回ばかりは流れてくれるのを期待していた。だが、佳奈の言葉通り、時間が合わないようなら前泊するなど調整する姿勢を崩さなかった。こうして二週間後、別の取引先との商談を終えた夏也と、佳奈も交えて食事に行くことになった。佳奈と、佳奈の元カレで俺の会社の取引先社長の夏也という奇妙な関係の三人での食事は、どんな展開になるのか全く予想がつかなかった。夏也の希望で都内のクラフトビールの多い飲み屋に入った。店の喧騒が、この奇妙な三人の空気を少しだけ紛らわせてくれる。グラスを合わせると夏也はまるで昔からの親友と再会したかのように満面の笑みで言った。
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 161.過去の影、私の知らない気持ち
佳奈side実家を訪問して、もしかしたら会うかもと思っていた夏也と顔を合わせた。私と別れた後も、海外に行っている時も日本に戻ってきてからも夏也は私の家族と親交を深めている。家族はみんな、私と夏也が付き合っていたことも、もちろん別れたことも知っている。それでも、小学生の小さい頃から知っている幼馴染として、私がいない今でも顔を出してくれる夏也を、内心、喜んでいた。「子どもが大きくなると、家に友達が遊びに来ることがなくなるじゃない。まして、佳奈は一緒に暮らしていないから、佳奈の仲良かった友達の顔を見ることがないのよね。だから、たまに『元気にしているのかな?』って思うの。夏也君が顔出してくれると、昔を思い出して楽しいのよ」以前、帰省した時に母がぽつりと言っていたことを思い出す。母にとって夏也は、単なる娘の元カレではなく、幼少期から成長を見てきた可愛い息子のような存在でもあるのだ。母や三奈は啓介の前では気を遣って言わなかったが、頻繁に実家を訪れる夏也を見て、「夏也君、まだ気があるんじゃない?」と何度もからかわれていた。そのたびに私は「もう、そんなことないってば!」と笑って否定していた。私たちの恋は、学生時代にとっくに終わっている。少なくとも、私はそう思っている。私たちはあの日、お互いの未来のために「幼馴染」に戻ったのだ。そこに後悔も未練もないはずだ。そんな夏也が、啓介の会社に仕事
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 160.揺れる心と、強まる警戒心
啓介side「月に1〜2回打ち合わせで都内に行くことがありますので、今度は佳奈も含めて食事致しませんか?」俺は思わず、眉間にシワを寄せた。IT化を推進する企業がわざわざ訪問するのか、と内心疑問に思っていた。今の時代、WEB会議システムも充実しているし、システムによっては議事録も自動で作成できる。初回からWEBで打ち合わせを行うこともマナー違反と思う企業はほとんどなくなっている。むしろ、移動費用や時間など効率面を考えれば、対面での打ち合わせは必ずしも必要ではない。しかし、WEB会議では担当者の連絡先しか分からない。今後のやり取りは、現場担当者と行うことになるため、俺が関与する予定はなかった。夏也はそれを見越していたのだろう。初回は、俺の連絡先を把握するために、顔を合わせ名刺交換できる対面を希望した。そして、お礼も兼ねてこの食事の誘いーー資料なら担当者同士で行えばいい。俺へのメールの目的は、佳奈との食事をするための口実ではないのか?そんな疑問が再び再熱していた。「それにしても、俺の考えが合っているなら、元カノに未練があるからって、婚約者と知っていて俺に連絡を取るって、相当自分に自信がないとできないよな。」業務後、誰もいなくなったオフィスで夏也とのやり取りを思い返し、思わず
Last Updated: 2025-08-08
Chapter: 159.訪問の狙いと二人の関係
「やっぱり!同じ名前だからもしかして、と思ったんですよね。これからよろしくお願いします」問い合わせのメールから2週間後、夏也は社員を連れて俺のオフィスにやってきた。この日も人懐っこい笑顔で笑いかけ、俺に握手を求めてきた。「私もです。地域と名前を見て、思わず声をあげてしまいましたよ」俺たち二人のどこかよそよそしいながらも親密さも漂う会話に、同席していた社員たちは不思議そうな顔をしていた。「お二人はお知り合いだったんですか?」「……ああ、まあ。ちょっとね」俺が言葉を濁すと、夏也は口角を上げニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべてこちらを見てくる。その視線に俺は、彼が「佳奈の元カレ」なんて口にしないか内心ヒヤヒヤした。しかし、彼はそこまで良識のない社会人ではなかったようだ。だが、その黙り方は、雄弁にすべてを物語っていた。夏也の会社は、『観光ではなく居住する街へ』をコンセプトに、地方創生に取り組むベンチャー企業だった。農業のIT化や、数年前に流行ったサテライトオフィスの長期実現化を実現して、若い人材を誘致しようと取り組んでいる。自治体や観光庁・農林水産省といった官公庁とも連携している見た目以上に堅実な会社だった。打ち合わせ中は、お互いに真面目な議論を交
