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第5話。

Auteur: 愛月花音
last update Dernière mise à jour: 2025-02-20 18:15:43
「は、はい」

 私のことだよね? と返事をしながら振り向くと櫻井課長は亜季を見ていた。

思わずドキッと心臓が高鳴ってしまう。

 まさか呼び止められると思わなかったから驚いてしまった。

「さっきのお茶……美味しかった。悪かったな。社内で馴れ馴れしいのも嫌だと思ったから」

(もしかして気にしてくれたの?)

 課長を見ると少し恥ずかしそうにしていた。照れている。

 何だか亜季の胸の辺りがポカポカして温かくなってきた。

「いえ…お気遣いありがとうございます」

「それで……今夜予定が無いなら、一緒に食事でもどうだろうか?」

「……えっ!?」

「あ、いや…別に強制じゃない。嫌なら断ってくれてもいいから」

「いえ。ぜひ、ご一緒させて下さい!」

亜季は思わず口から出てしまった。自分でもびっくりしてしまう。

 だが、せっかく誘ってくれたのに断るなんて亜季の中では、どうしても考えられなかった。

「良かった。なら……そうだな。 仕事が終わったら駅のそばにある喫茶店で待っていてくれ。すぐに行くから。それと、この前の企画書は上手くできていたぞ」

「ありがとうございます」

 亜季は頭を下げると、そのまま部署に戻る。不思議だ。

何だかスキップしたくなるぐらい嬉しい。

 少し前なら恐怖だったし、呼び止められたら説教でも言われるのではないかと思って、ビクビクしていたはずなのに。

 今では口元がニヤニヤしてしまっていた。

 その気持ちは、顔にも出ていたようで、部署に戻った後に美奈子が亜季の顔を見て

「どうしたの?何だか機嫌がいいみたいだけど?」と言ってきた。

「そう…気のせいじゃない?」

「怪しいわねぇ~何があったか教えなさいよ?」

「何でも無いわよ~ほら、仕事をさっさと始めちゃおう」

 そんなに顔に出ているのだろうか?

 でも、こうはしていられない。定時までには終わらせなくては。

 急いでパソコンのキーボードを打ちやりかけの企画書を作成させる。

 そして何とか仕事を無事に定時までに終わらせると、駅の近くにある一軒の喫茶店に向かった。

 ここは通勤の利用者が多い。中に入っていくとサラリーマンや学生などが数人居た。

亜季はコーヒーを頼み、窓際の席に座って櫻井課長が来るのを待つことにする。

「課長まだかなぁ~忙しい人だから遅れるかしら?」

 何だか心臓が高鳴って落ち着かない。

 キョロキョロと周りを見ると
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