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第7話

Author: 鳳小安
雫が熱々の粥を器に盛って入ってきた。「雪乃さん、目が覚めたんですね。お粥を炊いてきました。

少しお召し上がりください。妊娠してますし」

彼女を見るなり、腹が立ってたまらなくなった。

「迅、約束したでしょ。彼女を家に連れてこないって」

「雫は俺と一緒に物を取りに戻っただけだ。

たまたまお前が床に倒れてるのを見て、何か食わせようと思っただけだろ。

それだけのことで、何キレてるんだ?」

雫の話を出すと、彼の口調はたちまち圧迫感に満ちたものになった。

「お粥も作ったし、私はもう帰ります」

雫は目を潤ませた。「雪乃さんが妊娠してるなら、私が迅のそばにいるのはよくないですよね。

将来、子どもに誤解されるのも嫌ですし。私、出ていきます」

彼女が立ち去ろうとした瞬間、迅が彼女の腕を掴んだ。

「俺は、この子を産んでいいなんて言ってない」

「……え?」

頭の中が、一瞬で空っぽになった。

この言葉が、迅の口から出たなんて、信じられなかった。

結婚したあの日、彼は言っていた。子どもが欲しい、男でも女でもいい、私たちの子ならそれでいいと。

私は、この子のためなら、彼は雫と関係を切ると思っていた。

ところが彼はなんと、この子を産ませるつもりはないと言った?

雫は、わざとらしく目を見開いた。「迅、何言ってるの?その子、あなたと雪乃さんの子でしょ」

「雪乃、この子はタイミングが悪い。中絶しろ」

彼の口調は冷たく、微塵の温もりも感じられなかった。私は呆然とこの男を見つめ、涙で視界がぼやけた。

「迅、これは私たちの子だよ。ずっと子ども欲しいって言ってたじゃない?」

「子どもは欲しい。でも、詐欺師は俺の子の母親にはなれない。

本気で子どもが欲しいなら、雫に産ませればいい。産んだら、お前が育てろ」

彼は振り返り、見下ろすように私を見た。その口元に浮かんだ嘲るような笑みは、刃みたいに、私の胸の奥に突き刺さった。

「手術はすぐ手配する。終わったら、早めに本家に戻れ。じいさんから宴会のことで、まだ色々言われるだろ。

分かってるな、二日後の宴会、何一つミスは許されない」

そう言い捨てて、迅は雫を抱き寄せ、そのまま出ていった。

雫だけが振り返った。彼女は口元をわずかに歪め、声もなく言った。「あんたじゃ、私には勝てないよ」

私は布団の中で体を縮め、震えが止まらなかった。

どうしてあのとき、あんなにも必死になって、彼のそばに行こうとしたのよ。

雫は何もしなくても、簡単に彼の心を手に入れる。

そのために、彼は私の子どもまで切り捨てた!

涙は、昨夜で全部流れ切ったのか、もう一滴も出なかった。

この子は、もう守れない。

でも、それでいい。この子いなくなれば、ようやく彼と完全に別れる。

午後になると、迅はボディガードを手配し、私を病院へ向かわせた。

おそらく私が逃げ出すのを恐れて、わざわざ何人ものボディーガードを私のそばに付け加えた。

私は、処刑場に連れていかれる囚人みたいに、屈辱のまま病衣に着替えさせられ、手術室へ連れていかれた。

手術前、雫からメッセージが届いた。相変わらず、迅のスマホからだった。

送られてきたのは一本の動画。遊園地の音楽がやけに耳につく。

雫は迅の腕に絡みつき、二人で一つの綿あめを食べている。

メリーゴーラウンドに乗ったり、ジェットコースターに乗ったり、プリクラを撮ったりする。

屋台に並んで、迅が昔は嫌っていた串揚げを食べ、安っぽいジュースを飲んでいる。

雫が自撮りをすると、迅は嫌な顔一つせず、アイスを買うために列に並んでいる。

医師の声が、私の思考を遮った。

「葉山雪乃さんですね。手術を始めます、こちらに横になってください」

「……分かりました」

私はスマホを置き、言われるまま手術台に横になった。

「足を開いてください」

冷たい台の感触に、恐怖で体が震える。それでも唇を噛みしめ、足を開いた。

私の様子を見て、麻酔医が低い声で言った。「大丈夫ですよ、すぐ終わります」

針が皮膚に刺さった瞬間、私はゆっくり目を閉じた。

意識が遠のく直前、いくつもの光景が頭をよぎった。それでも最後まで消えなかったのは、彼が私を見た、あの一瞬の眼差しだった。

――あの綺麗な目に、私が知らなかったほどの優しさを宿していたのに。

たった五年で、すべてが変わった。

今この瞬間、彼は遊園地で新しい恋人と過ごしている。

一方、私は手術台に横たわり、冷たいメスに私たちのたった一人の子を奪われるままにしている。
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