Last Updated: 2025-08-08
愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~

愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~

政略結婚した夫から愛されなかった私が、伝説の××として寵愛の国に転生? 「夫の成功のために尽くすのが女の幸せ」そう教育されてきた葵。親同士が決めた政略結婚の夫には全く相手にされず見放される。ある日、夫と女性の密会を目撃。途方に暮れていると滝の激流に吸い込まれタイムスリップ。行きついた先は女性に尽くす寵愛の国。愛されなかった私が溺愛?と 戸惑う姿が謙虚でさらなる魅了となりに王子たちの極上な溺愛甘々合戦勃発!金髪慧眼王子たちから甘すぎる言葉に毎日気絶寸前!そして、葵の転生は神話のモデルと合致することを知り、徐々に自分の役割を自覚する。『尽くす』行為の行きつく先は?国を動かす壮大な恋愛ファンタジー。
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Chapter: 111.葵の変化、小さな高鳴り
「…………葵、今話を聞いてきたよ」私たちの会話が聞こえたのか定かではないが、書架の影からキリアンが静かにまた姿をあらわした。キリアンの声は、私たちの間に流れる重い空気をそっとかき消すようだった。アゼルの悲しみに満ちた瞳と、キリアンの落ち着いた表情。二人の王子に挟まれ、私はただ立ち尽くしていた。「リリアーナ王女には、葵のことを医療問題を解決するために呼んだ博識者で、先日命を狙われることがあったから、安全を守るため身を隠していると説明しているみたい。」「事実と嘘をうまく入れ込んだな。それっぽく聞こえる」キリアンの説明にアゼルは感心しながら頷いた。「だから、葵には王宮内の宴や公務には出ないし今までどおりが一番だけれど、屋敷の中で万が一、王女と会っても問題はないよ。」「分かった、二人とも心配してくれてありがとう。」「あ、ああ……」二人が来てくれたことが嬉しくて、二人の目を見て微笑んでお礼を言うと、アゼルはどこか戸惑ったようなぎこちない返事をした。キリアンもいつもより短くて素っ気ない言
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 110.葵視点:書庫での告白と、届かない想い
葵視点不安と緊張が再び私を襲う。このまま隠れていれば見つからずにすむだろうか……。そんなことを考えていると、足音は止まり、私の隠れている書架の目の前に誰かが立った。私は息を殺し、心臓の音を抑えるのに必死だった。「葵、ここにいるのか?大丈夫か?」突然、聞き慣れた声が響いた。そこに現れたのは、息を切らして駆けつけた様子のアゼルだった。「アゼル?どうしてここに?」私が驚いて姿を出して尋ねると、安堵してから少し照れくさそうに頭をかいた。「レオンとリオの声が聞こえて、もしかして葵が怖がっているんじゃないかと思って……。」アゼルも私を気にかけてここに来てくれた。その優しい心遣いが嬉しかった。「ありがとう。でも大丈夫だよ。さっきキリアンが来て状況を説明してくれたの。今はサラリオ様とルシアン様が王女の対応をしてくれているみたい」私がそう告げると、アゼルは悔しそうに下を向いた。「……なんだ、一番じゃなかったのかよ」その声には明らかに落胆が滲んでいた。
Last Updated: 2025-08-10
Chapter: 109.葵視点:書庫に隠れた私
「レオンとリオ?今は、堂々と外に出られないのに……どうしよう」外から聞こえてきたレオンとリオの声にどうすればいいか分からず困っていた。ここ数日、私は人目を避けるために、王宮内の書庫に身を隠していた。普段は司書やごく限られた内部の人間しか来ないため、ここなら隠れるのにうってつけの場所だった。私は書庫の隅にある小さなテーブルと椅子に腰を掛け、薬学の本に没頭していた。しかし、ふたりの子供たちの無邪気な声は私の心をざわつかせる。(彼らがもし私の名前を口にしたら、リリアーナ王女に私の存在が知られてしまうかもしれない……。)そう思うと胸が締め付けられるようだった。すると、遠くから静かだが、誰かの足音が確実にこちらに近付いてくるのを感じた。私は息をひそめて身構えた。(だ、だれ……)緊張で心臓が激しく脈打つ。足音が止まり、声が聞こえてきた。「葵、大丈夫?」そこに現れたのは、キリアンだった。図書館内にいたキリアンもまたレオンとリオの声を聞いたのだろう。心配して、私を助けに来てくれたのだった。
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 108.兄の決意
サラリオside「ふー、さすが兄さん。矛盾のない説明で王女の疑惑も晴れそうだね。」「ああ、そうだといいが。」リリアーナ王女が去った後、俺とルシアンは安堵のため息をついた。レオンとリオの無邪気な声に一時はどうなることかと思ったが、何とかその場を切り抜けることができたようだ。王女の目は、あの短い時間にもいくつもの疑問を読み取っていた。彼女の鋭い洞察力は、俺たちの想像以上かもしれない。それでも、今のところはあの説明で切り抜けられたはずだ。「葵のことになると必死になっちゃうのは、もしかして兄さんも葵のことを思っているの?」ルシアンは、いつものようにからかうような口調で尋ねてきた。だが、俺はもう自分の気持ちを隠す必要はなかった。「ああ、その通りだ。」ルシアンは、俺のあっさりとした返答に一瞬言葉を失った。耳を疑うような表情で俺をまじまじと見つめてくる。「え、今なんて?」
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 107.アオイの正体、サラリオの機転
「お姉ちゃまはね……みんなのものだよ!僕、お姉ちゃまのことが大好きなの」レオンの無邪気な言葉にリオも元気いっぱいに続く。「僕もー!」リオンとレオの言葉に、リリアーナ王女は目を丸くしていた。彼女は、「みんなのもの」という言葉に引っかかったようだ。「みんなのもの?」「そう。僕が転んで怪我した時に治してくれたの。他の人もね、痛いところや熱出したりするとお姉ちゃまが助けてくれるんだよ」レオンは、屈託のない笑顔で葵の存在を語った。リリアーナ王女は、その言葉に驚きを隠せない。「すごい方なのね……」笑顔で二人と会話を続けているが、その表情にはかすかな落胆が垣間見えた。しかし、サラリオはリオンの言葉を聞いて、妙案が浮かんだ。「リリアーナ王女、お恥ずかしながら、我が国は医療を課題の一つとして、改善に取り組んでおります。先ほど二人の話に出た人物は、その対応のために意見を伺うべく来てもらっている博識者です。しかしながら、我が国以外にも彼女に力を貸して欲しいという国があり、先日、無理矢理自国に連れて帰ろうとする悪い輩に絡まれ、危険な目に遭いました。そのため、国のために尽力してくれている彼女の身の安全を守るため、今は王宮外の者とは会わない
Last Updated: 2025-08-08
Chapter: 106.謎の「お姉ちゃま」
「レオン王子、リオ王子、こんにちわ。」「リリアーナ王女、こんにちは。大きな声を出してごめんなさい」「いいのよ。今日も元気いっぱいですわね」サラリオとルシアンが園庭に着く前に、リリアーナ王女は既に到着し、レオンとリオに笑顔で話しかけていた。満面の笑みで挨拶を返してくる二人の幼い王子に、リリアーナ王女はさらに柔らかな笑みを浮かべた。「あら、サラリオ王子とルシアン王子。お二人もレオン王子、リオ王子のところへ?」リリアーナ王女は、私たちが現れたことにわざとらしいほど驚いた表情を見せ、優雅に尋ねてきた。王女の言葉にルシアンが笑顔で応じる。「はい。ただ今日は王女もいらっしゃるし、二人には別の場所で遊んでもらおうと思って」ルシアンはそう言いながら、子供たちを王女から遠ざけようとレオンとリオの肩に手を置いた。しかし、その時、最も言ってほしくない言葉がレオンの口から飛び出した。「ねえ、今日は葵お姉ちゃまはいないの?」その言葉に、リリアーナ王女の顔がわずかに反応するのが見えた。彼女の瞳の奥に、鋭い光が宿る。ルシアンと私は、顔を見合わせ心臓が止まるような感覚に陥った。レオンの無邪気な声は、私たちの必死な努力をたった一瞬で打ち砕いてしまったのだ。
Last Updated: 2025-08-08
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